令和2年 11月定例会(2020.12.2)

<一般質問>

 通告に従い順次質問します。
 1つ目の項目として、将来世代の利益を考える計画策定について、あいちビジョン2030および第5次愛知県環境基本計画をもとに伺います。私は4歳と1歳の子を持つ父親です。議場のみなさまにもかわいいお子様やお孫様に囲まれている方がたくさんいらっしゃいます。みなさんはそんなご家族の将来を考え、様々な支出を今からされていると思います。こうした気持ちが家庭にとどまらず、現在世代と将来世代との間にも成り立つことができないか。この点について少しみなさんと考えたいと思います。
 私たちが直面する政策課題は世代を超えた長期的な時間軸で考えるべき問題がたくさんあります。例えば地球温暖化や財政の持続性といったものや、橋や道路、上下水道の管理といったインフラ計画などがあり、時間軸が数十年~百年単位となる世代間問題とも言えます。
 世代間の問題というのは、私たちすなわち現在世代がコストを支払ったとき、現在世代がリターンを得るのではなく、数十年先または百年先の将来世代が大きなリターンを得るという構造になります。ここで問題となるのが、現在世代はこのコストが大きいことがわかると、将来世代のためにコストを引き受けようと思えなくなることです。さらに、意思決定をするのは私たち現在世代であって、将来世代は現在の意思決定に参加することができません。従って、将来世代の利益を適正に守ることは決して容易ではないのです。
 このジレンマを解決しようとするワークショップ技法がフューチャー・デザインです。将来世代の利益を守る人がいないのであれば、「なったつもり」の人間を作って代理をさせる。つまり将来世代のロール・プレイをすることで、思考経路や視点を変化させ、結果、本当に将来世代の利益のために考え、行動するようになる。これがフューチャー・デザインの手法です。
 望ましい将来像(=ビジョン)を描き、そのビジョンを達成するための道筋を逆算して現在世代の利害に合致させる技法、いわゆる「バックキャスティング」という言葉の方が行政や経営に携わる方にはなじみのある言葉かと思います。私はこの2つを基本的には同じ枠組みととらえていますが、フューチャー・デザインは、現在の状況にとらわれることなく、あるいは完全に切り離して将来を描くことから、より純粋に将来世代の利益を考えられるのではないかと思っています。
 2015年に行われた岩手県矢巾町での住民討議によって、フューチャー・デザインは注目を浴びるようになりました。ランダムに選ばれた矢巾町の住民が「現在世代グループ」と「将来世代グループ」に分かれ、町政の将来ビジョンを議論することとなり、将来世代グループは2060年に生活する住民になったつもりで町政を論じるなか、当時黒字だった上水道事業についての議論で事態は発生しました。現在世代グループは水道料金を値下げして黒字を住民に還元することを主張する一方、将来世代グループは上水道の設備更新の投資のために資金を蓄積する必要があることを重視し、水道料金の値上げを主張しました。矢巾町はこの討議ののち、現実に水道料金を値上げすることとなります。
 今、中央省庁、都道府県、市町村では同様の手法を用いて住民や職員の間での議論が実施され始めています。私も先日、京都府宇治市が主催したフューチャー・デザイン シンポジウム「宇治の今と未来を地域からつくる」にオンライン参加しました。当日はこの手法を提唱する高知工科大学の西條辰義教授、岩手県矢巾町職員、宇治市職員、市民団体フューチャー・デザイン宇治の方がそれぞれの取組を説明し、最後にパネルディスカッションが行われました。矢巾町では紹介した住民討議をさらに深化させ、町の総合計画策定にも住民によるフューチャー・デザインのワークショップを取り入れ、66件の提言中55件を計画に反映したそうです。また、宇治市でも今後策定する総合計画に住民の声を出来るだけ反映したいと考えているそうです。
 こうした取組はまだ一部の自治体で始まったばかりですが、各種計画を策定する上での重要な視点であり、大変興味深いものと考えます。
 本県では11月16日に、県の総合計画とも呼べる「あいちビジョン2030」を公表しました。この計画は2040年頃の社会経済を展望する形で作られています。 そこで、2040年頃の社会経済の展望はどのように行ったのか。また、将来世代の利益についてどのようにアプローチしていくのか伺います。
 次に現在策定をしている第5次愛知県環境基本計画について伺います。「世代間問題」でよく取り上げられるのが環境問題です。大阪府吹田市では本年2月に公表した吹田市第3次環境基本計画策定にあたり、昨年3~8月に計4回のフューチャー・デザインワークショップを行い、地域の声を反映しました。市の担当者は実施の効果として、「参加者が仮想将来人になりきったことで、将来を自分事として考え、現世代と将来世代の双方の利益について、俯瞰的な視点を持つことができるようになった。」とまとめています。環境問題は私たち一人一人が将来世代に向けて自分事として考えなければならない問題です。
 話は変わりますが、みなさんは「Z世代」という言葉をご存じでしょうか。アメリカで1960年代から1980年頃までに生まれた世代のことを「X世代」と名付けられたことに始まり、1980年~1990年代前半生まれが「Y世代」、1990年代後半から2000年代前半生まれが「Z世代」と呼ばれています。マーケティングにおいて、様々な消費傾向を捉えるために用いられる消費者群で、世界では最も影響力の大きい購買層として注目を集めています。
 20年以上にわたりトレンドや消費者動向などの調査を手掛け、大手企業の商品戦略などに活用されている、米国のコーン・コミュニケーションズ社が行ったCSRに関する動向調査(Z世代の男女1000人対象)によると、Z世代の約94%が「企業は社会的・環境的課題に取り組むべき」と考え、さらに、98%は地球環境の保護に関心を持つということがわかりました。早い段階から「リサイクル」や「ダイバーシティ」といった教育を受けて育っているため社会的な関心が非常に強い、これがZ世代の特徴のひとつと言われています。
 日米のZ世代が“必ずしも同じ傾向”とまで言えないと思いますが、いずれにせよ、経済・社会活動も含め、環境への取組が私たちの生活の中心として捉えられる時代に変化していくわけで、この時期にあいちビジョン2030に沿った環境分野における長期的な目標及び施策の方向を示す第5次愛知県環境基本計画を策定することは大変意義深いものと考えます。
 そこで、現在策定している本計画について3点伺います。
 始めに、計画策定において現状をどのように捉え、また新たな課題をどのように考えたのか伺います。
 次に策定の過程において、県民の声をどのように織り込むとともに、県民に環境問題を自分事として考えてもらうようどのような取組を計画に盛り込んでいるのか伺います。
 最後に、企業との連携について伺います。従来の環境行政は規制が中心でありましたが、今後は企業との連携がより重要になると思います。県の考えを伺います。

 2つ目の項目として、自殺対策および情報モラル、安全なSNS利用について伺います。
 本年9月14日、自殺者の増加にかかる緊急メッセージが大村知事から発表されました。自殺者数は全国で3万人を下回った平成23年以降、右肩下がりで減少していたことから、8月速報値の本県119人、前年同月比46人、63.0%増という内容には大きな衝撃を受けました。これが突発的な事象であればと願い、その後の推移を見守っていましたが、9月は対前年38人増の111人、10月も対前年43人増の127人とその傾向は変わっていません。全国の数字で見ても、本年は1月~6月まで対前年マイナスで推移していましたが、7月に増加に転じてから8、9、10月と同様の結果となっており、特に10月の自殺者数2158人は2018年3月以来の1カ月の死者数が2000人超えとなってしまいました。
 10月21日、厚生労働大臣指定法人いのち支える自殺対策推進センターが「コロナ禍における自殺の動向に関する分析(緊急レポート)」を公表しました。報告書には現時点の分析は不十分のものとならざるを得ないが、現時点で分かったことだけでも早めに公表すべきと判断して中間報告を行うことにしたと記載されています。それほど、ここ数か月の状況を危惧しているといえると思います。
 そこで、まず自殺の現在の状況について、県としてどのような認識でいるのか伺います。
 次に、緊急レポートでは政府の各種支援策が自殺の増加を抑制している可能性があることについて触れられており、なかでも緊急小口資金と総合支援資金をパッケージと捉え、政策の有効性が示唆されたと記載しています。そこで、これらの申請件数はどのように推移しているのか、また県として周知がいきわたるようにどのように取り組んでいるのか伺います。
 次に、相談窓口の対応状況及び周知について伺います。最近、著名人の自殺に関する報道の際、支援先の情報が表示される事例を目にします。これはWHO(世界保健機関)による『自殺報道ガイドライン』に則り行っているもので、センセーショナルな自殺報道により自殺が増える現象「ウェルテル効果」を懸念して行われているものです。
 一方、SNSが普及した現在では、みんなが同じ情報を同じように取り入れる「マスメディア」から、自分の興味がある情報が自動的に届く「パーソナライズ」世界に変わりつつあります。そして、SNSで見たい情報だけを見る「フィルターバブル」が繰り返されることで起きる思想の偏り「エコーチェンバー現象」が問題になっています。もし、自殺についての情報を取り入れるうちに、より踏み込んだ情報ばかりが目に触れるようになるとしたら…デジタル時代のウェルテル効果はより深刻だと思われます。
 だからこそ、時代に即した県の新たな試みとしてSNS相談事業に取り組んだことは大いに意義があり、私もFaceBook、Twitter、ブログに掲載し、周知させて頂きました。
 ただ、欲を言えばこの事業がSNS時代に対応した周知、例えば一部自治体で実施している「自殺」「死にたい」などの検索結果に呼応して相談窓口の情報を表示するような形で真に必要な人に伝わることを願ってやみません。また、11月23日の朝日新聞によると、国では2018年にSNSを使った自殺防止の相談事業を始め、初年度の相談延べ件数約2万3千件が19年度には約4万5千件に倍増し、実施主体の一つであるNPO法人「東京メンタルヘルス・スクエア」では、「相談員を増やしても対応が追い付かない状況」と国へのさらなる支援を訴えているそうです。本県においても本事業の状況をしっかり分析し、必要とあらばさらなる対応も望まれます。
 そこで新たに開始した「SNSによる相談事業」はどのような状況か、また、こうした相談窓口をどのように周知していくのか、県の考えを伺います。
 ここからは、情報モラル、情報リテラシーおよびSNS利用に際しトラブルに巻き込まれないための取組について伺います。
 先ほど触れた「フィルターバブル」、「エコーチェンバー現象」も含め、インターネットを利用する際の「光」と「影」、ルールやマナーを守ることの意味等を考える情報モラル、情報リテラシーが大変重要です。また、ここまで取り上げてきた自殺の問題において、本年5月、SNS上の誹謗中傷が原因と思われる大きな事件も発生しました。
 総務省は本年8月、「インターネット上の誹謗中傷への対応の在り方に関する緊急提言」を発表し、9月には「インターネット上の誹謗中傷への対応に関する政策パッケージ」をとりまとめ、総合的な対策として4点、
1 ユーザーに対する情報モラル及びICTリテラシーの向上のための啓発活動
2 プラットフォーム事業者の自主的取組の支援と透明性・アカウンタビリティの向上
3 発信者情報開示に関する取組
4 相談対応の充実に向けた連携と体制整備
を推進することとしています。
 このうち3「発信者情報開示に関する取組」に関しては、被害者救済と表現の自由への配慮というバランスを考慮しながら、電話番号を開示対象に追加する省令改正の実施を8月に行い、11月13日には煩雑で負担が大きい開示手続きを軽減するため、新たな裁判手続きの創設を柱とする最終とりまとめ(案)を公表しました。
 また、2「プラットフォーム事業者に対する働きかけ」として、誹謗中傷対策の実施や有効性の検討を促すとともに、事業者からの報告等による各社の状況把握や評価方法についての検討が行われています。例えば、YAHOO等が会員となる一般社団法人セーファーインターネット協会では、個人の被害者から誹謗中傷情報が掲載されたサイト情報等の相談を受け付け、内容確認の後、コンテンツ提供事業者やプロバイダ等に削除等の措置を依頼する「誹謗中傷ホットライン」を本年6月に創設しました。
 また、TwitterJapan等が会員である一般社団法人ソーシャルメディア利用環境整備機構が本年4月に設立され、先日、SNSの誹謗中傷に関する動画#NoHeart NoSNS(ハートがなけりゃSNSじゃない)が政府広報にて配信されました。
 広報や啓発という観点では、1「情報モラル及びICTリテラシーの向上のための啓発活動」のなかで、「インターネットトラブル事例集」の作成や「e-ネットキャラバン」の講座を通じてインターネット上の誹謗中傷について教育現場への周知に取り組んでいます。
 そこで、学校現場では情報モラルやICTリテラシーについて具体的にどのような教育が行われているのか伺います。
 次に家庭におけるSNSの取扱いに関する取組について伺います。内閣府の調査によると、2019年度のスマホ利用率は小学生37.6%、中学生65.6%、高校生91.9%となっています。
先ほど学校現場での取組について伺いましたが、言うまでもなく子ども達がスマホを最初に手にするきっかけは家庭であり、早い段階から安全な使い方、正しい利用法等を保護者が伝えるとともに日進月歩するSNSについて保護者の知識もアップデートする必要があります。
 そこで、SNS利用の際起こりやすいトラブルに青少年が巻き込まれないため、県としてどのような啓発活動を行っていくのか伺います。
 3つ目の項目として、オオキンケイギクの駆除について伺います。ご存じの方も多くお見えの事と思いますが、議長のお許しを得ましたので、始めにオオキンケイギクの花をご覧いただきたいと思います。
 オオキンケイギクは北米原産の多年草で、高さは30cm~70cm、5~7月にかけて黄色のコスモスに似た花を咲かせます。名前の由来は花の色を金鶏(黄色の鳥)に見立てて名付けられたと言う説と、金色に輝き、花の形が鶏の鶏冠(とさか)に似ているからと言う説の2つがあるようです。また、花言葉は「いつも明るく」「きらびやか」。本当にきれいな花です。
 明治時代中頃から観賞用に輸入されるようになり、価格も安く、荒れ地でも強く繁殖できるために戦後には道路や堤防などの法面緑化に積極的に使用されたり、苗が販売されたりしていました。しかし、あまりに強く、いったん定着してしまうと在来の野草の生育場所を奪い、周囲の環境を一変させてしまうため、平成18年に外来生物法に基づく特定外来生物に指定され、生きたままの運搬や栽培、譲渡などが原則として禁止されました。
 さて、今回この話を取り上げたきっかけは、本年5月、地域の方からいただいた「春日井市内の河川にオオキンケイギクが咲いており駆除してほしい。ここ数年、生育範囲が拡大しているように感じる。放っておいたら大変なことになる。」このような声でした。
 早速、河川を管理している尾張建設事務所に問い合わせをしたところ、「オオキンケイギクの生育について把握はしている。しかし業者への発注にも限りがあるため、まずは今、マーキングしている部分についてしっかり対応したい」といった趣旨の回答でした。
 そこで、始めに河川におけるオオキンケイギクの生育状況について、河川管理者としてどの様に把握し、また生育が把握された場合の駆除等の対応状況について伺います。
 次に、この問題について環境局に問合わせたところ特定外来種の広報啓発は行えるものの、駆除については土地の管理者の責任において駆除をお願いしているとのことで、こちらも対応が困難なことが判明しました。
 なんとか駆除はできないかと困っていたところに、数日後「春日井市の建設部・環境部と県の建設局・環境局の職員、またコロナ禍で大人数は難しいものの地域住民も加わって八田川の駆除作業を行う」との連絡が入りました。そして6月18日、県職員10名、市職員13名、地域住民11名プラス私の計35名で作業を行いました。
 当日はあいにくの天気となり、雨で途中切り上げる形となったものの、1時間で90ℓゴミ袋が140袋、計940kgの刈り取りが行えました。ただ、予定区域の駆除が出来なかったことから、翌週、県、市の職員総勢37名でさらに1,450kgの駆除を頂きました。ここで、駆除前の河川の様子と駆除後の様子をご覧いただきたいと思います。
 ただ、実際には花がついているものは駆除できたものの、小さな葉の状態のものまで駆除しきれませんでした。そこで11月8日、かすがいクリーン大作戦に合わせて3回目の駆除活動が行われました。当日は県職員5名、市職員12名、地域住民40名と私の58名で小さな葉の駆除を行いました。この日の収量は360kg。前2回と比べ重量は少ないものの、花が咲いて大きく成長したものと小さな葉ではひとつあたりの重量が全く異なり、駆除した数は相当な数であったと思います。ただ、この時もすべて駆除できたわけではなかったことから、後日、建設局の職員の方がさらに作業頂いたと伺いました。みなさまにはこの場を借りてお礼申し上げます。本当にありがとうございます。
 かすがいクリーン大作戦は、自分の地域は自分できれいにするという考えのもと、多くの市民の方々と協働で快適な住みよい生活環境を実現することを目的としており、例年春と秋に行われる市民に定着している清掃活動です。このタイミングに行うことで駆除活動の継続が期待されます。というのも調べると駆除には数年必要と言われており、実際の作業を通じて、改めてそのことがわかったからです。市では来年度も春と秋のかすがいクリーン大作戦に合わせて、地元住民を中心とした取組として継続したいと考えています。
 そこで伺います。オオキンケイギクのような特定外来生物の対策については、まず、県民の特定外来生物についての正しい理解の普及のほか、地域との協働も重要と考えます。県の特定外来生物への対応状況及び考えについて伺います。

《答弁要旨》

1 将来世代の利益を考える計画策定

(1)「あいちビジョン2030」における2040年頃の社会経済の展望の検討方法及び将来世代の利益におけるアプローチについて

(政策企画局長)


 「あいちビジョン2030」における、2040年頃の社会経済の展望の検討方法等について、お答えします。
 「あいちビジョン2030」では、2040年頃の社会経済を展望してめざすべき愛知の姿を描き、その実現に向けて2030年までに取り組むべき政策の方向性を示すといった、バックキャスティングの方法を採用しており、フューチャー・デザインの考え方と相通ずるものと考えております。
 ビジョンの策定にあたっては、人口の将来推計やグローバル経済の将来動向などの基礎資料を収集するとともに、23名の幅広い世代の研究者、実務家に参加いただいた懇談会・分科会の開催や、企業経営者、NPO関係者など15名の多彩な有識者のヒアリングを重ね、2040年頃の社会経済を展望する作業を行いました。
 こうした展望を踏まえて設定した、「危機に強い愛知」や「イノベーションを創出する愛知」など4つのめざすべき愛知の姿の実現に向けて政策を進めることによって、20年後の、将来世代が中心となる時代において、活力ある愛知が実現するよう、しっかりと取り組んでまいります。

(2)第5次愛知県環境基本計画策定における現状と課題について

(環境局長)

 第5次愛知県環境基本計画に関するご質問のうち、まず、計画策定における現状と課題についてお答えします。
 国内では、本格的な少子高齢化・人口減少社会等により、農林業の担い手が減少し、耕作放棄地や森林荒廃の増加につながり、生態系サービスの劣化を招くなど、社会経済情勢の変化が環境にも深刻な影響をもたらしております。
 一方、国際社会では、地球温暖化の進行及びその影響と言われている極端な気候変動、生物多様性の損失や海洋プラスチックごみなど新たな問題が顕在化しています。
 こうした地球環境の危機に際して、2015年の国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」では、環境・経済・社会の課題を統合的に解決することの重要性が示されています。
 これらの現状から、SDGsの達成に向けて、環境を原動力に経済・社会の統合的向上を図り、持続可能な社会を構築していくことが、今後取り組むべき最重要課題であると考えております。

(3)計画策定における県民の声の反映と環境問題を「自分事」として考えてもらうための取組について

(環境局長)

 県民の皆様の声をどのように計画に盛り込んでいくのか、についてでありますが、今回の第5次計画では、環境学習や環境イベント実施時のアンケート調査や県政世論調査等により把握し、盛り込むこととしております。県政世論調査では、廃棄物問題や地球温暖化に関心がある方や、ごみの分別や買い物袋の持参といった日常生活での環境配慮行動を行っている方が約7割いることが確認できました。 生活の様々な場面で、こうした行動をさらに広げるためには、将来世代を見据え環境問題を自分事として捉えることが重要です。
 例えば、家庭で節電に気を付けることでCO2の発生量を減らすことができます。また、川や池に外来種を放つことは生物多様性に悪影響となる恐れがあります。
 県民の皆様にこうした意識を高めていただくため、今回の第5次計画では、CO2削減効果の見える化や日常生活の中に生物多様性の保全の考えが組み込まれる「生物多様性の主流化」を進めるなど、環境問題を自分事として捉え、実施できる「行動する人づくり」を推進してまいります。
 なお、現在、県民の皆様から様々なご意見をいただくため、パブリック・コメントを募集しておりますので、いただいた意見も参考にして、今後の計画策定にしっかり生かしてまいります。

(4)今後の環境行政における企業との連携について

(環境局長)

 企業との連携でございますが、現在の地球環境の危機的状況に対応していくためには、行政だけでなく、県民の皆様やNPO、企業との連携が非常に重要になります。
 特に企業にはSDGsを意識した様々な活動が期待されるとともに、環境(Environment)・社会(Society)・企業統治(Governance)、いわゆる「ESG」に積極的に取り組むことで投資が集まり、長期的な成長へとつながります。
 このため、今回の第5次計画では、ESG投資の拡大につながるよう情報提供や意見交換を行っていくこととしております。併せて、地球温暖化対策、資源循環などに資するビジネスを支援していくとともに、本計画の推進に向けて、様々な場を通じて企業との連携を図ってまいります。

(知事)

 私からも、第5次愛知県環境基本計画についてお答えします。
 常日頃から、「日本一のモノづくり県であるからこそ、環境分野でもトップランナーであるべき」ということを申し上げてきましたが、この考え方を第5次計画にも引き継いでまいります。
 もはや環境問題は、地球温暖化対策を始めとして国際社会全体で解決していかなければならない喫緊の課題であり、国においても「2050年カーボンニュートラル」の目標達成に向けて経済と環境が好循環する気候変動対策に取り組むこととしております。
 また、本県は「SDGs未来都市」として2030年目標であるSDGsの達成に向けた取組を積極的に進めているところでもあります。
 さらに、新型コロナウイルス感染症対策として、環境にやさしい新たなライフスタイルへの転換や経済復興を環境対策で進めるグリーンリカバリーの取組を進めていくことが重要であります。
 こうしたことから第5次環境基本計画には、「SDGs達成に向け、環境を原動力に経済・社会が統合的に向上する環境首都あいち」を目標に掲げ、「安全・安心の確保」、「地球温暖化対策」、「自然との共生」、「資源循環」、「行動する人づくり」の取組を県民の皆様を始め、事業者、NPO、行政など様々な主体が一体となって進めてまいりたいと考えております。今回の第5次環境基本計画により、持続可能な社会を構築するリーディングモデルを、ここ愛知から牽引してまいります。

2 自殺対策および情報モラル、安全なSNS利用について

(1)自殺の現状についての県の認識

(保健医療局長)

 現在の自殺の状況についてでございます。
 本県の今年の自殺者数は、7月までは前年を下回る傾向にありましたが、8月に急増して以降、前年に比べ大幅に増加しております。とりわけ、女性の自殺者は、8月から10月の3か月間で131人、前年比約1.9倍と極めて深刻な状況にあります。
 自殺の背景には、健康問題、経済問題、対人関係など様々な要因が複雑に絡み合っているといわれています。今般の新型コロナウイルス感染症による社会情勢の変化が、こうした自殺の要因になり得る問題を更に深刻化させ、自殺者の増加に影響を与えている可能性が十分あると考えております。

(2)緊急小口資金と総合支援資金における申請件数の推移および周知について

(福祉局長)

 緊急小口資金と総合支援資金の申請件数の推移についてお答えいたします。
 これらの資金につきましては、特例措置により、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、収入が減少した世帯も新たに対象に加えられ、本年3月25日より申請の受付を行っております。
 まず、緊急的に最大20万円までを貸付ける緊急小口資金は、3月は805件、4月は6,588件、以後増加を続け、6月には13,120件となりましたが、7月以降は減少に転じ、10月は3,067件で、10月までの累計は53,866件となっております。
 また、生活再建に向けて、1か月最大20万円を3か月間貸付ける総合支援資金は、3月は0件、4月は3件、5月は273件、9月には2,686件まで増加いたしましたが、10月は2,013件に減少し、10月までの累計は11,815件であります。
 なお、昨年度の特例措置を除く申請件数は106件でありましたので、今回の特例措置による貸付の10月までの申請件数の合計65,681件と比較しますと、約620倍となっております。
 次に、これらの資金の周知についてお答えいたします。
 新型コロナウイルス感染症の影響により、生活にお困りの方々に、制度の概要や申請窓口などの情報を知っていただくため、県のホームページで周知を行うとともに、市町村等には、国が作成したリーフレットを活用した周知をお願いしております。
 また、生活困窮に関する様々な相談に対応するため、市及び県福祉相談センターに設置されている自立相談支援機関では、相談支援員が相談に訪れた方に特例貸付を御案内しているところであります。
 こうした取組により、10月までの申請件数が6万件を超える状況にあり、多くの方々に、御活用いただいております。
 今後はさらに、県精神保健福祉センターなどの悩みごとの相談窓口とも連携を図り、資金の貸付を必要とされる方に御活用いただけるよう、しっかりと周知を図ってまいります。

(3)新たに開始した「SNSによる相談事業」の状況および周知について

(保健医療局長)

 「SNS相談事業」の状況と周知についてでございます。
 本県では、こころの相談窓口を強化するため、11月5日から新たに、夜間、深夜帯に、ラインによる相談を開始いたしました。
 11月5日の開設以降、26日までに268件の相談があり、県民の関心の高さと需要の大きさを改めて認識しているところでございます。また、相談者の属性としては、30歳代、40歳代が多く、女性が約7割を占めております。
 相談では、コロナへの恐怖心や不安から、気持ちが不安定になっている方が多く、中には、「死にたい気持ちがとれない。」といった内容もあり、相談員は相談者のつらい気持ちを受け止め、共感し、必要に応じて解決に向けた情報提供をするなど、相談者に寄り添った対応をしております。
 本県では、こうした相談窓口を多くの方に知っていただくため、これまでも、県のウェブページや、ラインの愛知県新型コロナ対策パーソナルサポート等を活用し、相談窓口の周知を図ってまいりました。今後は、従来の広報に加え、インターネット広告など、より積極的にアプローチする方法も活用してまいりたいと考えております。
 こうした取組を進めることにより、県民お一人お一人のこころの相談に丁寧に対応してまいります。

(4)学校現場における情報モラルやICTリテラシー教育について

(教育長)

 学校における情報モラルやICTリテラシーの教育についてお答えします。
 情報化が急速に進み、SNSが身近なコミュニケーション手段となっている現在、児童生徒がSNS上の誹謗中傷の加害者にも被害者にもならないために、情報モラルやICTリテラシーを高めることは、大変重要です。
 このため、県教育委員会では、義務教育課のホームページ上の「愛知県道徳教育総合推進サイト」に、「SNSのトラブル防止」など、約350の指導実践例を紹介し、小中学校における具体的な取組を促しております。
 高等学校においては、情報科の授業の中で「法規や制度及びマナーの意義に基づく正しい対応」やICTリテラシーについて学ぶとともに、外部講師を招いた情報モラル向上のための講座を開くなどの実践的な取組を行っております。また今年度、様々な不安やストレスを抱える高校生が利用できる、SNSによる相談事業を立ち上げ、ネット上でのトラブル等にも対応ができるようにしております。
 引き続き、家庭や関係機関との連携を図りながら、情報モラルやICTリテラシーの向上を図る指導に努めてまいります。  

(5)SNS利用の際起こりやすいトラブルに青少年が巻き込まれないための啓発活動について

(県民文化局長)

 SNS利用の際起こりやすいトラブルに、青少年が巻き込まれないための啓発活動について、お答えいたします。
 情報化が進む中、青少年が安心してSNSを利用できる環境づくりのため、本県では、国に先立って、青少年保護育成条例に基づき、スマートフォンの販売店に対して、年齢確認やフィルタリング措置の説明を、義務付けてきたところであります。
 また、保護者や教職員、児童・生徒を対象に、出張講座を開催し、SNSに関するトラブルを回避するためのノウハウや、家庭におけるルールづくりの大切さについて、啓発してまいりました。
 さらに、今年度は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、新たに、オンラインによる講座も開催し、多くの方々に御利用いただいております。
 県といたしましては、青少年が、SNS利用の際、トラブルに巻き込まれないよう、教育委員会や市町村等の関係機関と一層の連携を図りながら、啓発活動にしっかりと取り組んでまいります。

3 オオキンケイギクの駆除について

(1)河川におけるオオキンケイギク生育への対応

(建設局長)

 河川におけるオオキンケイギクの生育状況の把握と対応についてであります。
 河川におきましては、地域からの情報提供の他、毎月行っている河川巡視や、河川堤防などの草刈り工事における業者からの報告などにより、春日井市内の八田川や新繁田川、瀬戸市内の瀬戸川など14河川で、オオキンケイギクの生育を把握しております。
 生育が把握された場合の駆除などの対応につきましては、堤防などの維持管理を主目的とした草刈り工事においては対応に限界がある中で、一部河川では根ごと引き抜きを行ったのち、袋詰めを行い処分しております。また、オオキンケイギクが群生し、引き抜きでの対応が困難な箇所については、種子などが他の雑草に混ざり拡散しないよう、あらかじめ群生している箇所をロープなどで囲い、夏に実施する草刈り工事の範囲から外し、秋以降に群生している箇所のみの刈り取りを行うなど、生育範囲が拡大しないようできるかぎりの対策を行っているところであります。

(2)県の特定外来生物への対応及び考えについて

(環境局長)

 特定外来生物への対応について、お答えいたします。
 特定外来生物の対策を効果的に進めるためには、県民の皆様の正しい理解が必要であり、また、オオキンケイギクのように、すでに定着しているものについては、土地の管理者だけでなく、地域の住民、NPO、企業等の協働による防除の取組が重要であります。
 そのため県では、Webページ「STOP!あいちの外来種」において、特定外来生物の見分け方や生態系への影響、効果的な防除方法等を紹介しております。また、市町村職員やNPO等を対象とした研修会や、防除現場への専門家派遣による技術的支援を行っております。
 さらに、オオキンケイギクについては、毎年春に、その駆除に関するアンケートを市町村に行うとともに、様々な啓発活動や環境学習の機会を通じて、県民の皆様やNPO、企業等にも広く呼び掛けた結果、昨年度は19市町村で29の駆除活動の事例が報告されております。
 今後とも、正しい理解の普及と地域との協働による取組の促進により、特定外来生物の対策にしっかりと取り組んでまいります。

<要望事項>

 それぞれ、答弁を頂きありがとうございました。3点要望いたします。
 始めに、フューチャー・デザインについて、今回はあいちビジョン2030および第5次愛知県環境基本計画についてお尋ねしましたが、この手法は様々な計画策定に用いることが可能です。例えば京都府では上水道、下水道事業それぞれにおいて府と市町が集まってフューチャー・デザインを用いたディスカッションを行い、広域化・共同化の推進や自治体間連携の強化、また技術開発への予算割当などについて意識の共有ができたようです。ぜひ県の各部署において、時には視点を変えた手法も織り交ぜながら世代間問題について積極的な議論を展開頂きたいと思います。
 次に、インターネット上の誹謗中傷についてはさらなる対策が望まれます。先ほど紹介した総務省の政策パッケージの柱の一つ、4「相談対応の充実に向けた連携と体制整備」では総務省の支援事業である「違法・有害情報相談センター」の体制強化に加え、法務省「インターネット人権相談窓口」、厚生労働省「まもろうよ こころ」といった公的機関と事業者相談窓口機関との連携の強化を目指しています。
 このようななか、群馬県では「群馬県インターネット上の誹謗中傷等の被害者支援等に関する条例(仮称)」が、今月中の公布を目指し議会で審議されており、条例案には県の責務として独自の相談体制の整備やネットリテラシー教育などが明記される予定で、総務省への問合せも行っているそうです。本県においてもこうした対策は急務と考えますので、ぜひ検討をお願いします。
 最後に、オオキンケイギクの生育状況は、県だけで駆除を行える段階を超えてしまっていると思います。今回は住民のみなさまの「自分たちの地域は自分たちで守ろう」という、前向きなご理解があって実現しました。丁寧な広報、啓発を行うことで、地域との協働はさらに広がると思います。ぜひ、県と各市町村が連携した取組を展開いただくようお願いして質問を閉じます。