令和元年 12月定例会(2019.12.6)

日比たけまさ 令和元年 12月定例会一般質問
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《一般質問》

 通告に従い質問します。
 現在、わが国では国民の約二人に一人が、気管支ぜん息、アトピー性皮膚炎、花粉症、食物アレルギーなどのアレルギー疾患に罹患し、その患者数はこの20年間で約2倍に増加したとも言われ、重大な問題となっています。
 そこで、アレルギーおよび健康を害する化学物質に対する本県の取組について、順次質問します。
 始めに、アレルギー疾患全般に対する取組について伺います。近年、アレルギー疾患の対策は国を挙げての取組となっています。平成26年6月、議員立法により「アレルギー疾患対策基本法」が成立、公布され、翌27年12月から施行されました。そして、平成29年3月には法に基づき「アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針」が策定、告示され、同年7月、「都道府県におけるアレルギー疾患の医療提供体制の整備」について、必要な施策の策定および実施に努めるよう通知されたところであります。
 これに基づき本県では、昨年10月1日に県内に「アレルギー疾患医療拠点病院」が6か所、名古屋大学医学部附属病院、名古屋市立大学病院、愛知医科大学病院、藤田医科大学病院、藤田医科大ばんたね病院、あいち小児保健医療総合センターに設置されるとともに、拠点病院の関係者、保健医療福祉関係者、学識経験を有する者、アレルギー疾患医療を受ける立場にある患者や住民その他関係者、関係行政機関の職員で構成する「愛知県アレルギー疾患医療連絡協議会」が立ち上げられました。

 そこで伺います。アレルギー疾患に対する具体的な取組が開始され1年が経過しました。この間の拠点病院、協議会の取組内容、活動実績と今後の取組方針について伺います。

 
 次に花粉症への対策について伺います。日本の森林面積は国土の約3分の2の2508万ヘクタール。そのうち約4割の1029万ヘクタールが人工林で、さらにその半分弱がスギです。スギは日本の代表的樹木として私たちの生活・産業と深く関係し、万葉集には「いにしえの 人の植えけむ 杉が枝に 霞たなびく 春はきぬらし」と詠まれ、古くから親しまれるとともに、建築材、土木材、器具材など幅広い用途で利用され、重要な樹木として扱われてきました。
 反面、スギはその花粉が原因でアレルギーを引き起こすことが問題となっており、1960年代に初めてスギ花粉症が報告されて以来、花粉症患者は年々増加傾向にあります。
 こうした対策として、国立研究開発法人森林研究・整備機構では都道府県と連携を図りながら花粉症対策品種の開発に取り組み、平成31年3月末現在で花粉の生産量が一般のスギに比べ1%以下の少花粉スギ146品種、20%以下の低花粉スギ11品種、花粉の生産が認められない無花粉スギ5品種を開発しています。これからは、こうしたスギを山に植えていくことが必要と考えます。

 そこで、花粉の発生量が少ないスギに関する本県のこれまでの取組状況と今後の取組について伺います。

 無花粉スギは1992年に富山県で初めて発見されました。それ以来、日本各地で無花粉スギの探索が精力的に行われ、これまでに約20個体が発見されています。しかし、自然界には数千本に1本の割合でしか無花粉スギは存在しないと推定されており、探し出すには非常に手間のかかる作業となっています。スギが無花粉になるのは、遺伝子の変異が原因となって起きることが分かっています。そこでゲノム編集により花粉をつくる遺伝子の機能を失わせることで、無花粉スギができるとの考えから、現在、スギのゲノム編集技術の開発が行われているそうです。
 ゲノム編集とは、生物の設計図である遺伝子を変える新しい技術のことです。全ての生物は多くの遺伝子を持っており、その遺伝子の一揃いをゲノムと呼びます。遺伝子の正体はDNAという鎖状の物質で、4種類の塩基、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトニン(C)が並んでおり、塩基の並び方によって遺伝子の働きが決まっています。
 生物を改良するということは、持っている遺伝子を変えることに他なりません。従来の改良法では、違った遺伝子を持つ生物同士を交配したり、放射線や薬剤でDNAを変異させることによって遺伝子を変化させ、役に立つ新しい性質を持つ生物が作られてきました。
 ゲノム編集は変えたい遺伝子だけを変える技術で、狙った遺伝子のDNAを切断し、塩基の欠失・置換・挿入を起こし、遺伝子の機能を変える一方で、変えたくない他の多くの遺伝子を切らないよう工夫されており、現在では農林水産物の生産量や機能性を高めるため、ゲノム編集による作物・家畜・養殖魚の改良技術が研究され、有効性や安全性が調べられています。
このゲノム編集技術を用い開発した食品について、国は届け出と食品表示の両面から制度を検討し、本年10月から届け出制度がスタートする一方、食品表示については、義務化せずに任意の表示にすることとなりました。理由として、ゲノム編集技術応用食品は自然に起こる突然変異や従来の育種技術などによるものと科学的に区別がつかず、義務化は難しいと判断したとのことです。海外では米国は特に規制していない一方、EUでは欧州司法裁判所が遺伝子組み換え食品と同様に規制すべきだと判断を示しています。
新しく世に出回る可能性のあるこれらの食品に対し、東京大学などが昨年実施した調査においては、「食べたくない」人が4割以上に上るなど、不安視する声があります。一方でこの技術を活用し、小児期に最も多い食物アレルギー、卵アレルギーでも食べられる「新たな卵」が将来的に開発できるのではないかとの期待もされています。いずれにせよ、広くゲノム編集技術応用食品のメリットとリスクを評価できることが消費者にとっての利益にもつながるのではないでしょうか。

 そこで、ゲノム編集技術応用食品に対する情報発信について県としてどのような取組を行っていくのか伺います。

 次に食物アレルギーへの対応について伺います。私は平成28年2月定例会にて、学校における食物アレルギー対応の強化と、教職員、児童生徒、保護者への理解を深めるための取組について質問し、教育長からは「平成22年に策定した「食物アレルギー対応の手引」をこの度改訂し、対象範囲を学校給食に留めず食物アレルギー全般として内容を充実させ、教職員、児童生徒及び保護者の理解を一層深めるようにした。また、人権教育上の観点から全ての児童生徒に食物アレルギーを正しく理解させ、いじめや差別の原因とならないよう指導することも重要な視点として盛り込み、さらには、食物アレルギーに対する取組を効果的に実践していくため、全ての教職員を対象とした研修の実施や、緊急時の対応のための体制整備など、市町村教育委員会や学校に行っていただきたいことを具体的に示した。」との答弁を得ました。
 こうした学校側の体制について、アレルギーを持つお子さまの保護者からは、食物アレルギー全般への理解、生徒への人権配慮をはじめ、かなり整備が図られてきたとの話を伺います。しかし、先生の知識によって生徒への対応に差があるとの声もありますし、逆に学校側からは保護者の理解がもう少しあるとありがたいとの声も聞きます。いずれにしても、場合によっては命に係わる問題でありますので、学校側と生徒、保護者さらには医師の方との、より一層の擦り合わせが重要であると考えます。

 そこで、小中学校における食物アレルギー対応について、現状と今後の取組について伺います。

 次に私たちが取り込む空気について取り上げたいと思います。人間は食物、水、空気を取り込みますが、食物の約1kg、水の約2kgと比べて空気は一日約15kgと圧倒的に多くの量を取り込んでいます。そして私たちの生活は90%以上の時間を住宅や学校、公共建築物などの室内空間で過ごしていると言われることから、室内空気における汚染物質対策を考える必要があります。
我が国では、ホルムアルデヒドや揮発性有機化合物などの化学物質による住宅室内における空気汚染問題として「シックハウス問題」が取り上げられ、きわめて大きな社会的関心を呼びました。1997年6月には当時の厚生省から異例ともいえる早さで、住宅室内におけるホルムアルデヒドについての室内濃度指針値が設定されて以降、多くの物質について室内濃度指針値が示されました。そして建築業界で対策が進められたことなどにより、室内濃度指針値を超過する住宅の比率は減少傾向となっています。
 その一方で、こうした室内濃度指針値が設定されている化学物質に代わる新たな化学物質が建築物に使用される、あるいは対策が取られていない木材等を使用した輸入家具が室内に置かれるなど、シックハウスに関する新たな問題が指摘されています。
 加えて、化学物質過敏症に対する理解と配慮も必要です。化学物質過敏症は微量の化学物質に反応して、種々の症状を訴える病態とされ、頭痛程度の症状を訴える方から、普通に生活することが困難な状況に陥る方まで、個人差が大きく、その進行も多種多様と言われています。
 2009年10月からは保険診療の病名リストに登録されている一方で、専門医が極めて少なく、一般の病院にはその知識のある医師がいないというのが現状です。治療や対策としては、汚染原因になる建材や化学薬剤系の生活用品の利用を少なくする。換気・通風をこまめに行い室内から汚染物質を排出する。日常生活においてバランスのとれた食事および適度な運動と睡眠をとるように心がけ、身体の免疫力を高めることと言われ、患者数は全国で100万人とも推計されています。
 最近では「香り」ブームの中、家庭用品に含まれる香料により健康被害を訴える人が増えているとも言われ、健康被害に関する調査・研究や香料の成分表示等を求める声があがっています。
 また少し視点が変わりますが、最近では健康経営の観点からも室内空気の問題が重視され、空気清浄機を導入するなど室内空気の質の改善を図る企業も出始めているそうです。従業員が持つ様々な疾患が生産性に与える影響を調査した結果、最も影響を与えている疾患がアレルギーであったとの報告もあります。

 そこで、快適な空気環境と化学物質について伺います。まず、本県では、シックハウスへの対応など快適な居住環境を確保するため、どの様な取組を展開しているのか伺います。
 あわせて身の回りにある化学物質について理解促進を図る必要があると考えますが、どの様な取組を行っているのか伺います。これらの質問については、化学物質過敏症への配慮の観点からも答弁願います。

 次に、現在取り組んでいるPCB処理への対応について伺います。PCB(ポリ塩化ビフェニル)とは、人工的に作られた主に油状の化学物質です。特徴として、水に溶けにくく、沸点が高い、熱で分解しにくい、不燃性、電気絶縁性が高いなど、化学的にも安定な性質を有することから、電気機器の絶縁油、熱交換器の熱媒体、ノンカーボン紙など様々な用途で利用されてきました。しかし、1968年、米ぬか油の製造過程において熱媒体として使用されたPCBが混入し、吹出物、色素沈着、目やになどの皮膚症状のほか、全身倦怠感、しびれ感、食欲不振などの健康被害を発生させた食中毒事件(カネミ油症事件)が発生、以降、その毒性が明らかになり1972年に製造が中止となりました。
 それから約30年間に渡り民間主導で処理施設の立地が試みられましたが、地元住民の理解が得られず立地には至りませんでした。
 しかし、長期に保管すればするほど、紛失や漏洩による環境汚染の進行が懸念されます。そこでPCBの確実かつ適正な処理を推進するため、平成13年6月に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(PCB 特措法)が公布、同年7月から施行され、国が中心となって日本環境安全事業株式会社(現在の中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO))が設立され、平成16年の北九州事業の操業をはじめ、全国5箇所に処理施設が整備されました。
 PCB廃棄物は、PCB濃度により高濃度PCB廃棄物(PCB濃度が0.5%を超えるもの)と低濃度PCB廃棄物に分類されます。高濃度PCB廃棄物には、高圧変圧器や高圧コンデンサー、安定器などがあり、これらはJESCOで処理を行っています。しかし、安定器および汚染物等は2021年3月31日まで、変圧器・コンデンサーにおいては2022年3月31日までが処分期間となっており、この日から1年後の計画的処理完了期限を過ぎると処理施設を閉鎖し解体することから事実上処分できなくなります。残すところわずかな期間しかありません。

 そこで、現在の県有施設における高濃度PCBおよび県内事業者が保有する高濃度PCBの処理状況を伺うとともに、残されたわずかな期間についてどのような取組をされるのか伺います。

 次に、PCB含有塗料について伺います。近年、過去に使用されていた塩化ゴム系塗料の一部にPCBが使用されていたことが明らかになり、調査した結果、当該塗料が塗装された道路橋などの鋼構造物の塗膜からPCBが検出されました。そこで環境省は本年10月に、平成31年3月末時点の「高濃度PCB含有塗膜調査の進捗状況」を公表しました。公表結果によると、調査対象施設は橋梁、洞門、排水機場・ダム・水門等、石油・ガス貯蔵タンク、船舶の5分野で国、地方自治体、民間事業者に分類して調査をした結果、全国で25,200施設、そのうち地方自治体では15,905施設が調査対象施設として存在するそうです。

 そこで県有施設においてはどのように調査を行い、結果としてどれくらいの施設が調査対象となったのか、また、対象となった施設については今後どのような対策を取るのか伺います。

 次に低濃度PCB処理への取組について伺います。PCB濃度が0.5%以下のPCB廃棄物及び微量PCB汚染廃電気機器等については、低濃度PCB廃棄物として適正に処理する必要があり、環境大臣が認定する無害化処理認定施設及び都道府県知事等が許可する施設にて2027年3月31日までに処理を行わなければなりません。さらに高濃度PCB使用製品がメーカー名、製造年、型式等から判断できるのに対して、低濃度PCB使用製品は製造過程でPCBが混入した電気機器などであり、実際に分析しないとPCB混入の有無が把握できません。低濃度PCB処理を行うためには相当な取組が必要になると考えます。
 過去には本県を含む多くの自治体でPCB分析に対する補助金制度が設けられておりましたが、現在、本県ではこうした補助制度がありません。東京都や北海道では補助金制度を設け、早期の処理に対策を講じており、本県でも速やかな対策が望まれます。

 そこで、低濃度PCB処理に対し、これまでどのように取り組まれてきたのか、また、今後どのように取り組まれるつもりか伺います。

 以上、理事者各位の前向きな答弁をお願いしまして、壇上での質問を終わります。ご静聴ありがとうございました。

《答弁要旨》

拠点病院、協議会の取組内容、活動実績と今後の取組方針について

(保健医療局長)
 アレルギーおよび健康を害する化学物質に対する取組についての御質問のうち、始めに、アレルギー疾患に対する取組についてお答えいたします。
 アレルギー疾患対策につきましては、アレルギー疾患に関する正しい知識の普及と人材育成が、大変重要であると認識しております。
 そこで、県では、患者・家族も構成員である愛知県アレルギー疾患医療連絡協議会の議論を踏まえ、主に拠点病院の医師が講師となって、講演会を3回、研修会を4回開催し、県民への正しい知識の普及、医療従事者の知識・技能の向上、教育現場における適切な対応方法の周知等に努めております。
 また、保護者の多くが、子どものアレルギー疾患への対応にお困りですので、日常生活におけるアレルギー予防や対策についての情報が記載されたリーフレットを、今年4月に市町村を通じて乳幼児の保護者に配布いたしました。

 なお、現在、アレルギー専門医等を対象に、アレルギー検査や治療、指導方法に関する調査を実施しておりますので、今後、調査結果を評価・分析し、拠点病院を中心とした診療連携体制の充実に向けての検討を進めてまいります。
 今後とも、アレルギー疾患を有する人誰もが、適切な医療を受けられるよう、しっかり取り組んでまいります。

花粉の発生量が少ないスギに関する本県のこれまでの取組状況と今後の取組について

 (農林基盤局長)
 花粉の発生量が少ないスギに関する本県のこれまでの取組状況と今後の取組についてお答えいたします。
 スギ花粉症が社会問題化する中、本県では2013年度に中部森林管理局や愛知県森林組合連合会などの林業関係団体と連携して「愛知県スギ花粉発生源対策協議会」を設立し、少花粉スギの苗木の生産拡大や植栽の促進に向けた検討を進めてまいりました。
 まずは、苗木の生産体制を整えるために、豊田市下山地区に、2014年度から2017年度にかけて種を生産する採種園を整備し、苗木の生産量を増やす取組を進めてまいりました。
 次に、少花粉スギの苗木を植える取組を促進するため、「伐って、使って、植えて、育てる」循環型林業を進める中で、伐採後に少花粉スギの苗木の植栽を推奨してきた結果、2015年度から昨年度までの4年間で、スギを植栽した31ヘクタールのうち、約5割にあたる15ヘクタールを少花粉スギに切り替えることができました。
 併せて、本県の少花粉スギに「あいちニコ杉」という愛称を付け、本年、森林公園で開催した第70回全国植樹祭では、天皇陛下にお手植えをしていただいたところでございます。
 本年度からは、新たに「あいち森と緑づくり事業」において、高齢化した人工林の若返りを図るため、少花粉の苗木の植栽に対する支援を開始したところでございます。
 今後の取組としましては、これまで年間4ヘクタール程度であった少花粉スギの植栽面積を、「あいち森と緑づくり事業」や公共造林事業などを活用し、約8倍となる年間30ヘクタールまで増加させることで、花粉の発生量が少ない森林への転換を図ってまいります。

ゲノム編集技術応用食品に対する情報発信について

(保健医療局長)
 次に、ゲノム編集技術応用食品に対する情報発信についてお答えします。
 県といたしましては、県民の不安を解消するために、正確な情報の収集及び発信が大変重要であると考えております。
 そこで、消費者庁が本年度に開催した意見交換会に職員を派遣するなど、常に最新の情報の収集に努めるとともに、県のウェブページに関連情報を掲載したところです。また、消費者代表や学識経験者等で構成する「食の安全・安心推進協議会」において、最新情報の共有を図っております。
 さらに、県民の皆様を対象とした食の安全・安心に関する講習会において、講義内容にゲノム編集技術応用食品の情報を盛り込むことにより、正確な情報の発信に努めております。
 県といたしましては、今後とも県民の皆様の食の安全・安心の確保にしっかりと努めてまいりたいと考えております。

小中学校における食物アレルギー対応について、現状と今後の取組について

(教育長)
 小中学校における食物アレルギー対応の現状と今後の取組についてお尋ねをいただきました。
 始めに、現状でございますが、県教育委員会では、毎年、「学校における食物アレルギー対応に関する調査」を実施しております。その調査結果では、学校において食物アレルギー対応が必要な児童生徒数は年々増加しておりまして、本年5月1日現在では、名古屋市を除いて、小学校で7,300人余り、中学校では2,400人余りとなっております。また、医師から処方されているアドレナリン自己注射薬である「エピペン」を所持している児童生徒数は、2014年度の856人から、2018年度は1,912人と増加しております。
 こうした中、本県では、2015年度に「学校における食物アレルギー対応の手引」を改訂し、緊急時の対応のための体制の整備に努めてまいりました。具体的には、保護者向けリーフレットを配付するとともに、食物アレルギー対応の申し出があった児童生徒には、医師が記載したアレルギー疾患用の「学校生活管理指導表」を提出してもらい、養護教諭が中心となって児童生徒一人一人に対応するマニュアルを作成し、校内研修を通じて、全職員間で共通理解を図っており、緊急時の体制は整いつつあると考えております。
 次に、今後の取組についてでございます。
 学校における食物アレルギー対応では、先ずは、その対応が必要な全ての児童生徒について、「学校生活管理指導表」を提出してもらい、個別の対応マニュアルが作成されるように指導してまいります。
 また、市町村教育委員会においては、マニュアル等の作成や研修会の企画などにより学校への指導・支援を行う「食物アレルギー対応委員会」の設置数が、30市町村に留まっておりますので、引き続き、給食主管課長会議等を通じて、全ての市町村に委員会が設置されるように働き掛けてまいります。

快適な居住環境を確保するため取組について

(保健医療局長)
 次に、快適な居住環境の確保について、お答えします。
 住宅の建築材料などから発生する化学物質により目やのどの痛みが生じるシックハウス症候群は、重要な健康課題であると認識しております。
 このため、本県では、学識経験者で構成する会議及び庁内関係課で構成する会議を設置して、総合的かつ効果的なシックハウス対策を推進しているところでございます。
 また、県保健所に居住環境に関する相談窓口を設置しておりまして、昨年度は101件の相談があり、このうちシックハウスに関する相談が15件ございました。
 保健所では、相談内容に応じて、原因物質の一つであるホルムアルデヒド濃度の測定を実施し、厚生労働省が定めた数値を超過した場合には、効果的な換気方法などの助言を行っております。
 加えて、広く県民の皆様にシックハウスに関する啓発をしていくことも重要であることから、市町村が実施する健康まつりにおいて、保健所が住宅模型を使用した分かりやすい説明を行っております。
 なお、化学物質過敏症につきましては、原因物質との因果関係や発症のメカニズムなど未解明な部分が多いことから、引き続き情報収集に努め、居住環境に関する相談等に活用してまいりたいと考えております。
 県としては、今後とも、こうした取組を継続していくことで、県民の皆様の健康で快適な居住環境の確保を図ってまいります。

身の回りにある化学物質についての理解促進について

(環境局長)
 快適な空気環境と化学物質のお尋ねのうち、身の回りにある化学物質についての理解促進についてお答えします。
 私たちの生活は、例えば、洗剤、柔軟剤、化粧品、防虫剤や消臭剤など、様々な化学物質からできた便利で役に立つ製品によって支えられております。一方、化学物質は、その有害性の程度と体に取り込む量、いわゆる環境リスクの大きさによっては、人の健康などに悪い影響を与えてしまうおそれがあります。
 こうした化学物質による環境リスクの低減を図るため、事業者に対しては、化学物質の環境への排出を管理するよう、年1回の排出量の届出とともに、立入検査等により自主的な管理の改善を促しております。
 また、県民の皆様に対しては、化学物質について理解し、正しく使用していただくため、各種製品の使用上の注意を守ることや必要な量だけを使うことなど、私たちが普段心がけるべきことについて紹介したパンフレットを毎年作成・配布するとともに、県ウェブページで公表するなどの普及啓発を行っております。
 さらに、化学物質に関する情報をわかりやすく紹介する化学物質セミナーを2005年度から開催しております。昨今の化学物質過敏症のような健康影響を訴える方々への配慮も意識して、昨年度は、においやかおりとの上手な付き合い方などについて紹介し、今年度は、石けんや洗剤の正しい使い方などについて紹介することとしております。
 今後とも、こうした取組を通じまして、県民の皆様が身の回りの化学物質と上手に付き合い、安心して生活できるよう、化学物質についての理解の促進を図ってまいります。

高濃度PCBの処理状況と取組について

(環境局長)
 PCB処理への対応のうち、まず、高濃度PCB廃棄物の処理についてお答えします。
 高濃度PCBは、PCB特別措置法により、当地域では最終で2022年3月末までの処分が義務付けられております。この期限までに漏れなく処理が行えるよう、県内事業者に対し、啓発・広報や立入指導に加え、2013年度からは使用・保管している可能性のある事業者を対象とした掘り起こし調査により、継続的に保管量の発掘・把握を図りつつ、処理の促進を図っております。
 この調査で明らかになったものを含め、本年3月末現在で、本県における高濃度PCB廃棄物は、安定器及び汚染物等が約1,126トン、うち約52%が処理済、変圧器・コンデンサー等は約3万3千台、うち約94%が処理済となっております。
 このうち、県有施設については、全量を把握しており、本年10月末現在で、安定器及び汚染物等は約149トン、うち約78%が処理済、変圧器・コンデンサー等は587台、うち約95%が処理済となっております。
 安定器及び汚染物等は、中間貯蔵・環境安全事業株式会社(通称、JESCO)北九州処理事業所において処理されておりますが、優先的に受入れてきた地元の九州地方等の処理の目途が立ち、今後、東海地方等の処理が促進されますので、計画どおり、期限までに処理を完了できる見込みであります。

 県としては、確実な処理に向けて、所有事業者に対して、JESCOと合同で立入や説明会を行い、速やかな処理を働きかけるとともに、国及び都道府県が出資した「PCB廃棄物処理基金」等による補助制度により、中小企業者における処理の促進を図ってまいります。
 今後とも、関係機関等と連携し、事業者に対する周知啓発、掘り起こし調査、さらに立入指導を継続して進め、高濃度PCB廃棄物の期限内の確実な処理に向けてしっかりと取り組んでまいります。

PCB含有塗料への対応について

(環境局長)
 次に、PCB含有塗料への対応についてお答えします。
 国土交通省や環境省において、橋梁、洞門、排水機場、燃料タンク、船舶等の鋼(はがね)構造物の実態調査を行った結果、PCB含有塗料の使用あるいはその可能性が判明したことから、昨年11月、環境省が「高濃度PCB含有塗膜調査実施要領」を定め、全国で調査が開始されております。
 本県では、PCB含有塗料が製造・販売された1966年から1974年の間に建設又は塗装された可能性があり、その後全面塗替えがされていない橋梁等446の県有施設を対象に、塗膜のサンプリング・分析調査を順次進めてきているところであります。
 本年11月末までに、このうち244施設について調査を完了し、1施設で高濃度PCB含有塗膜が、38施設で低濃度PCB含有塗膜がそれぞれ確認されています。
 この新たに判明したPCB含有塗料による塗膜などPCB汚染物等の処理を円滑に行うため、現在、国において、JESCO北九州及び北海道処理事業所のみで処理が可能な高濃度PCB汚染物等について、その一部を実証試験を経て民間の無害化処理認定施設で焼却処理できるようにするとともに、処理期限も低濃度PCB汚染物等と同じ2027年3月末とする関係法令等の改正作業が進められているところであります。
 こうした国の動きもありますが、県としては、関係部局と連携・情報共有を図りつつ、残りの施設について早急に塗膜調査を進めるとともに、確認されたPCB含有塗膜について、適正に撤去・処理を行ってまいります。

低濃度PCB処理の取組について

(環境局長)
 最後に、低濃度PCBの処理の取組についてお答えします。
 低濃度PCB廃棄物には、変圧器、コンデンサー、感圧紙の他、塗膜などがあります。このうち変圧器、コンデンサー等は、本来PCBを使用していないはずのものの中に、微量のPCBに汚染された再生絶縁油を使用したものが多数存在することが明らかになったものであり、これらは、2009年11月から「微量PCB汚染廃電気機器等」として区分されております。
 これまで、事業者に対して、県として研修会等を通じて低濃度PCBの確認・処理に係る啓発・指導を行うとともに、電気保安業界に依頼し、工場・事業場等の変圧器やコンデンサーの管理を請け負っている電気主任技術者等を通じた働きかけを行ってきております。
 微量PCB汚染廃電気機器等は、非意図的にPCBが混入したものであるため、PCB含有の有無の確認には絶縁油の分析が必要となり、メーカー名、製造年、型式等から判断できる高濃度PCB使用製品と比べ、その確認作業に非常に手間がかかります。
 このため本県では、微量PCB汚染廃電気機器等が民間の無害化処理認定施設で処理することが可能となった2009年度から3年間、その分析費用への補助制度を設け、事業者の確認作業を計2,634件支援いたしました。
 この分析に係る費用も低廉化が進んでおり、また現在、国において、低濃度PCB使用製品の効率的な把握方法が検討されていることから、県としては、その処理の促進に向けて、中小企業者の処理を支援する補助制度の創設について、国に働きかけているところであります。
 今後も、2027年3月末の期限までに全ての低濃度PCB廃棄物の処理が確実に進むよう、関係機関、業界団体等とも連携を図りながら、しっかりと取り組んでまいります。

《要望事項》

 今回、アレルギーに関する質問を数点させていただきましたが、質問で触れていない点でも様々な課題があります。例えば、災害時の食物アレルギー対策として、避難所などにアレルギーに配慮した食料の備蓄を進めていただいていますが、避難所を始めとする炊き出しでは、アレルゲン表示がされていないケースも多く、善意で行動を起こしていただいている方々に対して、「中に何が入っていますか」とか「アレルゲン表示をお願いします」とお願いすることが難しいとの声を聞きます。福島県いわき市では避難所開設時の炊き出しを行う際、原材料表示をすることがマニュアルに反映されているそうです。アレルギーに関する情報発信や啓発活動をより積極的に展開することで、県民の理解がさらに深まれば、こうした負担が軽減できると考えます。
 また、食物アレルギー疾患を抱えられる方は対面販売や店頭での量り売り、飲食店等でのアレルゲン情報の提供を望んでいます。平成25年6月、消費者の立場に立ったわかりやすい食品表示を促す目的で食品表示法が成立しましたが、対面販売や飲食店での表示義務までには至りませんでした。しかし、この課題については検討が継続され、平成29年6月に作成された「外食・中食におけるアレルゲン情報の提供に向けた手引き」には、事業者が正確な情報を消費者に提供することは困難を伴うが、克服するためには行政が主体的に関係業界と連携して、小規模・零細事業者でも取り組めるノウハウや教育・指導を行える体制を整備する必要があると記載されています。名古屋市では独自に「加工食品の自主的な情報提供ガイドブック」を平成28年3月に策定し、百貨店やスーパーへ配布するとともに、食品衛生のセミナーなどにも活用していますし、東京都でも飲食店向けのリーフレットを作成しています。本県においてもこうした動きを研究し、事業者への働きかけを行うべきではないでしょうか。
 もう一つ、「シックスクール問題」と言われる、学校におけるシックハウス症候群および化学物質過敏症の方への対応についても少し触れます。学校の空気環境や飲料水などは、「学校環境衛生基準」に基づき年1回の定期測定や臨時測定を実施するとともに、適切な状態の維持や換気が行われています。しかし、先ほど触れた化学物質過敏症の児童、生徒の入学や、教職員の転入に際してはさらなる対応、例えば児童、生徒が、床のワックス、教科書や教材のインク、トイレの芳香・消臭剤、保護者の方の香水や洗濯の柔軟剤に反応し、登校できなくなることのないよう、注意が払われなければなりません。北海道江別市では教育委員会が「シックスクール対策マニュアル」を策定し、関係者への理解促進や環境整備に努めているそうです。もちろん学校のみならず幼稚園や保育園を含め、こうした問題についての広い理解が必要であると考えます。
 これまで述べてきたアレルギー対策を進めるにあたっては、様々な分野への対応が必要となることから、組織の横断による総合的な取組が求められます。そこで、私は本県における「アレルギー疾患対策推進計画」をぜひ策定いただくことを要望します。アレルギー疾患対策基本法では「都道府県はアレルギー疾患医療の提供の状況、生活の質の維持向上のための支援の状況等を踏まえ、アレルギー疾患対策の推進に関する計画を策定することができる」との位置づけにとどまり、義務化はしていません。しかし近年では、東京都をはじめ神奈川県、埼玉県、千葉県、群馬県、福岡県、兵庫県などにおいて「アレルギー疾患対策推進計画」が策定または検討されており、対策を総合的に推進する動きが始まっています。
 ぜひ、本県も各分野の有識者や団体の声を幅広く聴取しながら計画策定を検討いただき、多くの県民が悩みを抱えるアレルギー疾患対策に、より積極的に取り組んでいただきますことを要望して質問を閉じます。