令和3年 11月定例会(2021.12.1)

代表質問

新政あいち、日比たけまさです。
 10月11日、新政あいち県議団では、例年実施している要望活動としての令和4年度施策及び当初予算に対する提言に加え、2つの緊急要望、新型コロナウイルス感染症対策の充実、強化について、カーボンニュートラルの実現による魅力あるまちづくりについてを大村知事に提出させていただきました。
 その中のカーボンニュートラルの実現による魅力あるまちづくりについて少し紹介します。
 今後迫りくる人口減少社会の中では、本県においても、地域の成長力の低下が危惧されており、中長期的な魅力あるまちづくりの視点から、経済と環境の好循環をつくり出し、日本一の産業と県民の豊かな暮らしを支えるカーボンニュートラル社会の実現が求められます。
 そこで、エネルギー、モビリティー、住宅、建築物、デジタルという取組の切り口を挙げ、要望したところです。
 今議会の提出議案の中にも、早速、私たちの思いを受け止めていただいた内容が含まれていることに、深く感謝を申し上げます。
 また、昨日開催された知事の政経セミナーにおける力強い講演及び著書、今こそ、ファースト・ペンギンを目指そうも読ませていただきましたが、コロナ禍においても、カーボンニュートラルに挑む知事の強い思いを感じ、さらなる期待を抱いたところであります。
 本日は、新政あいち県議団を代表して、令和4年度施策及び予算に対する提言に掲げた5つの柱に沿って11点の質問を行いたいと思います。よろしくお願いいたします。
 1つ目の柱は、新型コロナウイルス感染症の克服に向けてであります。
 まずは、新型コロナウイルス感染症の第5波までの対応を踏まえた今後の保健所の役割についてお伺いします。
 新型コロナウイルス感染症については、最初の感染が確認されてから、間もなく2年が経過しようとしております。
 これまでに新型コロナウイルス感染症に感染した方々、そして、感染によりお亡くなりになった方々も数多くお見えになります。心からお悔やみ申し上げます。
 本県では、新型コロナウイルス感染症対策として様々な取組を進めてきました。県民の皆様には、人流を抑制するための不要不急の外出自粛や県境を越えた移動自粛のお願い、事業者の皆様には、感染状況に応じて休業要請や営業時間短縮要請等を行ってきました。
 また、感染した方々の治療に必要な病床の確保を医療機関へ要請するとともに、宿泊療養施設の増設や自宅療養者に向けた医療提供体制の整備、生活面でのケア等にも取り組んできました。
 さらに、ワクチン接種を加速するため、県内各地に大規模集団接種会場を開設し、一人でも多くの方が一刻でも早く接種できるよう取り組むとともに、接種が遅れていた若者に対する取組も積極的に実施してきました。
 その中で、常に新型コロナウイルス感染症と最前線で向き合ってきたのが保健所であります。保健所では、県民の皆様からの発熱相談等に始まり、PCR検査への対応、陽性となった方々への健康観察の連絡、宿泊療養施設の入所や医療機関への入院の調整等、新型コロナウイルス感染症に関する様々な業務に取り組んでいます。
 こうした中、国の制度的な課題があったとはいえ、保健所に業務が過度に集中し、対処し切れない状況になった部分もあったのではないかと思います。私自身も、第5波のピーク時に保健所へ何度電話しても話し中で通じないことがありました。また、感染した方からは、宿泊療養施設への入所を希望したものの、手続に時間を要した等の話も何度も聞きました。
 幸いにも本県では、保健所の対応が遅れ、容体が急変し自宅で亡くなった方や、急増する患者に対応するため、積極的疫学調査における感染経路の追跡をやめるといったことはありませんでしたが、他の自治体においてはこうした報道を耳にしています。
 現在は、新規陽性者も減少し、感染状況が落ち着いておりますが、ここ数日の新たな変異株、オミクロン株に関する報道は大変気がかりです。今こそ、これまでの取組を検証し、特に、業務が集中した保健所については、次の大規模な感染に備えた取組が必要ではないかと考えます。
 そこでお伺いします。
 新型コロナウイルス感染症の第5波までの保健所の取組について検証し、次の大規模な感染にどのように備えていくのか、知事の御所見をお伺いします。

 次に、ポストコロナを見据えた観光振興施策についてお伺いします。  本県は、2014年にあいち観光元年を宣言し、観光集客を愛知の新たな戦略産業に位置づけました。以降、県内市町村において、観光担当課の拡充や基本計画の策定、地域観光協会の新設などの動きが見られるようになり、観光に関する取組が加速しました。  また、全国で外国人旅行者の誘致が活発に行われる中、本県においても、アジアを重視した誘客と受入れ環境の整備を促進するとともに、観光消費単価が高い欧米豪地域への情報発信にも取り組んできた結果、2014年に123万人だった来県外国人旅行者数は、2019年には約2.3倍の287万人、観光消費額も798億円から2397億円へと約3倍に増加し、本県の観光振興に大きな役割を果たすようになりました。  しかし、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により状況は一変し、観光関連産業は甚大な影響を受けております。最近は感染者の減少傾向が続き、観光地もにぎわいを取り戻しつつあるものの、感染リスクに対する不安が完全に払拭されるまでは、感染拡大以前の水準まで観光需要が回復することは見込めず、現状では、感染症の存在を前提として観光振興を進めていく必要があります。  まずは、受入れ施設等による感染防止対策の徹底など、安心して旅行を楽しめる環境整備を促進するとともに、正確な情報発信等を行って、旅行に出かけたくてもためらっている潜在的な需要を回復させていくことが重要であります。  その上で、ポストコロナを見据え、観光に対する意識の変化、例えば、自然豊かなところに行きたい、少人数で出かけたい、近場で楽しみたいといった傾向を的確に把握するとともに、一定の観光需要が戻ったときへの準備として、かねてからの課題であった観光資源の高付加価値化への取組も大切であります。  また、コロナ禍による行動制限が続いたことにより、増加していると言われる可処分所得が国内旅行の需要を喚起する可能性も大いにあると考えられます。  その一方で、いましばらくはインバウンド需要の完全な回復が見込めないと考えられる中でも、継続的な情報発信が必要であります。さらには、もう少し長期の視点で今後の人口減少社会の到来も考えると、観光消費額をいかに高めるかが重要になってくるのではないかと考えます。  そこでお伺いします。  ウイズコロナの時期においても、ポストコロナを見据えた観光振興施策に取り組んでいくことが重要であると考えますが、どのように取り組んでいかれるのか、知事の御所見をお伺いします。

 2つ目の柱は、安全・安心なあいちを目指してであります。
 最初に、県警察における犯罪被害者支援への取組についてお伺いします。
 本日、12月1日は犯罪被害者等基本法の成立日であり、毎年11月25日から12月1日まで犯罪被害者週間と定められています。
 犯罪被害者週間には、犯罪被害者等が置かれている状況や犯罪被害者等の名誉または生活の平穏への配慮の重要性等について、理解を深めることを目的に様々な啓発活動が展開されます。今年度の標語は、福岡県の小学4年生が作った「とどけよう やさしいこころ おもいやり」であります。犯罪に遭って冷たくなってしまった被害者の気持ちを優しい心と思いやりで温かくしてあげられるといいなという気持ちで作りましたと、作者のコメントがとても印象に残っています。
 2019年4月、東京・池袋で暴走した乗用車にはねられた母子が死亡するなどした事故で、本年10月12日、飯塚被告は東京拘置所に収容されました。その直前、被告は、「暴走は私の勘違いによる過失で、ブレーキとアクセルを間違えた結果だったのだと理解した。過失を反省するため刑に服してまいりたい」と遺族である松永拓也さんがずっと求めてきた過失を認めるコメントを初めて出しました。
 私は、この報道を耳にしたとき、松永さんの心も少しは晴れるのだろうと安易に考えていました。しかし、松永さんは、「被告は過失を認めたようですが、最初からこの言葉があればとどうしても思ってしまいます。中略、命が戻るわけでもないので気が晴れることなどは今後もないでしょう。むなしさのほうが強いです」と妻子を亡くした悲しみ、痛み、苦しみは変わることがないという現状を吐露しておられました。改めて、一瞬にして愛する家族を失うことの大きさを感じたところであります。
 その一方で、松永さんは事故当時、混乱と悲しみの中、警察や民間の被害者支援に助けられましたとのコメントを残しており、現在、御本人が精力的に行っている交通事故撲滅活動の原動力になっているようであります。
 このほかにも、2019年7月に京都市で発生した京都アニメーション放火殺人事件や、本年8月及び10月に、東京都内を走行中の小田急線、京王線の電車内で発生した無差別刺傷事件で多くの方が重軽傷を負っているように、何の落ち度もない人たちが、一瞬で犯罪に巻き込まれてしまう凄惨な事件や事故の報道を毎日のように耳にし、いたたまれない気持ちになります。
 しかし、当事者やその遺族の悲しみ、苦しみは、我々の想像をはるかに超えたものでありますし、また、先ほど触れてきたように、こうした方々は、長期にわたり心の傷と向き合い生きていくこととなります。
 そして、こうした被害者に最初に関わる存在が警察となります。
 そこでお伺いします。
 県警察として、犯罪被害者支援についてどのような取組を行っているのか、警察本部長にお伺いします。

 次に、森を守る取組についてお伺いします。
 本県は県土の約4割が森林であり、その多くは戦後に木材生産を目的として植えられた人工林で、その割合は全国3位の63.6%となっております。このうち建築材料として利用できるようになる10齢級、樹齢46年以上の割合となると84.9%で、全国平均の65.6%を大きく上回っています。
 一方、この状況は、人工林の少子・高齢化が進んでいるとも言えることから、伐って、使って、植えるという森林の循環利用を確立し、木材利用を拡大するとともに、森林の若返りを進めていくことが求められます。
 こうした中、9月定例県議会において制定された愛知県木材利用促進条例では、前文において、県内の森林は、県土の保全や水源の涵養、地球温暖化の防止、林産物の供給など、その多面にわたる機能により、安全で安心な暮らしを支える県民共有の財産となっていることから、その森林を健全な姿で次代に引き継ぐことが重要であるとし、第6条、森林所有者の役割においては、所有する森林の適切な整備、管理及び保全に積極的に努めるものとすると規定しています。
 このように、条例では、木材利用を促進するという目的とともに、森林の有する多面的機能を享受し次世代につないでいくため、森林の管理が大変重要であることもうたっています。
 林野庁のホームページによりますと、我が国の森林の所有は小規模、分散的で、長期的な林業の低迷や森林所有者の世代交代等により所有者の森林への関心が薄れ、森林の管理が適切に行われていない事態が発生しており、実に全国の83%の市町村が、管内の民有林の手入れが不足していると考えている状況であります。
 さらに、相続を伴う所有権の移転登記がなされていないことなどにより、所有者が不明な森林が生じているとのことであります。
 令和3年版森林・林業白書では、国土交通省が実施した調査において、不動産登記簿上の土地所有者の住所に通知を郵送したところ、土地所有者に届かなかった割合が、林地においては、全体の28%に当たることが紹介されています。
 間伐など森林の施業を森林組合等が実施する場合は、所有者の同意が必要であることから、所有者不明の森林は、施業に必要な所有者の同意が得られないために必要な手入れがなされず、水源の涵養や土砂災害の防止、地球温暖化の防止など森林が持つ多面的機能が適切に発揮されないということが懸念されております。
 そこでお伺いします。
 森林の持つ多面的機能を適切に発揮させるため、所有者不明の森林をこれ以上増やさないよう、県としてどのような対策に取り組んでいくのか、知事の御所見をお伺いします。

 3つ目の柱は、あいちの発展と魅力的な地域づくりであります。
 初めに、自動運転の推進に向けた取組についてお伺いします。
 本県では、全国に先駆けて2016年度から自動運転の実証実験を開始し、毎年様々な実験を積み重ねています。
 私の住む高蔵寺ニュータウンも、こうした実験のルートに選定され、2016年には、運転席に人が乗り込みながらも、基本はハンドル、アクセルに触れない形で3.9キロの公道を運行、翌2017年には、運転席に人が乗らず、万が一の備えとして遠隔操作でコントロールを行う実験が行われ、私も両実験車両に乗車させていただきました。
 いずれも、多少のぎこちなさは感じるものの、その技術の高さに衝撃を受けるとともに、そう遠くない将来、自動運転サービスが展開される社会をリアルに感じることができました。
 そして、本年、名古屋市鶴舞周辺において、都心における自動運転を利用した移動をテーマに行われた実証実験にも参加させていただきました。この実験の狙いは、都心の幹線道路を含むルート、すなわち一般車両が多く走り、自転車、歩行者等を加えた複雑な交通状況の中における技術面、オペレーション面での安全運行等のノウハウ向上とのことであります。
 実際、過去に私が経験した自動運転のルートとは比較にならないほどの障害物の数であり、また、瞬時の判断が求められるシチュエーションに、どこでも自動運転が実現する社会の到来には、まだハードルがあると痛感したところであります。
 その一方で、高蔵寺ニュータウンでは、県が実施主体の実証実験とは別に、春日井市と名古屋大学が自動運転のカートをニュータウン内で運行させる地域密着型MaaSの実証実験を継続的に実施しており、実用化に向け、あと少しという段階まで来ています。
 一口に自動運転の実証実験といっても、その裾野の広さや目指すべき社会像といった根幹をしっかり押さえる必要があることを今さらながらに感じているところであります。  そこでお伺いします。
 自動運転の推進に向け、本県が継続して取り組む自動運転に関する実証実験の意義や課題は何であるのか、知事の御所見をお伺いします。

 次に、産業空洞化対策減税基金の取組と成果についてお伺いします。
 今から10年前の2011年11月4日、大村知事は、喫緊の課題であった産業空洞化、当時を振り返ると、超円高に伴う価格面での国際競争力の低下に、本県の基幹産業である自動車産業をはじめ多くの企業が苦しみ、産業空洞化の懸念が強まっており、これに対応するため、法人県民税減税を代替する措置として、毎年度その10%に相当する50億円程度を基金に積み立て、これを原資として産業立地、研究開発、実証実験を支援する補助制度を創設する方針を発表しました。これが産業空洞化対策減税基金の制度であります。  その後、議会での審議を経て、2012年4月から運用が開始された本制度は、企業、市町村からの要望や社会情勢を踏まえ、適宜見直しや改正を行いながら現在に至っております。
 今般、春日井市からも、新あいち創造産業立地補助金の運用に係る緩和、拡充、具体的には、過去に交付を受けた同一事業所における同一事業について、改めて工場等を新増設する場合も補助対象とすることや、同一市町村の立地年数を除外し県内に20年以上の立地要件のみとするといった要望をさせていただきましたので、ぜひ前向きな検討をお願いします。
 さて、この基金制度が創設されてからの10年を振り返ると、多くの投資を県内に呼び込み、本県における産業空洞化に歯止めをかけ、さらには、安定した財源確保により、年度による補助金支給の振れ幅も小さく企業誘致が行いやすくなるなど、基金に基づく企業支援が本県経済の発展、成長の一翼を担ってきたとも言えるのではないかと思います。  その一方で、DXの推進、自動車産業のCASE、MaaSの動きの活発化、新型コロナウイルス感染症の流行を契機としたテレワークの拡大等、企業を取り巻く環境は大きく変化してきており、今後、この基金が果たす役割はますます大きくなっていくと思われます。
 そこでお伺いします。
 産業空洞化対策減税基金におけるこれまでの取組と成果について、知事の御所見をお伺いします。

 4つ目の柱は、誰もが活躍できる社会と次代を創る人づくりであります。
 初めに、魅力ある県立高校づくりに向けた取組についてお伺いします。
 県は先月、県立高等学校再編将来構想を発表し、現在、パブリックコメントを募集しています。その冒頭、大変大きな問題が2点書かれています。1つ目は、2021年度、県立高校の生徒募集は過去に例を見ない2600人を超える欠員が生じたこと、2つ目は、今後少子化が加速する中、中学校卒業者数が現在の7万人から、2019年度に生まれた子供が中学校を卒業する2035年度の時点では5万7000人程度まで、約1万3000人も減少するということであります。
 当然のことながら、この生徒数を変えることはできません。何も策を講じなければ学校の活力は失われ、そのことは、地域の将来にも多くの影響をもたらすことになります。  数が所与のものである以上、中身を変えるしか方法はありません。教育問題を議論する際によく、時代を超えて変わらない価値のあるもの、不易と、時代の変化とともに変えていく必要があるもの、流行が取り上げられますが、ここまで厳しい現実を突きつけられている以上、教育委員会内の議論にとどまらず、とにかく質を求めて変化を恐れず対応していただきたいと思います。県立高校の魅力とは何かを、とことん突き詰めていただきたいと思っているところであります。
 私立高校の魅力が建学の精神であるならば、県立高校における魅力向上の鍵を握る要素は、地域との共存ではないでしょうか。
 今年度、春日井商工会議所が行った県要望に、県立高校に関する事項が記載されていました。具体的には、県立春日井工科高等学校に建築、土木に関連する学科の設置を要望するもので、背景には、市内建設業者における新卒学生や若手社員採用が非常に厳しいという現状があります。
 また、私自身、県立高校卒業生の採用に熱心な市内の中小企業、小規模事業者の皆様から、各学校への要望を伺うことも多々あります。
 地域が地元の県立高校に寄せる期待は非常に高いものがあり、こうした声をこれからの県立高校の魅力づくりにぜひ生かしていただきたいと考えております。
 そこでお伺いします。
 県立高校の魅力を高めるため、今後どのように取り組まれていくのか、知事の御所見をお伺いします。

 次に、障害者差別解消に向けた取組と今後の対応についてお伺いします。
 本県は、2015年12月、障害者差別解消法の趣旨を広く県民に周知し、差別の解消推進への機運を高め、県民一体となって障害を理由とする差別の解消を図ることを目的とした障害者差別解消推進条例を制定しました。
 法では、障害を理由として、正当な理由なくサービスの提供を拒否したり、制限したり、条件をつけたりする行為、これを不当な差別的取扱いといい、この禁止や、障害のある方から、何らかの配慮を求める意思の表明があった場合には、負担になり過ぎない範囲で社会的障壁を取り除くため必要かつ合理的な配慮、これを合理的配慮といい、この提供が示されました。
 そこで、条例では県の取組として、相談及び紛争の防止等のための体制の整備、障害者差別解消支援地域協議会の設置、啓発活動などを規定しています。
 こうした中、本年5月、これまで努力義務にとどまっていた民間事業者による合理的配慮の提供が法的義務となる改正障害者差別解消法が可決、成立し、3年以内の施行が決まりました。
 ここで、障害者差別解消の推進に当たっての課題について考えてみます。
 1つ目は、そもそも合理的配慮が何かということがまだ浸透していないということです。東京都は、2018年10月に東京都障害者差別解消条例を施行し、国に先駆けて事業者への合理的配慮の提供を義務としました。しかし、翌年11月に実施した調査では、合理的配慮の提供について、内容も知っていると回答した人は僅か11.3%と、まだまだ理解が広がっていないことが分かります。
 2つ目は、障害者差別や合理的配慮について、障害者、事業者の相談を一手に引き受けるワンストップ窓口が整備されていないということです。内閣府が2020年4月に公表した障害者差別の解消に関する地方公共団体への調査結果によると、ワンストップ窓口を設置している自治体は44%と、まだ半数に及ばない状況にあります。
 3つ目は、窓口で相談に応じる専門家の不足です。先ほどの内閣府調査では、障害者差別に関する相談員を配置している自治体は15%にとどまっています。障害と一言で言っても様々な障害があり、人ごとに症状も異なります。それを理解し、その方に合った合理的配慮を導き出すためには、相談員を中心に多くの方々の理解や協力が必要です。
 また、法で禁止されている障害を理由とした差別に遭遇する障害のある人は少なくないと言われ、例えば、車椅子を利用している方が、車椅子の入れるスペースがある飲食店に食事をしたいと申し出ても、車椅子だからお断りと断られるケースはいまだにあるそうです。
 そこでお伺いします。
 障害者差別解消推進条例の施行から5年経過した中で、これまでの県の取組と現在の県民意識の状況、そして、法改正も踏まえた今後の対応について、知事の御所見をお伺いします。

 続いて、障害者スポーツの普及拡大に向けた取組についてお伺いします。
 本年8月24日から9月5日までの13日間にわたり開催された東京2020パラリンピック競技大会は、期間が新型コロナウイルス感染症第5波のピークと重なり、残念ながら原則無観客の開催となりました。
 しかし、連日数多くの競技がテレビ放映され、私たちの目に触れる機会が非常に多かったことは、本当によかったと思います。
 私自身、今回数多くの競技を観戦し、とても強い感動を覚えました。なぜ自分だけがと思いたくなるような境遇を乗り越え挑戦していく、常に前を向くその力強さに、私たちはどれほどの勇気をもらったことでしょう。あわせて、様々な競技やそのルールを知り、奥深さにのめり込んだ方も多く見えるのではないかと思います。
 春日井市からは、江崎駿選手がボッチャで出場し、BC4ペアの部で見事8位入賞に輝き、先日、大村知事を表敬訪問しました。
 私は昨年、江崎選手の練習場を訪ね、一緒にボッチャをさせていただく機会がありました。緻密な計算、正確なショット、相手との駆け引き、そして、障害の有無に関係なくみんなが一緒になって楽しめるといったボッチャの魅力に取りつかれ、翌日にはボッチャの用具一式を購入、仲間とボッチャを楽しむようになりました。来週もボッチャの試合を楽しむ予定であります。
 先日、車椅子バスケットボールチームのマネジャーをしている友人に、車椅子バスケに携わったきっかけを伺いました。彼女は、純粋なバスケ好きで、ある日インターネットで偶然、車椅子バスケのサイトを発見、何げなく練習風景を見に行くと、その競技の面白さ、そして、プレーできる環境をつくってくれる周りの方々への感謝を前面に出し、ひたむきにプレーしている選手の姿に心を奪われたそうです。ただ、彼女のようなケースは珍しく、関係者は日頃、障害者と何らかの接点を持たれている方がほとんどで、競技の認知が広まらないことを課題に挙げていました。
 一方、チームで企画する体験会や学校の授業等で招かれる際には参加者から、今まで知る機会がなかったが楽しかった、また参加したいといった声を多く寄せられるそうで、こうした機会を数多くつくりたいと話していました。
 私は、東京2020パラリンピックを通じて、様々な競技やルールを知ることができました。今こそ、障害者スポーツの普及につなげる絶好の時期であり、障害のある人もない人も一緒に触れ合える機会がさらに増えることを望んでいます。
 そこでお伺いします。
 東京2020パラリンピック競技大会の開催を契機として、全国的に障害者スポーツへの関心が高まっている中、障害者スポーツの普及拡大に向け、県としてどのように取り組んでいくのか、知事の御所見をお伺いします。

 5つ目の柱は、持続可能な社会の実現を見据えた取組についてであります。
 初めに、SDGs推進に向けたこれまでの取組の評価と今後についてお伺いします。
 私は、昨年の11月定例県議会一般質問にて、将来世代の利益を考える計画策定について質問いたしました。その思いは、私たちの直面する政策課題は世代を超えた長期的な時間軸で考えるべき問題がたくさんあるという思いを伝えたかったからであります。
 そこで、今回はSDGsのこれからについて伺いたいと思います。
 本県は、2019年7月にSDGs未来都市に選定され、今年度末までの愛知県SDGs未来都市計画を策定し、目標の達成に向けて取組を進めているところであります。計画策定以降、2年余りが経過した中、これまでの取組を振り返り、今後の方向性を検討している時期に来ていると認識しております。
 この点については、6月定例県議会で我が団の河合洋介総務会長がSDGsの推進について代表質問で触れ、大村知事から、県民の皆様のSDGsに関する理解の状況を踏まえつつ、今年度内に次期計画を策定してまいりますとの答弁をいただいたところであります。
 私自身は、SDGsという理念を多くの方に知っていただきたいという思いから常にバッジを胸につけ、特に本県がSDGs未来都市に選定された以降は、県が間伐材で製作したこのSDGsバッジを着用し続けています。当初は、バッジの珍しさに、それは何のバッジですかと何度も尋ねられていましたが、今は、誰からもそのような問合せはありません。それだけSDGsというものが浸透してきていると肌で感じているところであります。
 ここからが大切な次のステージであります。河合総務会長も質問の中でその課題に触れていました。県民の皆様にSDGsが正しく理解されているのか、また、自分事として取り組んでもらえるのかという点であります。多くの県民の皆様にSDGsを御認識いただいているのであれば、次は、行動につなげていただけるような取組も必要ではないかと考えます。
 そこでお伺いします。
 SDGs推進に向けたこれまでの取組の評価と今後の方向性について、知事の御所見をお伺いします。

 最後の質問となりますが、安定した資金調達に向けた取組についてお伺いします。  本県の今年度当初予算における一般会計予算額は、新型コロナウイルス感染症対策への計上がかさみ、2兆7163億余円となる一方、県税収入は1兆532億円、地方消費税清算金等を含めた自主財源でも1兆8349億円であり、約3分の1が依存財源となっております。その中心となる県債は、前年度と比較し1700億円増、当初予算としては過去最大となる4080億円となりました。  この結果、2021年度末の県債残高は、5兆6404億円と過去最大となる見込みで、通常の県債の着実な償還を進め残高を減少させるとともに、県債全体の残高減少に向けた努力が必要なことは議会ごとに触れられ、大変重要な課題であります。  一方で、県債の適切な発行による安定的な資金調達が求められ、県の財政運営等に関する評価、情報を投資家に提供することや、市場や投資家のニーズに的確に対応することも大切であります。そもそも、本県の県債は市場でどのように評価されているのでしょうか。また、県債の発行を通して、県の事業にどれだけの理解が得られているのでしょうか。  こうした中、最近注目を集めているのがESG債です。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ってつくられた言葉で、ESG債は環境改善や社会貢献に何らかの効果のある事業を資金使途とする債券を指し、資金の使途に応じて、グリーンボンド(環境債)、ソーシャルボンド(社会貢献債)、サステーナビリティーボンド(環境及び社会貢献債)などに分類されます。  自治体のESG債としては、東京都が2017年に初めてグリーンボンドを起債し、長野県、神奈川県、川崎市が続き、三重県と福岡市がその発行に意欲を示しているところであります。また、東京都は本年6月、今度は初めてのソーシャルボンドの条件決定を行い、自治体が一度に起債するESG債として最大の発行額300億円に対し、最終需要は約3420億円に達したとの報道もありました。  サステーナビリティーボンドについては、北九州市が北九州市SDGs未来都市計画で掲げるSDGs戦略(ビジョン)達成に向けた取組を推進するための資金調達の一環として、北九州市SDGs未来債を本年10月に発行したところであります。そろそろ、本県でもESG債発行を視野に入れた資金調達の多様化の取組を検討すべき時期に来ているのではないかと考えます。  そこでお伺いします。  安定的な資金調達を行うに当たり、また、県の財政状況等を広く理解していただけるよう、本県では県債発行に向けどのように取り組まれているのか、知事の御所見をお伺いします。

 以上、新政あいち県議団を代表して、県政各般にわたる様々な課題についてお尋ねいたしました。真摯な御答弁をお願い申し上げまして質問を閉じたいと思います。御清聴ありがとうございました。


<答弁要旨>

今後の保健所の役割について


(知事)
新政あいち県議団の日比たけまさ政策調査会長の質問にお答えいたします。
 その前に、今日のこのマスクは、春日井のマンホールの蓋を模したマスクでございます。よろしくお願いいたします。
 さて、初めに、新型コロナウイルス感染症の第5波までの対応を踏まえた今後の保健所の役割についてお答えをいたします。
 その前に、今日この時点の速報値でありますが、愛知県の新型コロナの陽性者は、県所管分で3人、名古屋市で2人ということで、中核市はまだ、大体3時過ぎぐらいに来ますので、ですから、今日も一桁ではないかと思っております。今日も落ち着いている状況だということを申し上げたいと思っております。
 さて、保健所の役割でございます。新型コロナウイルス感染症の第五波では、感染力が強いデルタ株の広がりにより新規陽性者数が急増し、8月27日には過去最多の2339人を記録するなど、これまでにない規模とスピードで感染が拡大をいたしました。
 このため、県保健所では、感染源の推定などを行う疫学調査や自宅療養者の健康観察、入院調整などの業務量が大幅に増加をいたしました。
 この事態に対応するため、本県の保健所以外に所属する保健師、薬剤師等の専門職員及び事務職員に加えまして、市町村からの保健師や外部委託による看護師、合わせて最大一日当たり180人の応援職員を配置し、保健所業務を支援いたしました。
 しかしながら、感染の拡大スピードが応援職員の配置より速かったため、配置するまでの間、保健所に過重な負荷が生じました。
 そのため、次の感染拡大に備えてあらかじめ感染状況に応じた応援体制を決めておくことにより、迅速に対応できるようにしてまいります。
 また、第5波では、自宅療養者が2万人に迫るほど急増し、体温や血中酸素飽和度、症状の有無等を確認する日々の健康観察業務に多くの時間を要しておりました。
 今後、初回の健康観察につきましては、保健所職員が行いますが、軽症者や無症状者の2回目以降は外部委託を進め、より専門性が必要な疫学調査や入院調整業務に保健所職員が従事できるようにいたします。
 さらに、感染拡大時には、夜間の入院調整業務を本庁に一元化いたしまして業務の効率化を図るとともに、自宅療養者と連絡が取れなかった際の訪問による状況確認を市町村と連携して実施し、容体の急変等にも迅速に対応してまいります。
 こうした第5波の検証を踏まえた保健所業務の見直しや市町村との連携を強化するなど、次の感染拡大に備えた対策を講じることにより、県民の皆様の命と健康を全力で守ってまいります。
 いずれにしても、この時期にいろんなシミュレーションをして、保健所業務を、しっかり一つずつ業務を洗い出しまして、保健所の機能強化ということで次なる第6波に備えていきたいと考えております。


犯罪被害者支援について

(警察本部長)
県警察における犯罪被害者支援の取組についての御質問にお答えいたします。
 県民の皆様が犯罪に遭わないということが、まず大事なことでありますが、不幸にして被害に遭われた場合には、再び平穏な生活を営むことができるよう、社会全体で途切れのない支援を行っていくことが重要となります。
 県警察としましても、犯罪被害の直後から被害者と接することとなりますので、最も身近な機関として、精神的被害回復と経済的負担軽減の2つの面から取組を進めております。
 このうち、精神的被害回復については、警察署等においてあらかじめ指定された犯罪被害者支援要員が、殺人事件等、社会的反響の大きい事件、事故が発生した際には、御遺族や被害者に対して被害発生直後から、その不安感を軽減するため、診療先への付添いや各種制度等の教示といったニーズに応じた支援活動を実施しております。
 また、多数の死傷者を伴う凶悪事件等が発生した場合には、県下の支援要員を集中的に運用し、支援活動を実施することとしております。
 なお、支援要員に対しては、被害者支援に必要な知識及び能力の向上のため、研修等を行っております。
 さらに、警察本部に、犯罪被害者のためのこころの悩み相談、ハートフルラインを設置し、心理職職員が相談電話対応やカウンセリングも行っております。
 次に、経済的負担軽減のための支援としては、犯罪行為等による御遺体の傷痕を目立たなくするための修復費用や、性犯罪被害者への医療費の支援といった各種公費負担制度等を整備しております。
 このように、県警察では、支援活動の入り口部分において、被害者支援に力を入れて取り組んでおりますが、犯罪被害者の幅広いニーズに対応するためには、自治体や関係機関、犯罪被害者等早期援助団体に指定されております公益社団法人被害者サポートセンターあいちをはじめとした民間支援団体との協力が不可欠でありますので、引き続き連携を図ってまいります。


観光振興施策について

(知事)
 続いて、ポストコロナを見据えた観光振興施策についてであります。
 ポストコロナにおきましては、国内外から多くの旅行者を呼び込み需要の拡大を図るとともに、一人当たりの消費額を増やしていくことで、観光関連産業を成長軌道へと導いていく必要があります。
 そのため、昨年12月に策定をしたあいち観光戦略では、愛知ならではの多様な地域資源を磨き上げ、観光コンテンツの高付加価値化を図るあいち「ツウ」リズムを施策の主要な柱の1つとして掲げ、取組を推進していくこととしております。
 今年度は、歴史、産業、自然の3つのテーマについて、観光の魅力を十分に引き出し伝えていくため、旅行者のニーズを詳細に調査するとともに、質の高い観光ガイドを育成し、モデル的にガイドつきの旅行商品を造成して販売を行ってまいります。
 また、2022年秋のジブリパーク開業に向けて、観光関連事業者等が来場者に対し、デジタルを活用して効果的に情報発信を行う仕組みを構築し、県内周遊観光を促進してまいります。
 さらに、インバウンド再開後に愛知が旅行先として選ばれるよう、海外に向けて積極的な情報発信を行うことも重要であります。海外6か国に設置をしている観光レップでは、現地メディアや旅行会社に向けた本県のセールス活動を現地目線で継続的に実施いたしております。
 また、口コミサイトを利用して旅行先の情報を得る外国人旅行者が多いことから、観光施設をはじめとした事業者による情報発信を促進するため、世界最大級の口コミサイトへの登録支援に取り組んでいるところでございます。
 また、さらに、再来年、2023年のNHKの大河ドラマが、どうする家康ということになっておりまして、おととい29日の月曜日にその主要な配役の発表がありました。主役の徳川家康役に松本潤さんはもう発表されておりますが、織田信長役に岡田准一、豊臣秀吉、ムロツヨシ、武田信玄、阿部寛、今川義元、野村萬斎、築山殿が有村架純とそうそうたる豪華なキャストということであります。多分相当若い女性層に受けるのではないかという感じがいたします。また、拠点は岡崎ということになろうかと思いますが、愛知県全域で広域的な観光ルートなども
できないかということも含めて、何らかの対応といいますか、積極的に対応をしていきたいと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
 ポストコロナを見据え、観光の質を向上して競争力を高めるとともに、的確な情報発信により効果的に愛知の魅力を伝えていくことで、本県の観光のさらなる成長、発展につなげてまいります。


森を守る取組について

(知事)
 次に、森を守る取組についてのお尋ねであります。
 議員御指摘のとおり、森林の多面的機能を適切に発揮させるための様々な施策を進める上で、森林所有者の把握は重要であります。
 森林法では、相続や売買等で新たに森林の所有者となった場合に市町村への届出が義務づけられており、県といたしましては、この届出制度が確実に運用されるよう、ウェブページや市町村を通じて周知を図っております。
 また、2019年4月から、森林所有者の意向を確認した上で、市町村が所有者に代わって経営管理を行うことができる森林経営管理制度が施行されております。この制度では、所有者が不明な場合はその探索を行い、それでもなお不明な場合は、公告等の手続を経て、市町村による経営管理が可能となります。
 この制度を推進するために、県の林業普及指導員が市町村に対し、森林経営に関する技術的な助言を行っておりまして、さらに、情報提供や法律相談等の窓口として、あいち森林経営管理サポートセンターを今年度開設したところでございます。
 県内では、岡崎市さんが全国に先駆けて森林経営管理制度の取組を進めており、2021年10月の時点で90ヘクタールの森林の経営管理を所有者に代わって行っております。
 このうち、17ヘクタールの森林では所有者が不明でありましたが、これまで県が森林整備を進める上で培ってきた地域の方々とのネットワークを生かして、県と市が連携して聞き取りなどを進めて、結果、全ての森林所有者を特定することができました。
 県といたしましては、これらの取組を県内の市町村に広げていくことで、所有者不明の森林をこれ以上増やすことなく、森林の持つ多面的機能が適切に発揮されるよう努めてまいります。
 なお、午前中も答弁をいたしましたが、森林整備は、カーボンニュートラルにとっても大変大事な施策であると思っておりますので、これまで以上に積極的に進めていきたいと考えております。


自動運転の推進について

(知事)
 続いて、自動運転の推進に向けた取組についてお答えをいたします。
 自動運転の実現は、自動車産業の振興はもとより、高齢者等の移動支援など県民生活の向上の面においても期待されるため、県として先導的に取組を進めてまいりました。
 本県はこれまで、自動運転の社会実装を目指して、全国に先駆けての遠隔型自動運転の実施や5Gの活用など、自動運転技術の向上に焦点を当てた取組をはじめ、公共交通との連携や車室空間の在り方など、多様な活用方法についても検討を進めてきたところであります。
 今年度は、シンガポールで実用化されている自動運転車両を取り入れ、これは都心といいますか、鶴舞駅のところで取り入れて、8月末から10月末まで2か月間、都心の鶴舞公園界隈の幹線道路において、長期間にわたって地域の移動手段として活用する全国初の実証実験も行いました。
 初日に私も試乗いたしましたが、ハンドルがない車で、何かあったらすぐ止まるということでございまして、たまたま鶴舞公園辺りの道路の歩道の植え込みが少し道にはみ出ていて、刈っていなくて、それでも止まってしまいましたので、早速名古屋市さんに言ったらすぐ刈ってくれまして、次の日からはスムーズに、二車線あって一番歩道側のほうを通ったということでございました。
 ということで、そうした実証実験も行い、とにかく実用化をしていきたいと考えております。
 今後は、安心・安全な愛知らしい自動運転社会を実現するため、国内外の技術、ノウハウを結集し、社会実装に向けた取組をさらに加速してまいります。
 具体的には、安心・安全で継続的に運行可能なビジネスモデルを構築するため、歩行者等の安全確保策や悪天候におけるさらなる走行性能の向上はもとより、交通事業者や地域の集客施設などをはじめ、幅広いプレーヤーの連携を促し、社会実装を見据えた、より先進的な実証実験に挑戦をしてまいります。
 ちなみに、先ほど申し上げたシンガポールでは、我々が取り寄せた車両で、もう既に実用化しておりまして、料金を取って定期的に回っております。その際に、じゃ、事故が起きたらどうなるかといったら、そこにぶつかっていった車のほうに責任があると、自動運転車両は悪くないという法制度にしてあるので実用化できるということなんです。これは日本では、まだ到底そういうふうに法制度が至っておりませんので、そこはしっかり検証し、どちらにどのぐらいの責任を負わせるのかというのをしっかり詰めていかないと公道での実用化といったことにはいきませんので、我々がしっかりこれを積み上げていって、それを国のほうに提言していきたいと思っております。
 いずれにしても、こうした実証実験を通じて、現在進展している自動車産業の構造転換への対応や社会課題の解決につなげてまいりたいと考えております。


産業空洞化対策減税基金について

(知事)
 次に、産業空洞化対策減税基金の取組と成果についてであります。
 本県は、圧倒的なモノづくり産業の集積を基盤に、集積が新たな集積を呼び、イノベーションの好循環を生む愛知型成長モデルを磨き上げてまいりました。
 こうしたビジョンを実現する施策の一つとして、2012年度に産業空洞化対策減税基金に基づく補助制度を立ち上げて、高付加価値のモノづくりの維持、拡大に資する工場、研究施設の立地促進、今後の成長が見込まれる分野などの研究開発、実証実験の支援に取り組んでいるところであります。
 産業立地の補助金では、これまで379件を採択して、高度先端産業の大規模投資や、長年本県内に立地する企業の再投資などを支援してまいりました。
 その成果として、総額6342億余円の投資を呼び込み、5万8千名を超える常用雇用者が維持、創出される見込みとなっております。
 また、研究開発、実証実験の補助金では、これまで766件を採択し、新製品、新技術の開発を支援してまいりました。2016年度から2020年度までの直近の5年間では、補助をした402件のうち6割を超える248件で商品化または試作品が完成し、売上高は約41億円という成果が出ております。
 一方で、時代の変化や企業のニーズを踏まえた制度見直しも行ってまいりました。例えば、研究開発、実証実験の補助金では、2018年度から2020年度までの3年間でサービスロボットの実用化に向けた支援を行いました。
 これは、2020年にワールドロボットサミットと、おとといまでやっておりましたロボカップアジアパシフィックがありましたので、それに向けてということでありましたが、このサービスロボットも特別枠をつくって支援を行いました。
 また、過去に採択実績がない中小企業からの申請を積極的に採択するトライアル型を2018年度より新設いたしました──21世紀枠みたいなものですね──ということでございます。
 それから、産業立地の補助金では、今年度から感染症リスク対策に関連する製品分野を対象に加えさせていただいております。
 今後も、百年に一度と言われる自動車産業の大変革、デジタル技術の進展など、社会経済環境の変化を的確に捉えながら、新たな事業展開にチャレンジする企業の取組を後押しすることにより、本県産業の競争力の強化、産業首都あいちの実現を図ってまいります。


魅力ある県立高校づくりについて

(知事)
 続いて、魅力ある県立高校づくりに向けた取組についてのお尋ねであります。
 先月発表いたしました県立高等学校再編将来構想案では、県立高校の一層の魅力化、特色化と再編を行うこととしており、その方向性としては、学校づくりにおいて、中学生が学びたいと思える学校や生徒が主体的に学べる学校、時代の変化に対応した新しいタイプの学校、地域の期待に応える学校を目指すほか、外部の専門機関と連携した教育体制の構築を基本的な考え方に据えて今後の取組を進めてまいります。
 時代の変化に対応した新しいタイプの学校として、2023年度から、例えば、犬山南高校では、DX人材や起業家マインドを持った人材の育成に、また、豊川市の御津高校では、外国とつながりのある生徒や特別な支援が必要な生徒など、多様な生徒を受け入れてインクルーシブな教育に取り組んでまいります。
 このほか、商業高校において、ITビジネス科や地域ビジネス科などへリニューアルを図るとともに、今年度、名称変更した工科高校においても、産業界や地域のニーズを踏まえた学校づくりを進めるなど、県立高校の一層の魅力化、特色化に取り組んでまいります。
 また、中学校卒業者数の減少に伴い、高等学校が小規模化すると教育活動に支障を来すおそれがありますので、地域ごとの進路動向を総合的に勘案し、統合等による前向きな再編も進めることといたしております。再編対象校は、適切な時期にその都度決定をいたしますが、2023年度には稲沢高校、稲沢東高校、尾西高校の3校を統合するということと、2025年度には津島北高校と海翔高校の2校をそれぞれ統合することを考えております。
 なお、山間部や半島部などの人口減少地域では、生徒の通学可能な高校が限られますので、地元自治体などと継続的に協議を進め、できる限り存続できるように努めてまいります。
 中学校の卒業者数は、2026年度以降に大きく減少をいたします。学校の小規模化が進む前に、早め早めに統合や学科改編など地域の期待に応える学校づくりに取り組んでまいります。


障害者差別解消に向けた取組について

(知事)
 次に、障害者差別解消に向けた取組と今後の対応についてであります。
 障害のある方が安心して自立した生活を営み、社会参加や自己実現を図るには、障害者差別はあってはならないものでありまして、本県では2015年12月、障害者差別解消推進条例を定め、県民、事業者の皆様や市町村と一体となり差別解消に取り組んでいるところであります。
 2016年4月には、県と全市町村に相談窓口を設置するとともに、市町村を専門的に支援する広域相談窓口を県に9か所設置し、障害のある方からの相談に的確に対応する体制を整備しております。
 また、障害のある方と高校生との意見交換会や、県・市町村職員を対象とした研修を実施するなど、広く障害に対する理解促進に努めております。
 今年7月の県政世論調査では、条例施行前と比べ差別や偏見が改善されていないと答えた人の割合が18.4%、改善されていると答えた人の割合が32.7%となっており、条例制定による一定の成果があったものと思われます。
 一方、差別や偏見があると回答した人の割合は76.3%となっており、引き続き差別解消に向けた取組を積み重ねていくことが必要と考えております。
 こうした中で、今年5月に成立した改正障害者差別解消法では、事業者による合理的配慮の提供が努力義務から義務化されるなど、さらなる取組が求められ、来年夏には、国の障害者差別解消の推進に関する基本方針の改定が予定をされております。法律ができて、その後、国の基本方針の改定があるということであります。
 したがいまして、現在本県では、障害者差別解消の一層の推進を図るため、条例の見直しに向けて、障害者団体はもとより、事業者団体からも丁寧にヒアリングを行うなど、検討を進めているところであります。
 県といたしましては、障害の有無によって分け隔てられることなく相互に尊重し合う共生社会の実現に向けて、障害者差別の解消にしっかりと取り組んでまいります。
 今、申し上げましたように、ヒアリングを行うなど検討を進めておりますので、国の方針がまとまればそれを踏まえつつ、本県の状況を踏まえて、障害者団体の皆様、関係団体の皆さんとしっかりと合意、連携をした上で、また県議会の皆さんに提出し御相談をさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いをいたします。


障害者スポーツの普及拡大について

(知事)
 続いて、障害者スポーツの普及拡大に向けた取組についてお答えをいたします。
 このたびの東京2020パラリンピック競技大会では、本県ゆかりの15名の選手をはじめとする日本代表選手のすばらしい活躍が、テレビやインターネットなどを通じて全国、そして世界に向けて発信されました。困難を乗り越え、自らの限界に挑むパラリンピアンの躍動は、私たちに大きな感動と勇気を与えてくれただけでなく、多様性を尊重し合う共生社会の大切さを伝えてくれました。
 障害者スポーツは、障害への理解促進や障害のある方の自立と社会参加の促進に大きく寄与するものであり、全ての人が生涯輝き活躍できる愛知には欠くことのできないものでございます。
 このため、本県では今年度から、パラアスリートやスポーツ団体、経済団体、医療関係者などで構成するあいち障害者スポーツ連絡協議会を立ち上げまして、専門的な立場からの御意見や御協力をいただきながら、障害者スポーツの一層の推進に取り組んでおります。
 10月には、パラリンピックやアジアパラ競技大会など、世界を舞台に活躍できる地元選手を育てていくため、あいちトップアスリートアカデミーのパラアスリート部門を開講いたしました。そして、初代のパラアカデミー生6名が、夢の実現に向けた第一歩を踏み出したところでございます。
 また、障害のある方もない方も一緒にスポーツを楽しめる場を愛知の隅々まで広げていくため、地域のスポーツ指導者が障害者スポーツについて学ぶ機会や、身近なスポーツクラブでボッチャなどを体験できる機会も増やしてまいります。
 さらに、スポーツの大会やイベントの情報、スポーツ施設のバリアフリー情報などを広く発信し、共有できるポータルサイトを今年度中に開設いたします。
 こうした取組を通じて、障害者スポーツをする人、見る人、支える人の裾野をさらに広げながら、愛知が日本の障害者スポーツをリードし、大いに盛り上げてまいります。


SDGs推進について

(知事)
 次に、SDGs推進に向けたこれまでの取組の評価と今後についてのお尋ねであります。
 本県では、2019年7月にSDGs未来都市に選定されたことを受けて、SDGs未来都市計画を策定し、自動運転、ロボットの社会実装の推進や生物多様性保全などSDGsの達成に向けた取組とともに、県民の皆様への啓発活動を積極的に進めてまいりました。
 そうした中で、本年7月に実施した県政世論調査では、SDGsという言葉を聞いたことがあり内容も知っていると答えた人は、2年前が7.7%、そして今年7月に42.2%に上昇するなど、SDGsへの理解は急速に進んでおり、県や市町村、民間企業など関係者による取組の成果の現れと受け止めております。
 その上で、今後は、SDGsへの理解をさらに高めるとともに、県民や企業等の皆様の具体的な行動につなげていくことが重要であります。
 このため、本年9月には、企業、団体等のSDGs達成に向けた取組を見える化して具体的な取組を促進するSDGs登録制度を創設し、これまでに250を超える企業、団体の皆様に登録をいただいております。まだまだ増えております。
 また、10月には、国のSDGs関連国際会議と連携して、SDGs・アイチ・エキスポ2021を開催し、企業、学校、NPOなど102団体のブース出展とともに、5千人を超える方々に御来場をいただきました。こうしたイベントを通じ、SDGs達成に向けた多様な主体のパートナーシップの構築や行動の促進につなげてまいります。
 さらに、今年度末には、来年度から3か年を計画期間とする新たなSDGs未来都市計画を策定する予定でありまして、SDGs達成に大きく関わるカーボンニュートラルやデジタル化といった新しい課題にも対応しつつ、新たな数値目標や施策を盛り込んでまいります。
 今後も、SDGsの達成に向け、経済、社会、環境の3側面の取組を全庁を挙げて進めるとともに、県民、企業等の皆様の具体的な行動を促す効果的な普及啓発に一層取り組んでまいります。


安定した資金調達について

(知事)
 私からの最後の答弁になりますが、安定した資金調達に向けた取組についてお答えをいたします。
 県債は、将来にわたり重要な資金調達の手段であると認識しておりまして、あいち行革プラン2020におきましても、円滑な資金調達を個別取組事項として位置づけております。
 安定的な調達につきましては、県債発行の中心である市場公募債において、投資家のニーズをしっかりと捉えることができるよう、発行の時期や額の平準化、基幹的な年限である10年債を中心に5年債や20年債などの満期一括償還債のほか、毎年度一定割合で元金償還がある定時償還債の発行といった年限や償還方式の多様化などに継続的に取り組んでおります。
 また、本県の財政状況等を広く理解していただくための取組としましては、銀行や保険会社など幅広い投資家に対して、本県の強固な経済基盤や産業基盤、そして高い財政力を背景とした健全な財政運営などについて分かりやすく説明するIR活動を行っております。
 さらに、投資家の信認をいただくため、国内、海外の複数機関から格付を取得し、現在、地方債で最も高い格付を得ております。国債と同じランクということでございます。
 これらの取組により、愛知県債は投資家から非常に高い評価をいただき安定した資金調達を実現できておりますが、その維持には不断の努力が必要であります。議員御指摘のESG債の発行といった取組につきましても、そのメリットやデメリット──両方ありますのでね──について研究を進めるとともに、これまで行ってきている取組もさらに工夫していくことで、引き続き安定的な資金調達に努めてまいりたいと考えております。  以上、御答弁申し上げました。