平成26年9月定例会(2014.9.26)

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平成26年9月定例会一般質問
日比たけまさ 平成26年9月定例会一般質問

《一般質問》

 通告に従い「AED導入10年を振り返って」および「子どもたちの放課後について」順次質問をしてまいります。
 今年は、日本で一般市民がAED(自動体外式除細動器)を使うことができるようになって10年の節目となります。愛知県議会においては、ちょうど10年前の平成16年9月議会にてわが団の高橋正子議員が「心臓突然死に関する課題と今後の取り組みについて」質問し、これを機に愛知県では全国に先駆けて高等学校や公共施設へのAED導入が進められました。また、愛知万博での救命症例が報道で大きく取り上げられたこともあり、今、AEDは私たちの身近なところで見かけられるまで普及しました。愛知県は人口当たりの設置数では世界で一番といわれるまでになった我が国のAED普及の旗振り役として、大きな成果を残してきたところです。この点は、評価できるところだと思います。
 そうした経緯を踏まえ、今回はこの10年間の取り組みにおける成果、現状の課題と今後の方向性について順次伺っていきます。

 始めにAEDの設置について伺います。県としてはこの10年間、どのような点を意識し普及に取り組まれてきたのでしょうか。愛知県が作成したホームページ「あいちAEDマップ」の登録数は4,300件ほどとなっていますが、現在、県内にAEDはどのくらいの数が設置されているのでしょうか。
 また、どのくらい使用されたのでしょうか。効果と併せてご答弁ください。
 次に、一般市民がAEDを使用した事例について検証をするための協議会などの組織は設置されているのでしょうか。
 さらに、設置個所としての基準はあるのでしょうか。加えて、せっかくAEDがあっても建物のどこにあるのかわからないことが多々あります。例えば非常口の表示のようにいざというときにAEDの設置場所がわかるようガイドライン等で示すことも大切ではないかと考えますが、見解を伺います。

 次にAEDの使用状況、すなわち私たちが「いざというときにAEDを使用できるため」に行政として行うべき取り組みについて順次伺います。まず前段として、なぜ一般市民にAEDが使用できるようになったのか、簡単に触れたいと思います。日本不整脈学会のデータでは、年間約6万人もの方が心臓の異常を原因となる心臓突然死で亡くなっています。1日約160人になります。心臓突然死の大半は心室細動という不整脈によっておこり、心臓から血液を送り出せない状態となります。例えると心臓がブルブル震えているような状態で、こうなると数秒で意識を失います。一刻の猶予もならない状態です。そしてこの心室細動を取り除き、正常な心臓の動きを取り戻すために行うのがAEDによる電気ショックです。しかし、電気ショックの効果は時間とともに失われ、1分遅れると約10%ずつ救命率が低下すると言われています。生死の境目は初動の時間に託されるわけですが、昨今、救急車の利用頻度が増すなか、救急隊が通報を受けてから現場に到着するまで平均8分かかるといわれております。この10年で約2分も遅くなっています。「救急車ではない。私が救うんだ。」これは心臓突然死の撲滅を目標とする「減らせ突然死実行委員会」が製作するポスターの標語ですが、私が申しあげた現状だけで、この言葉の重みを感じて頂けることと思います。
 ここで総務省消防庁のデータによる、一般市民が行う除細動(以下、PAD:Public Access Defibrillation)の件数をご紹介しますと、導入翌年の平成17年には46件であったものが平成24年には881件と19倍に増えています。しかし心停止に対する実施率は、3.7%とまだまだ非常に小さな数字です。ハード面は整備されつつある状況の中でも、いざというときに私たちひとりひとりが使える状況にまでには至っていないのではないでしょうか。
 この点について別の調査からもデータをご紹介します。本年NHKが行ったアンケート調査の結果では「見知らぬ人が目の前で突然倒れた場合、その場にAEDがあればその人にAEDを使うことができると思いますか」という質問に対し、「できる」と回答した人は35.6%にとどまり、また、別の設問として「これまでAEDの使い方を含む心肺蘇生の講習会に参加したことがありますか」に対しては、「ある」と回答した方が36.9%とほぼ同じ水準です。
 そこでAEDの講習について伺います。AEDの講習については、消防本部、日本赤十字社、保健所、医師会など様々な団体で実施されておりますが、最も多く実施されているのが、消防本部だと思います。そこで、県内消防本部で一般の県民に対し、講習がどれくらい行われ、どの程度の県民が受講されたのか、お尋ねします。また、消防本部での救命講習実施について、県としての今後の方針や目標について伺います。
 ここで、学校におけるAED教育について考えてみたいと思います。
 私が、学校を取り上げた理由は2点。1点目として、AEDに対する認識がまだ低いと感じるなか、確実に学んでいただく機会として学校の中で取り上げて頂くことが大変重要であると考えます。AEDの扱いは難しいものではありません。大切なことは「命の尊さ」を理解し、いざというときに自分が「助けるんだ」という勇気です。そして2点目は、年代別のPAD集計をとってみると0歳代、20歳代と比較し、10歳代の割合が高い。すなわち学校現場でAEDが使われるケースが意外と多いということです。10歳代だけをとってみると、この8年間で140人に対してAEDが使用され、その内の6割を超える90人が社会復帰をしています。朝、「行ってきます!」と元気で出て行った子どもが学校で突然倒れ、帰らぬこととなったら。大切なわが子を思う親御さんの気持ちをみなさん、想像してみてください。
 ここで、ある事故を通じてさいたま市で行われるようになった取組をご紹介します。
 平成23年9月29日、小学校6年生の桐田明日香さんが駅伝の練習中に倒れ、翌日亡くなりました。明日香さんが倒れた時、その場に居合わせた教員は「呼吸がある」ととらえ、心肺蘇生もAEDの装着もしませんでした。実はこの時明日香さんは、あえぎ呼吸という状態でした。心臓は止まっていましたが小さな身体は生きようとし、「助けて!」という必死のサインを出していたんです。しかしこのサインに誰も気づくことなく、明日香さんは保健室のベッドの上で救急隊の到着を待ちました。11分後に救急隊が到着し、病院へ搬送されましたが、若い命を救うことはできませんでした。
 この悲しい事故を機に、さいたま市教育委員会は「事故対応検証委員会報告」を踏まえ、教員研修のための分かりやすいテキスト「ASUKAモデル」を作成しました。この背景には事故に対する学校への思いを「対立」という形ではなく「協力」という形に変えた、ご両親のとても強い思い、そして市教育委員会の真摯な対応があったそうです。市ではASUKAモデルの普及活動とともに、AEDの使用を含む心肺蘇生法の実習を、小・中・高等学校のカリキュラムに位置づけ、「中学校第1学年段階で、全ての生徒がAEDの使用を含む心肺蘇生法を行うことができる」ことを目指して、小学校5年生から系統的・計画的に発達段階に応じた「心肺蘇生法実習」を実施しています。
 こうした取り組みは、共助、助け合いを旨とした防災教育や、命の大切さを実感することを通じて、いじめや自殺の防止教育にもつながるものと考えられ、さらには「人を助けるために自分にもできることがある」という自己有用感を育む効果が得られるのではないかと期待しているそうです。
 ただ、全国的にみるとこうした教育はまだまだ少数事例です。心肺蘇生法や応急手当の学校での導入は、すでに15年前から中学体育・高校保健体育の授業内で実施することと学習指導要領に記載されていますが、日本学校保健会が本年報告した調査結果によると、実際に教育が行われているのは小学校で10%、中学校42%、高等学校では63%にとどまっていることが明らかとなりました。また、教員へのアンケートによると心肺蘇生教育が必要と理解していながら、実施していない理由として、良い教材がない、教え方が分からない、時間がないといった消極的な結果がでています。

 そこで、本県における学校でのAED教育について伺います。まず、学校においてAEDの設置は必要不可欠であると考えますが、現在の設置状況をお示しください。
 次に、中学校・高等学校でどのようにAED教育に取り組んでいるのでしょうか。また、学習指導要領に定めのない小学生への対応の現状はいかがでしょうか。伺います。
 さらに、小学校5、6年生の保健の教科書において、来年度からは心肺蘇生の記述がなされると聞いております。さいたま市の取り組みは、非常に効果のある取り組みであると考えますが、本県において小学校からのAED教育をどのように考えていくのか伺います。

 最後に、教職員が緊急時に対応できる体制づくりについて伺います。子どもたちへの教育を進める一方、現場の教職員への教育も大変重要であると考えます。
 そこで、教職員に対して、実際にAEDを活用した心肺蘇生実技講習会などの実施状況はどのようになっているのでしょうか。また、各学校において、事故発生時に迅速かつ的確な対応を行うためのマニュアルを整備するなど、危機管理体制を確立することが、いざという時の対応として喫緊の課題と考えますが、県としての現状と今後の方向性についてお答えください。

 続きまして「子どもたちの放課後について」順次質問をしてまいります。
 さあ、午後三時です。子どもたちは、どこで何をしているでしょう?
 私が子どもの頃、放課後の居場所は地域でした。「外で遊びなさい」と親に促され、公園や空き地で野球や缶けりをしていました。しかし、現在の親たちは「外で遊びなさい」と言い難い状況です。地域のきずなが薄くなり、見守る目も少なくなる一方で、放課後に子どもを狙った様々な事件が発生しています。今回、神戸で発生した女児が遺体で見つかった事件の報道を見る中で、「危なくて子どもだけで過ごさせるなんて無理」そう思われている親御さんも多いのではないでしょうか。
外で遊ぶことの少なくなった子どもは、家や習い事、塾など決まった場所で少人数で過ごすことが多くなりました。また、ゲームの発達も子どもたちの遊びを変えました。子ども達の放課後から「時間・空間・仲間」の三つの間、「サンマ」が消えたのです。
 過ごす場所が限られた放課後、一人で過ごす放課後、そんな放課後が子ども達の心を締め付けているのではないでしょうか。
 こんな調査報告があります。
 ユニセフ・イノチェンティ研究所が発表した「子どもの幸福度」調査にて、「孤独を感じる」と答えた日本の子どもの割合は29.8%。OECD加盟国で回答のあった25か国中、2位アイスランド(10.3%)、3位ポーランド(8.4%)を大きく引き離し、圧倒的に悪い結果です。
 こうした放課後の課題に対応すべく、国は平成19年「放課後子どもプラン」を打ち立てました。
 このプランでは、地域社会の中で放課後に子どもたちの安全で健やかな居場所づくりを推進するため、市町村において教育委員会と福祉部局が連携を図り、原則すべての小学校区に、文部科学省所管の「放課後子供教室」と厚生労働省所管の「放課後児童クラブ(いわゆる学童保育)」を一体的あるいは連携して実施することを掲げています。
 そこで、放課後子供教室について質問します。放課後子どもプランができてから7年が経過しましたが、県内市町村の放課後子供教室の実施はどのようになっているのでしょうか。また、県としてどのようにかかわり、市町村にどのような支援を行っているのか伺います。
 次に、放課後子どもプランを推進していく上での喫緊の課題、「小1の壁」と呼ばれる待機児童問題ついて触れます。「小1の壁」とは子どもが小学生になると保育所に代わる預け先がなくなり、親が仕事を続けられなくなる状況を指します。全国学童保育連絡協議会の調査によると、本年5月時点で待機児童数は前年より2171人増の9115人となりました。しかし、待機児童の定義は「利用申し込みをしながら何らかの理由で利用できなかった児童数」であることから、利用申し込みをせずに母親が仕事を辞めてしまうケースはこれには含まれません。従って潜在的な待機児童は数多くいると言われており、同協議会によれば、本年3月に保育所を卒園し小学校に入学した児童数は約43万人。これに対し、学童保育に入所した新1年生は約32万人と、保育所卒園児の4分の3しか学童保育を利用していないことなどから、潜在的な待機児童は数十万人いるとの試算もあります。
 そこで、放課後児童クラブについて質問します。本県の放課後児童クラブの実施状況はどのようになっており、待機児童はどの程度いるのでしょうか。また、待機児童解消に向け、これまでどのような取り組みを行ってきたのか伺います。
 次に、放課後児童クラブの運営に関わる財政支援について伺います。来年4月より新しく施行される子ども子育て支援法では、児童福祉法のような財政負担における大都市特例がないため、県は政令市や中核市における保育や地域子育て支援事業についても財政負担を強いられることになります。また、同時に施行される児童福祉法の一部改正により、放課後に留守宅児童を預かる学童保育の対象が「おおむね10歳未満」から「小学生」へと広がります。義務化ではないものの、各市町村では放課後児童クラブの具体的な事業計画を立てなければならず、対策費用がさらに増すことが予想されます。
 そこで、放課後児童クラブの運営費について、来年度から大都市特例がなくなり県は、名古屋市、豊橋市、岡崎市、豊田市分の3分の1を新たに負担することになりますが、平成26年度当初予算ベースで試算するとどの程度の影響があるのかお示しください。また、今後増加が見込まれる放課後児童クラブへの対策をどのように行っていく予定でしょうか。併せて財源における課題についても伺います。
 ここで、放課後の取り組みに積極的な自治体として全国から注目を集めている東京都江戸川区の「すくすくスクール」を紹介します。
 東京都江戸川区では平成17年度から区内全73の小学校で放課後に「すくすくスクール」を実施しております。平日、土曜日、夏休み等の午後5時まで全児童対象の放課後子供教室を実施し、その後1時間延長して放課後児童クラブを運営しておりますが、ここで驚くべき内容を2点紹介します。
 1点目は校庭や体育館を含め、学校の全施設を開放し多くの児童を受け入れている点です。江戸川区では、約7割の児童がすくすくスクールに登録をしております。2点目は、講師役を地域住民が無償で引き受け、学校によっては150人くらいの「地域先生」がいるという点です。すくすくスクールの校長先生は地域の町内会長や元PTA会長、子ども会会長などが務め、講師役は町内のお茶やお花、舞踊の先生、あるいは大学生や専門学校生が得意分野を子どもたちに教えているのです。
 このような江戸川区の大胆な運営は、多田区長の「放課後に人間関係を形成する場を設けよう」という強い思いにより実現しました。区長就任前には教育長であった多田区長は、校舎の開放について「学校の先生に責任を負ってもらう必要はない。私たちがすべての責任を負う」と熱心に説得して、学校側の理解を得たそうです。また、「学校は文部科学省、学童は厚生労働省という線引きは一切考えない。放課後の在り方にしても「女性の社会進出」といった大人目線での政策ではなく、子ども目線でしか考えていない」という江戸川区教育委員会教育推進課 野口係長の言葉が大変強く心に残りました。
 このように江戸川区では「教育」部署と「福祉」部署が一つとなり、子どもにとっての「理想の放課後」をしっかり作ったうえで、施策の展開を図っております。一方、多くの自治体では「放課後子供教室」と「放課後児童クラブ」の新設、内容の充実、学校施設の徹底活用など、プラン実現に向けた課題が山積しており、国も現状を「十分に進んでいない」と評価しています。
 こうしたなか、本年7月31日、国は新たに「放課後子ども総合プラン」を公表しました。新プランでは、平成31年度末までに放課後児童クラブについて約30万人分を新たに整備すること。また、全小学校区(約2万箇所)に放課後児童クラブと放課後子供教室を設け、うち1万箇所以上を一体型で実施すること。さらには新たに開設する放課後児童クラブの約80%を小学校内で実施することを掲げています。

 そこで、今回発表された「放課後子ども総合プラン」について、これまでの「放課後子どもプラン」とどのような点が異なり、その中で放課後子供教室はどのような役割を果たすと考えられているのか伺います。また、放課後子ども総合プランを推進していく上での課題を県はどのように考えているのか、また、その課題にどのように取り組んでいくつもりか伺います。
 以上、「AED導入10年を振り返って」および「子どもたちの放課後について」質問をしてまいりました。理事者各位の前向きな答弁をお願いいたしまして、壇上からの質問を終わります。ご静聴ありがとうございました。

《答弁要旨》

1 AED導入10年を振り返って

(保健医療局長)
 自動体外式除細動器いわゆるAEDの普及の取組についてお答えします。
 救急の現場に居合わせた医療従事者以外の方のAEDの使用につきましては、平成16年の厚生労働省通知により、法律上問題ないことが確認されました。
 そのため、県といたしましては、多くの方が来庁する県の施設に対してまず率先してAEDを配備するという方針を立て、平成16年度から18年度までの3か年以内に約350台を配備する計画を立てました。
 また、AEDの有効性や必要性を広く周知することが利用者の多い県以外の施設の管理者に設置を促すことにつながると考え、各保健所での広報やAED講習会の実施、また、毎年、9月9日を中心とする救急医療週間における行事など様々な機会を通じ、AEDの設置をしていただくよう普及、啓発に努めてまいりました。
 これらの取組によりまして、県の施設においては、平成18年度末までに県立学校、保健所などの施設にほぼ計画どおりの340台ほどが設置され、その後も整備が進み、平成26年9月1日現在で423台が配備されております。
次に県内全体のAED設置台数につきましては、AEDの設置に関する届出制はありませんが、平成24年3月に報告されております厚生労働科学研究によりますと、医療従事者以外の方が使用することを目的としたAEDの全国累計販売台数は、平成23年12月末までで約30万台となっております。
 このうち、本県につきましては、1万7千345台となっており、設置台数といたしましては、全国の都道府県で東京都、大阪府に次いで3番目といった状況になっております。
 本県の一般市民の方によるAEDの使用件数と効果についてのお尋ねであります。
 心肺機能停止傷病者に対する、一般市民の方によるAEDの使用に関するデータは総務省消防庁の救急統計でまとめられています。それによりますと、AEDが導入された平成17年当時にはAEDの使用が8件でしたが、直近の統計数値となる平成24年には107件に増えております。平成17年から平成24年までの8年間の累計は457件で、全国3位となっております。
 またAED使用の効果についてであります。本県の心肺機能停止傷病者の1ヶ月後の社会復帰率について、その場に居合わせた一般市民の方がAEDを使用した場合と使用しなかった場合を比較した消防庁の統計がございます。
 その内容は、直近の平成24年までの7年間で、使用しなかった場合は、17パーセント台から26パーセント台であるのに対し、使用した場合は、38パーセント台から51パーセント台と高くなっており、AEDの使用による救命の効果が現れていると考えております。
 次にAEDの設置個所に関する基準についてお答えいたします。
 医療従事者以外の方によるAEDの使用が認められた平成16年当時、AED設置個所等に関する基準は日本になかったため、アメリカ心臓協会のガイドライン等を参考としておりましたが、AEDの効果的かつ効率的な設置を一層推進するため、平成25年9月に「自動体外式除細動器(AED)の適正配置に関するガイドライン」が厚生労働省から公表されました。
 そのガイドラインに、AED設置が求められる施設の具体例が示されております。
 AEDの設置が推奨される施設の例といたしまして、まず、多数の人が集まる駅、空港などに積極的な設置が示されております。
 また、心臓発作のリスクの高い旅客機等の長距離輸送機関やスポーツ関連施設、さらに、デパート等の大規模な商業施設や市役所等の公共施設につきましても、設置が望ましいとされております。
 また、小学校、中学校など、学校管理下の児童・生徒の突然死のおよそ3割は心臓突然死と報告されていることから、学校についても設置が強く求められております。
 次に、AEDの設置場所等の基準につきましても、ガイドラインにおいて、「AEDの配置場所が容易に把握できるよう施設の見やすい場所に配置し、位置を示す掲示、或いは位置案内のサインボードなどを適切に掲示されていることが求められる。」と記載されております。
 ガイドラインにつきましては、県医師会始め関係団体及び市町村等に通知するなど周知を図っております。
 今後は、AED販売業者の方を通じまして、AED設置者に対し、設置場所を示すための掲示など施設内での適切な表示等について周知していただけるよう働きかけていきたいと思っております。

(防災局長)
 次に、一般市民の方がAEDを使用した事例について検証をするための協議会などの組織についてであります。
 本県では、救急隊員の活動の質を維持・向上させるため、医療機関や消防機関で構成する協議会として、平成14年に「愛知県救急業務高度化推進協議会」を設置し、さらに県内7地区に「地域メディカルコントロール協議会」を設置しております。
 これらの協議会では、救急救命士の医療行為に対して医師が指示を行う体制の充実や、救急救命士の教育の充実を図ることに加え、救急活動を医学的な観点で事後検証を行っております。
 この事後検証の取組の中で、一般市民の方がAEDで除細動を行った事案についてもすべて検証を行うこととしております。
 次に、消防本部でのAED使用法の講習の実施状況、受講人数についてであります。
 平成16年に総務省消防庁が「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」を改正して、AEDの使用法も含めた普及啓発に取り組むよう示しました。それを受け、県内各消防本部は応急手当講習の中でAEDの使用講習を含め実施しております。
 平成24年の講習の実施状況ですが、普通及び上級救命講習を約4,400回開催し約77,000人の方が受講しております。また、その他の簡易な講習も含めますと、合わせて約213,000人の方が受講されております。
こうした応急手当講習のここ数年の受講人数は21万人台となっており、平成17年から平成24年までの8年間の累計では、170万人を超える方が受講されております。
 消防本部での救命講習実施についての県としての今後の方針と目標についてであります。
 県といたしましては、一般市民の方のAEDの使用による救命の効果があらわれていることから、できるだけ多くの県民の皆様に受講していただくことが望ましいと考えております。
 本年7月に総務省消防庁から、AEDの有効活用についての通知が出されおり、この中で、一般市民の方がより受講しやすくするため、受講時間の短い「救命入門コース」や、パソコン等を活用するe-ラーニングなどの講習を積極的に活用すること、また、AEDを設置している施設の従業員やその周辺住民の方に対する応急手当の普及促進などが求められております。
 県といたしましても、国の通知に基づき、効果的な取組の促進について県内消防本部に周知徹底し、今後ともAEDの有効活用を図ってまいりたいと考えております。

(教育長) 
 学校でのAED教育についてお尋ねいただきました。
 まず、学校におけるAEDの設置状況でございますが、県立学校におきましては、平成17年度からすべての学校にAEDを設置しております。
 また、名古屋市を除く県内の公立小中学校につきましては、現在、小学校は2校を除いて、中学校はすべての学校にAEDが設置されております。設置していない小学校の2校につきましても、併設または隣接する施設等にあるAEDがすぐに活用できる状況にあります。
 なお、名古屋市立学校についても、全ての学校に設置されていると聞いております。
 次に、学校におけるAED教育の取組状況についてであります。
 中学校と高等学校におけるAEDの学習については、学習指導要領に基づき、保健の授業で実施しております。
 その指導内容は、中学校では、AEDの仕組やその使用方法、学校内外における設置場所など、また、高等学校では、AEDの使用による生存率の上昇、心臓マッサージとAEDの違い、感電を避ける使用上の注意事項などであり、知識を中心に学習を進めております。
 また、事故発生の際にAEDを適切に使用するためには、正しい知識とともに実際に機器にふれて学習することも重要であることから、消防署等の協力を得て訓練用のAEDを使用する心肺蘇生講習会などの実践的な学習を進めておりまして、平成24年度の実施状況は、中学校で63.2%、高等学校で80.7%であります。
 小学校では、原則として児童が直接AEDを扱うことは想定しておらず、学習指導要領においても記載はありませんが、AEDの役割や設置場所などの指導を行う学校があるほか、15.3%の学校では、訓練用機器を使用した実習を実施しております。
 次に、小学校からのAED教育の在り方についてのお尋ねであります。
 来年度は、小学校で使用する教科書の改訂の年度となっておりまして、本県で使用が予定されている小学校5・6年生の保健の教科書では、これまでは取り扱いのなかったAEDの記載がされることとなりますので、今後は、保健の授業を通じて学習することにより、児童のAEDに関する理解・関心を高めていくことができると考えております。
 しかしながら、教科書での取り扱いは、学校及び児童の実情に応じて学習を進めるという、いわゆる発展的な位置づけであるため、各学校に広くAED教育に取り組んでもらい、実習の実施など学習内容も充実させていくためには、指導に当たる教員の意識を高めていくことが必要となります。したがいまして、今後は、研修会等の場を活用し、小学校におけるAED教育の重要性を指導してまいりたいと考えております。
 次に、教職員に対する講習会の実施状況及び学校における事故発生時の危機管理体制の確立についてお尋ねいただきました。
 教職員に対するAEDを活用した心肺蘇生実技講習会の実施状況でございますが、平成24年度では、小学校は89.5%、中学校は80.9%、高等学校は83.3%の学校において実施されております。
 また、学校における危機管理体制についてでございますが、各学校は、学校保健安全法の規定に基づき、学校の実情に応じた危機管理マニュアルを作成しており、その中にAEDの使用も含めた心肺蘇生法などの応急対応についても記載することとしております。
 教育委員会といたしましては、学校による定期的なマニュアルの点検・見直しを指導するとともに、実際にAEDを使用した事例の検証結果を周知して、心肺蘇生法講習会の充実を促すなど、教職員の危機管理意識の向上を図り、いざという時にAEDの使用も含めた適切な対応ができるよう指導してまいりたいと考えております。

2 子どもたちの放課後について

(教育長)
 もう一点、子どもたちの放課後についてお尋ねをいただきました。
 先ず、県内市町村の放課後子供教室の実施状況とこれまでの県のかかわり等についてお答えします。
 放課後子供教室は、平成14年度の完全学校週5日制の実施に伴い整備された「地域子ども教室」を引き継いだものを含めて、平成19年度時点では、全県で398教室となっておりました。
 県では、制度発足後、その整備促進を図るため、放課後子どもプラン推進委員会を設置して、コーディネーターや指導者を対象にした研修を実施するとともに、政令指定都市及び中核市を除く市町村に対しては、この事業に係る費用の3分の1を補助するなど、市町村への支援に努めてきたところであります。
 その結果、年々整備が進み、平成26年度には622教室、全小学校区に対する実施率は約64%という状況になっております。
 次に、「放課後子ども総合プラン」と「放課後子どもプラン」の違いと、その中での放課後子供教室の役割についてであります。
 「放課後子ども総合プラン」では、留守家庭の児童の「生活の場」である児童クラブから、「教育の場」である子供教室へも参加のしやすいように、同一小学校内等で両事業を進めることで、有効な放課後対策となることを明確にいたしております。それとともに、学校施設の徹底した活用促進など、その具体的な方法についても示されております。
 留守家庭の増加が見込まれるこれからの社会で、児童クラブの子どもが子供教室も併せて利用できるようになれば、地域の大人との交流や体験活動などの機会が得られ、放課後の子どもの過ごし方として大変意義深いものになると考えております。
 最後の答弁でありますが、放課後子ども総合プランを推進していく上での課題とそれに対する取組についてであります。
 放課後子ども総合プランでは、同一小学校内に児童クラブと子供教室を設置することが求められており、その実施場所の確保が必要となります。しかし、敷地内に専用施設をつくるためのスペースを確保することが困難な学校もあることや、余裕教室は既に99.2%が少人数指導等で活用されているというのが現状であります。
 そこで、既に活用されている余裕教室とか敷地が放課後対策に利用できないかを改めて念入りに検討してもらわなければなりませんが、それが難しい場合には、児童の下校後の時間帯に使用していない教室等の一時的利用や、新たな専用施設を設置するために学校の隣接地を確保することなどの検討も必要になってくるというふうに考えております。
 県教育委員会としては、児童クラブを所管する健康福祉部とも連携し、先進的な取組事例の情報提供を行いながら、地域の実情にあった対応策を検討していただくよう市町村に働きかけてまいりたいと考えております。

(健康福祉部長)
 私からは放課後児童クラブについてお答えいたします。
 最初に、本県の放課後児童クラブの実施状況についてでございます。
 平成26年5月1日現在の速報値によりますと、政令市・中核市を除きます県所管の放課後児童クラブ数は680か所、登録児童数は28,039人で、前年同時期より23か所、1,685人の増加となっております。また、待機児童数は300人であり、前年より198人減少しております。
 本県では、これまで待機児童の解消を図るため、国庫補助制度も活用して、専用施設の設置や学校の余裕教室の活用による、放課後児童クラブの設置を市町村に対して働きかけるとともに、今年度当初予算では、放課後児童クラブ整備に係る助成費用を前年度の2倍以上に措置し、整備促進に努めているところでございます。
  次に、大都市特例廃止に伴う本県への影響額についてお答えいたします。
 平成26年度当初予算ベースで試算いたしますと、本県の放課後児童クラブの運営費に係る補助額は約18億円で、うち県の負担となる一般財源は約9億円となっております。政令市・中核市の運営費のうち、新制度において県負担に相当する費用は約5億円でございますので、合わせまして県費が約14億円必要となり、少なからず影響があるものと考えております。
 続いて、今後の取組についてお答えします。
 現在、実施主体であります市町村において、住民ニーズを反映した放課後児童クラブの需給計画を策定しているところでございます。県といたしましては、市町村計画が円滑に進められるよう、現在策定中の次期「あいち はぐみんプラン」に放課後児童クラブの設置促進を位置づけ、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 また、新制度では放課後児童クラブに、一定の資格を有し、都道府県知事が行う研修を修了したものを支援員として1名以上置くこととされましたので、必要となる支援員を養成するため、計画的に研修を実施してまいりたいと考えております。
 次に、財源における課題についてでございますが、大都市特例の廃止に伴う放課後児童クラブの県の費用負担の増加については、国の説明では、交付税措置により財政調整を行い、また、支援員の処遇改善や追加配置等、質の改善については、消費増税分を充てるとお聞きしております。いずれにいたしましても新制度の円滑な実施のためには、財源の確保が不可欠でございますので、国に対してしっかりと要請してまいりたいと考えております。

要望事項

 それぞれご答弁をいただき、ありがとうございました。数点、要望をさせていただきます。
 始めにAEDの教育について。冒頭にも触れたとおり、この10年でAEDの設置は進みました。今後は、県民ひとりひとりに「いざというときにAEDを使う勇気」をどのように身につけていただくかというステップに移らなければなりません。来年度から小学校高学年の教科書に記載される流れを見ても、小学校の学習指導要領に記載される日もそう遠くないと思います。小・中・高と継続的かつ実技もできるだけ含めた教育が展開できるよう、県教育委員会として積極的な働きかけをお願いします。
 また、学校以外にもぜひAED教育の充実を検討いただきたいところがあります。質問では触れませんでしたが、自動車免許の取得および更新時における教育です。愛知県では毎年約10万人の方が自動車免許証を新たに取得しております。
 教習所では 教本による講習が義務付けられておりますが、AED実習を行っているという事例は聞いたことがありません。また、年間約100万人の方が更新手続きを行っておりますので、更新時にAED実習を導入いただけると、少なくとも5年に一度確認することが可能です。警察本部として、こうした点も検討して頂きますようお願いします。
 さらに、使われてこそのAEDですので、実際の場面で「どうしてAEDを使用することができたのか、あるいはなぜ使うことができなかったのか」といった、より一歩進んだ検証も大切ではないでしょうか。今後の教育がより効果的に行えるよう、こうした検証を協議する場についてもぜひご検討願います。
 続いて、放課後教育についても要望します。
 今から2年前、何気なく本屋に立ち寄った際、「子どもたちの放課後を救え!」という一冊の本が目に留まりました。著者名をみてびっくり。「川上敬二郎」私の高校時代の友人です。本には「放課後改革」に立ち上がった一人の男、平岩国泰氏の奮闘が描かれておりました。この平岩氏も私の高校時代の友人。平岩氏は、自分の子どもに「人生を通じての贈り物がしたい」と考え、それが「安全で豊かな放課後環境」へとつながったのです。「いつか放課後に関する質問を取り上げたい」そんな気持ちを抱いていた私は、今般、国が「放課後子ども総合プラン」を公表したことを知り、質問に踏み切りました。
 今や「放課後NPOアフタースクール」代表理事として全国の公立、私立小学校における放課後プログラムの策定に携わり、メディアにも度々登場するようになった平岩氏は「私立は利用者負担で乗り切れるが、資金を集め、費用を抑えて運用できる公立の放課後モデルをつくらないと」と熱く語ります。モデルをつくるためには、「ヒト」「モノ」「カネ」の整理が必要です。
 まず、「ヒト」と「カネ」について。運営を行うためには、適切な雇用とお金が必要不可欠です。ここで学童保育の運営を例に挙げます。国は学童保育に対する支援として、開設日数250日、児童数36人~45人規模の運営費用を年間680万円程度と想定し、補助金単価を設定しています。しかし、こうした設定により、学童保育の指導員の多くが非正規雇用で、7割弱が年収150万円未満という結果がもたらされています。私は、学童保育という枠にとらわれず「理想の放課後」を実現する点からみて少なくともこの倍以上の金額が運営費として必要ではないかと感じます。今回紹介した江戸川区の「すくすくスクール」や先進事例として度々視察を受けると言われる名古屋市の「トワイライトルーム」でもそれなりの運営費が投じられています。子育て愛知を推進するためにも国への働きかけや県独自の支援をぜひ検討いただきたいと思います。
 そして「モノ」。学校施設のさらなる活用が必要不可欠です。各学校が抱える不安を解消し理解が進むよう、情報提供や課題のフォローアップなど、県教育委員会としての積極的な動きを要望します。
 最後にもう一度。子どもたちの放課後を真剣に考えるためには「教育」部署と「福祉」部署の連携が何よりも大切です。両部署の一層の連携をお願いして質問を閉じます。