先月、次期行革大綱中間取りまとめが公表された。改革の視点として、スマート、スピーディー、サスティナブルが設定されたが、私は、全てにかかわることとなる人材をどのように生かしていくのかが鍵を握ると思っている。そこで、働きやすい環境の構築について、順次伺う。
初めに、職員の育児休業支援について伺う。
本年9月8日の中日新聞朝刊に、2017年度の都道府県の男性職員による育児休業取得率は平均3.1パーセントで、男性職員の育児休業を2020年までに13パーセントにする政府目標にほど遠い現状が浮き彫りになったとの記事があった。中でも本県は2.4パーセントと、全国平均を大きく下回っていることが記載されていた。
私は、平成28年9月定例議会の一般質問で、県庁内の男性職員の育児に関する休業等の取り組みについて質問し、当時の人事局長から「本県では次世代育成支援対策推進法に基づく特定事業主行動計画として、平成27年3月に職員の子育て応援プログラムを策定し、男性の育児休業取得率を、平成31年度までに国の13パーセントを上回る15パーセントとすることを目標としている。平成27年度には、知事部局等で子供が生まれた男性職員200人に対し、28人が育児休業を取得し、男性の育児休業取得率は平成26年度の6.4パーセントから14.0パーセントまで大幅にアップしている」との答弁があった。
今回の報道における数字は、恐らく県教育委員会や県警察も含んでいると思うが、そこまで低いのかという印象を持った。この数字をどう考えているのか伺う。
【監察室長】
平成29年度の都道府県の男性職員による育児休業の取得率が、本県職員全体では2.4パーセントという新聞報道であるが、内訳は、知事部局等は12.3パーセント、県教育委員会は2.3パーセント、県警察は0.1パーセントである。
県教育委員会と県警察の子供が生まれた職員数が、県全体のおよそ9割を占めるため、こうした結果となっている。
知事部局、県教育委員会、県警察それぞれの直近3年間の男性職員の育児休業取得状況を伺う。また、育児休業をとりやすくする環境整備を具体的にどう進めているのか。
あわせて、介護休暇の取得が今後問題になると思うが、どのように考えているのか伺う。
【監察室長】
男性職員の育児休業取得率については、知事部局等は、平成28年度が15.4パーセント、平成29年度が12.3パーセント、昨年度が19.0パーセントである。
次に、県教育委員会は、平成28年度が1.4パーセント、平成29年度が2.3パーセント、昨年度が2.6パーセントである。
次に、県警察は、平成28年度はゼロパーセント、平成29年度が0.1パーセント、昨年度が0.5パーセントである。
育児休業を取得しやすい環境づくりについては、所属長、班長、男性職員の三者で面談を実施し、出産前後のスケジュールを作成させ、育児休業や育児参加休暇の取得を働きかけるといった、イクメンサポート面談を実施している。また、これ以外にも、育児支援制度等のガイダンスも行っている。これらを今後も続けていくことで、男性職員の育児休業の取得を促進していきたい。
また、いわゆるイクボス、育児に理解のある上司も重要であるので、積極的に上司の意識改革を図っていくことにより、男性職員が職場に気兼ねなく安心して育児休業等が取得できる職場環境づくりを進めていきたい。
次に、知事部局等で介護休暇を取得した職員は、平成28年度が4人、平成29年度が7人、昨年度が5人となっている。
介護休暇の利用者は今後増加していくと思われるので、育児休業と同様に、休暇を取得しやすい環境づくりが図られるよう努めていきたい。
次に、次期行革大綱中間取りまとめの中に、2006年度以降の職員一人当たりの時間外勤務時間数の推移がある。直近の2018年度は、148.7時間と最長となっているが、要因は何か。
また、中間取りまとめには、長時間勤務者がいる所属が減っていないとの記載もある。時間外勤務の多い部署には傾向があるのか。さらに、時間外勤務の多い部署に対し、どのようなチェックを行い、どのような対策をとっているのか伺う。
【監察室長】
昨年度に増加した要因は、各種イベント業務に加え、豚コレラの対応や選挙関係の業務があったことによるものと認識している。
時間外勤務の多い部署の傾向は、本庁所属の平均は、地方機関の平均に比べて約2倍の時間数となっており、その中でも、時間的に制約がある業務を行う部署、例えば、アジア競技大会やトリエンナーレに関係する部署が、特に時間外勤務が多くなる傾向にある。
対策は、各部局から四半期ごとに報告がある時間外勤務の状況を参考に、長時間勤務者の多い所属、あるいは長時間勤務が改善されない所属に対し、所属長への指導やヒアリングを行っている。
職員の労働時間管理は、どのように行っているのか。
【監察室長】
職員の出退勤時間の管理は、上司が現認することによって確認することが原則である。
時間外勤務を行う際には、従事前に上司が従事内容と予定時間の確認を部下職員に対して行い、従事後には従事した内容と時間の確認を行っている。上司が確認できない場合は、必要に応じてほかの職員への確認を行っている。
事前命令と事後確認を適切に行うことが労働時間管理の基本であり、研修等を通じてしっかり時間管理が行われるよう、周知徹底していく。
出退勤時間の確認は、システム的な対応が行われているのか。
【監察室長】
現時点では、行っていない。
適正な労働時間管理を行うためには、管理職による適正なマネジメントが大変重要である。管理職のマネジメント能力向上は、どのように図られているのか。
【監察室長】
時間外勤務の縮減に向けては、業務の見直し等に加え、職員の時間外勤務に対する意識の改革が必要であり、命令を行う管理監督者である班長以上のマネジメント能力も、時間外勤務縮減の鍵であると認識している。
そのため、本年度は、残業時間の上限規制が導入されたことを契機に、管理監督者に対して、時間外勤務に対する意識の強化を目的とした研修を行った。
県庁規模ぐらいの民間企業であれば、多くは服務管理がシステム化されている。したがって、仮に勤務表の勤務時間と実態に乖離があった場合にはエラーが出て、それを人事がチェックするなどの方法で適正な労働時間管理が図られている。ぜひ、こうした検討も行うよう強く要望する。
今、答弁のあった労働時間管理方法では、果たして本当に適正な労働時間管理ができているのか疑義が残る。服務管理をシステム化し、適正な労働時間管理を徹底することで、管理職はもとより、職員全員にも時間に対する意識に変化が生まれる。結果として、生産性向上に対する意識も向上する。ぜひとも、この点は強く意識してほしい。
次に、次期行革大綱中間取りまとめには、職員の年代別比率が記載されている。これを見ると、40代後半からの職員の割合が高いことがうかがえる。これから毎年毎年、大量に退職していくことになると、職員の知識、経験不足、あるいは要員不足に加え、職員のモチベーションの低下も懸念されるが、これらの諸課題に対してどのように対処するつもりか伺う。
【人事課主幹(人事)】
本県では、以前、団塊の世代の大量退職が数年続いた時期があった。この際にも、ベテラン職員の技術やノウハウ等の継承が課題になっていたが、再任用制度の活用等の対策を進めながら何とかしのいできた経緯がある。
今後、職員割合の高い世代である40代後半の職員が退職を迎える時期には、このときと同じような課題が発生すると思われるが、団塊の世代の大量退職期の経験を生かし、退職者に再任用として引き続き活躍してもらうほか、技術やノウハウを引き継いでいく現役職員が、モチベーションを高くし、意欲を持って働くことができるような環境づくりに努めていきたい。
また、それ以降の世代は、より早く重要なポストにつく可能性が高くなると考えられるので、そうした職員が職責をしっかり果たしていくことができるよう、人材育成にもしっかり取り組んでいきたい。
今、答弁のあった点は、ぜひしっかり考え、進めてほしい。
あわせて、抜本的に業務量を削減する取り組みも、全庁を挙げて進めなければならないと思う。次期行革大綱中間取りまとめに記載されるAIやロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)の積極活用について、具体的な内容を伺う。
また、こうした取り組みを検討すること自体が、業務の進め方そのものの見直し、ビジネス・プロセス・リエンジニアリング(BPR)につながると考える。現在の状況や、これまで実施してきたBPRについて伺う。
【総務課主幹(行政改革)】
近年、新しい行政改革手法として、AIやRPA等、最新の情報通信技術(ICT)を活用した業務改善の取り組みが注目を集めており、本県でも昨年度来、その効果を確認しながら導入を進めるため、実証実験等に着手している。
例えばRPAは、パソコン上で定型業務を自動化するソフトウエアのことであるが、昨年度、総務部総務課で、財務システムの支払い業務等、四つの庶務業務を対象として実証実験を行った結果、年間換算で約150時間の削減効果を確認できた。
そこで、本年度は対象業務を給付や許認可事務などに広げ、全庁から対象業務を募り、その中から六つの業務を対象として試行的に進める。
現在、児童措置費支弁金や道路等占使用許可業務等、対象業務のプロセスの整理を行っており、プロセスの整理ができ次第、順次、RPAを試行導入していく。
RPAの導入に当たっては、まずは現在の業務プロセスの見える化を行い、効率的なプロセスに見直す作業、すなわち業務プロセスの見直しを行った上で、RPAで自動化できるところを自動化していくといった手順で進める。
旧態依然とした業務プロセスをそのまま自動化してしまうと、効率的ではないプロセスがそのまま温存されてしまうことから、ICTを導入する前には、まずは、業務の進め方そのものをしっかり見直すことが重要になってくる。
これまで本県で取り組んだ業務プロセスの見直しで、最も大規模なものの一つとしては、最終的に2006年10月の総務事務センターの設置に至る、内部管理業務プロセスの改革の事例がある。
これは、従来、各課で処理していた給与や旅費等の内部管理業務を総務事務センターに集約して一括処理することとしたものであるが、手順としては、従来の業務プロセスを見直し、集約できる業務を特定し、それを当時の最新のICTであるコンピューターネットワーク等を利用して集中処理するものであり、経費の削減効果はもとより、事務処理の効率化やペーパーレス化の観点でも大きな効果が見られた。
次期行革大綱中間取りまとめで示したとおり、引き続き、県の持てる経営資源は限られている中、非常にスピードの速い環境変化に迅速、的確に対応していくためには、こうした過去の取り組みも参考にしながら、仕事の進め方自体を抜本的に見直し、業務の効率化を図っていく必要がある。
そこで、次期行革大綱では、長時間勤務が常態化している職場や業務について優先的に業務プロセスの見直しを実施した上で、RPAを本格導入する等、最新のICTを積極的に活用していくことで、一層の業務の効率化を進めていきたい。
BPRによりしっかり見直すことが業務効率化の一歩だと思うので、ぜひ全庁挙げて進めてほしい。
また、職員のモチベーションを上げることも大変重要である。人事評価は当然のこととして、そのほかにどのような取り組みを行い、どのような効果があらわれているのか伺う。
【人事課主幹(人事)】
職員のモチベーションを高めるための制度として、やりたい仕事挑戦制度とグループ診断制度という取り組みを行っている。
やりたい仕事挑戦制度は、職員がみずから手を挙げ、公募業務の所属に直接アピールし、選考に合格すれば異動できる制度で、昨年度は126人が応募し、53人が合格している。この制度には、職員のチャレンジ意欲を向上させる効果がある。
グループ診断制度は、職員が風通しや協力体制等に関するアンケートに回答し、結果を見える化することで、よりよいグループ運営に生かしていく取り組みであり、働きやすい職場環境づくりにつながっている。
職員が高いモチベーションを持って働けることは、職員や組織にとって大変重要であると認識しており、今後もしっかり取り組んでいきたい。
やりたい仕事挑戦制度の好事例、効果について教えてほしい。
【人事課主幹(人事)】
やりたい仕事挑戦制度を活用し、職員が高い意欲を持って新たな業務にチャレンジしている。
具体的には、本年4月の異動では、アジア競技大会やロボット国際大会、スタートアップ推進業務といったビッグプロジェクトを担当する所属や、奥三河地域の振興業務を担当する新城設楽振興事務所への異動等があり、さまざまな仕事で活躍している。
先日、群馬県の広瀬第2県営住宅を視察した。ここは、県営住宅の3階部分全体をシングルマザー専用シェアハウスに改修し、1階は子ども食堂や無料学習塾、フリースクールとして利用できる地域開放スペースを新設するという、画期的な県営住宅の取り組み事例として注目されている。経緯を聞いたところ、群馬県では県庁部署の領域横断による施策提案コンペを行っており、それが発端となったとのことであった。
職員の柔軟な発想が、住民サービスの向上につながる大変いい事例であると思うので、ぜひ本県でも、こうした他県の事例や制度を研究してほしい。
職員が幅広い視野に立って物事を考えられる能力をつけるためには、民間企業や他自治体の業務を学ぶことも大切であると考える。これまでどのような企業に派遣し、どのようなことを学び、県庁内でフィードバックしているのか。また、今後、拡大の検討も考えているとのことであるが、その狙い等を伺う。
【人事課主幹(人事)】
民間企業派遣は、トヨタ自動車株式会社や株式会社デンソー等の製造業を初め、豊田通商株式会社、名鉄観光サービス株式会社等の本県に拠点を置く幅広い業種の民間企業に協力してもらい実施している。
本年度は、7社に8人の職員を派遣している。派遣した職員は、行政の内部ではなかなか習得しがたい民間企業の感覚やコスト意識、改革意識を身につけ、大きな刺激を受けて県庁に戻ってくる。帰任後は、その経験を日常の業務に生かすだけではなく、周りの職員への波及効果も大きい。また、派遣の体験談を作成したり、研修の講師を行ったりと、さまざまな形で成果を県庁内に還元している。民間企業派遣は、高い研修効果があると考えており、派遣人数の拡大を検討し、その成果をさらに県庁内に還元していきたい。
また、現在行っている県内市町村への職員派遣に関しては、市町村行政に対する協力援助を主目的としており、役職者を中心に89人の職員を派遣している。
市町村行政を経験することは、現地、現物、現場目線の観点から大きな意義があるので、今後、若手職員の派遣拡大についても検討していきたい。
昨今、生産性向上が叫ばれているが、生産性とは、投入した経営資源に対してどれだけ成果を生み出せたかという効果の程度をいう。つまり、何らかの施策を実行することで、生み出す成果の割合をふやす、もしくは投入する資源の量を減らす中で、相対的に組織の生産性を高めることになる。
一方で本県は、長年にわたる行財政改革で、職員定数を初めとした量的な削減は相当図ってきており、この点は限界に近いのではないかと考えると、本県で生産性向上を考える際には、いかに労働時間をふやさずに、より高い成果を生み出すかが求められる。そのベースとなるのは、まず適正な労働時間管理であり、さらには労働環境の改善が大変重要だと思う。
本年8月26日、厚生労働省の若手職員が、厚生労働省の業務・組織改革のための緊急提言をまとめ、根本厚生労働大臣に提出した。
これは、厚生労働省の業務、組織の現状を点検した上で、改善するための具体的な提言を行っている。政府の働き方改革の旗を振る役所が、まずはその働き方を見直そうと若手職員が動いたと聞いている。
その中には「厚生労働省が高いパフォーマンスを発揮できずにいることは、国民にとっても損失につながる。日本の働き方改革の旗振り役として、率先して働き方改革に取り組むべく、今こそ基本理念に立ち返り、行動を起こさなければならない」との記載がある。
今回質問した項目は、日本一元気な愛知づくりを推進する行財政運営の肝の部分であると思っており、ぜひ決意を持って取り組んでもらうことを要望する。