新型コロナウイルス感染症の影響により、観光産業は大打撃を受けているが、県内観光の状況はどうか。
また、本年6月19日付の共同通信の記事に、落ち込んだ観光需要を回復させようと、39道府県がホテルや旅館など宿泊施設の料金を割り引く事業を実施しているか、予定していることが分かったとの記載があった。今回、本県で観光消費喚起事業を企画した経緯について伺う。
【観光振興課長】
観光庁が発表した宿泊旅行統計調査によると、本年4月の全国の宿泊者延べ人数、すなわち国内の旅館、ホテルの宿泊者数は、前年同月比で76.8パーセントの減となっている。都道府県別のデータは本年6月30日に発表予定だが、過去の数値を見ると、全国と同様の動きを示していることから、本県でも厳しい数値になると思う。
また、独立行政法人国際観光振興機構が発表した本年4月、5月の訪日外国人旅行者数は、前年同月比で99.9パーセントの減となっている。中部国際空港でも、本年4月1日から6月16日まで、国際旅客便が全て運休となったことから、本県の観光は大変厳しい状況にあると認識している。
本県は、755万人という大きな人口規模を持っていることから、減少した観光消費の喚起に向けて、まずは県民の県内旅行を促進することで、本県の観光を盛り上げていくことが必要であると考え、観光消費喚起事業を企画した。県民が安心して身近な県内旅行を楽しむとともに、地元愛知の魅力を改めて実感することで、新たな需要を生み出しながら、本県の観光消費を喚起したい。
今回の事業の具体的な仕組みと、また、本予算案が可決された場合の利用期間の想定を伺う。
また、対象者や補助額など、今回の制度設計を検討するに当たって、どこへの支援を念頭に、どのような会社や団体と調整を行ったのか。また、補助の上限を1人1回1万円とした考え方を伺う。
【観光振興課長】
本事業は、旅行業者が造成する県内旅行の商品に対し、県が旅行業者に補助金を交付して、代金の2分の1相当分の割引を実施するものである。補助対象となる旅行商品は、個人向けでは、旅行業者が旅行の内容を企画して顧客を募集する募集型企画旅行とし、団体向けには、募集型企画旅行と顧客からの依頼によって旅行業者が旅行を企画する受注型企画旅行とし、補助対象の旅行商品は、宿泊以外にも食事や各種の体験プラン、観光施設の利用などを組み合わせることを要件とすることで、観光関連産業を幅広く支援していく。
割引の対象となる旅行期間は、本年7月20日から10月末までの間に出発する旅行としている。
事業の検討に当たり、支援の対象として想定したのは、旅行業、宿泊業、交通事業者など観光関連事業者であり、業界団体や事業者などにヒアリングなどを行い、制度設計の参考とした。
割引の上限については、市販されている宿泊を伴う県内旅行の商品価格がおおむね1万5,000円から2万円であったことから、2万円を基準とし、その2分の1の1万円を割引の上限額に設定した。また、1人1回という条件は、1回の旅行で割引する金額が1万円までということで、できるだけ多くの旅行に割引を実施することにより、割引の効果を広く波及していきたいと考えた。
今回の補助事業の対象となる旅行業者の数はどの程度か。また、対象となる旅行のうち、団体旅行の催行は難しいが、どう考えているのか。
【観光振興課長】
本事業については、県内に営業所を設置している旅行業者を補助対象事業者としている。その大半は、主たる営業所が本県に設置された国及び本県に登録されている旅行業者で、その数は、本年5月末現在で約430社である。
団体旅行に関し、旅行業の業界団体などへのヒアリングを行った際にも、地元企業の親睦旅行など、団体旅行の需要喚起を期待する声がある。今後の需要について明確な見通しはないが、業界団体が作成した感染予防対策ガイドラインを踏まえ、各事業者において対応を工夫し、今回の補助事業も活用しながら、団体旅行を催行してほしいと考えている。
今回の補助対象としている旅行は、個人向けが募集型企画旅行で、団体も募集型企画旅行と受注型企画旅行であるが、募集型企画旅行、いわゆるパッケージツアーは、大手の旅行会社が中心であり、この補助事業は、中小の旅行業者を支援するものになっているのか。
また、補助金が交付されるのは旅行催行後であり、厳しい中小旅行業者の経営を、後払いで圧迫することにならないのか。
【観光振興課長】
本事業では、中小の旅行業者にも補助金が行き渡るよう、旅行業者が県に提出する補助金の交付申請について、1社当たりの上限額を設定している。また、団体向けについて、中小の旅行事業者が取り扱うことが多い受注型旅行商品も補助対象としており、地元企業の親睦旅行の企画などで、中小の旅行業者にも活用できる。
補助金の支払いは、中小の旅行業者などにも配慮し、特別な理由があると認められるときは、交付決定を受けた全てのツアーが完了した後でなくても、事業者からの請求により、個別のツアーの実施状況に応じて、部分的な支払いもできるようになっている。
新型コロナウイルス感染症の影響により、解雇や雇い止めが見込まれる労働者が急増しており、今後の雇用状況の悪化も懸念されている。
こうした中、失業者がより早く労働市場に復帰するための支援としての職業訓練の重要性が増すと考える。また、アフターコロナにおける社会の環境変化により、需要の高まる業種に対する訓練プログラムの拡充というのが求められるが、本県が持つ三つの県立高等技術専門校の概要について伺う。
【産業人材育成課長】
本県の名古屋、岡崎、東三河の三つの県立高等技術専門校では、施設内で行う訓練と民間の専門学校などに委託をする委託訓練を実施している。施設内訓練では、おおむね30歳未満の学卒者を対象とした1年から2年の普通課程訓練、組込みシステム科、建築総合科など5科210人定員の訓練や離転職者を対象とした6か月から1年間の短期課程訓練、金属加工科、インテリア科、造園科など10科、480人定員の訓練があり、中小企業の人材不足に対応するモノづくり系の訓練を実施している。
また、民間の専門学校などに委託している委託訓練では、2か月から2年間の雇用セーフティネット対策訓練として、医療事務、介護福祉、ビジネス、パソコンなど262科、4,669人定員の訓練があり、特に3か月訓練は、毎月訓練を開始し、随時、離職を余儀なくされた者に対応している。
本県では、本年3月2日から約3か月間、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校で臨時休業を余儀なくされたが、この間の高等技術専門校の運営はどうなっていたのか。また、学校ではオンライン授業の活用が注目されているが、高等技術専門校では、これまでオンラインをどのように活用していたのか。
【産業人材育成課長】
高等技術専門校では、本県独自の緊急事態宣言を踏まえ、施設内訓練については、本年4月11日から5月24日まで、委託訓練については、本年4月11日から5月31日までを休校とした。休校期間中は訓練生に課題を与え、自宅学習を実施したほか、訓練再開後は、夏季休暇や冬季休暇の短縮などを行い、必要な訓練時間を確保する。その間、国の制度上、双方向型のオンラインによる訓練は実施が認められていなかったため、オンライン訓練は実施していない。
本年5月29日に国が職業能力開発促進法施行規則を改正したことにより、学科の科目については、同時双方向型のオンライン訓練が可能になったが、施設内訓練については、モノづくりを行う実技を中心とした訓練となっていることから、オンラインを中心とした訓練の実施に当たり、検討すべき課題が多い。
私もオンライン会議やセミナーを何度も利用したが、その体験から、オンライン訓練のニーズは今後高まっていく。コースによって向き不向きはあるが、事務系の訓練を行う委託訓練であれば、オンライン訓練の導入が可能と考えられるがどうか。また、その場合の課題と期待について伺う。
【産業人材育成課長】
一般的に、オンラインによる訓練を実施するに当たっては、条例の改正や学校側でオンライン訓練に必要な機器の整備が必要となる。また、訓練生がパソコンなどの機器を持っていない場合の対応、学校と訓練生の双方の通信環境が整っているかも課題となる。さらに、ソフト面では、オンライン訓練でもこれまでの通所型の訓練と同じような訓練効果が上がるように、現場の指導員の意見も踏まえた上で、訓練カリキュラムの見直しも必要である。
一方で、双方向型の訓練を取り入れることにより、新型コロナウイルス感染症への感染を避けることができ、子育て世代など、これまで通所が困難であった対象者にも職業訓練を受講する場を提供できるといったメリットがあることから、実施に当たっての体制整備を含め、前向きに検討したい。
今回の職業能力開発促進法施行規則改正は、新型コロナウイルス感染症の影響も踏まえて、職業訓練におけるオンライン訓練の実施を緊急に可能とする必要があるとの判断で改正になったと聞いている。もちろん課題はあるが、メリットも非常に大きいことから、可及的速やかに対応してもらいたい。