経済労働委員会(2020.12.7)

【日比たけまさ委員】

 ステーションAiの入札公告に関して、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、どのような見直しを行い、どのような施設を目指すことにしたのか。 

【スタートアップ推進課長】
 そもそもの施設のコンセプトは、新たな付加価値が次々と創出される総合的な支援拠点として、この地域の優秀なスタートアップを創出育成し、海外展開を促すとともに、世界から有力なスタートアップを呼び込み、スタートアップの集積と地域のモノづくり企業とのオープンイノベーションの促進を目指すというものであり、先月の入札公告では、これまでのコンセプトは維持しつつ、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を踏まえ、新たな要素を追加した。
 新型コロナウイルス感染症の拡大により、多くの人がテレワークやリモート会議等を経験したことで、その有用性を認識した。これにより、これまでの働き方の中で対面を基本としていた局面においても、リモートでの代替が定着することが想定される。
 そこで、見直し後のステーションAiでは、ウイルス感染防止に配慮した施設のゾーニング、レイアウト、オフィスデザインを実現することに加え、最先端の高度通信、リモート、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進環境を整備し、デジタル技術を活用した国内外のスタートアップとのネットワークの形成や支援プログラムの提供等を可能とすることで、オフラインとオンラインを最適に融合した新たなコミュニティー形成を実現するニューリアリティ対応型施設を目指すこととした。
 具体的には、当施設の支援対象を、ステーションAiに入居するスタートアップに限定するのではなく、リモート環境を活用するスタートアップまで含め、グローバルなスタートアップ・コミュニティーを形成していきたい。

【日比たけまさ委員】

 施設規模、延床面積の下限が2万8,000平方メートルから2万2,000平方メートルまで引き下げられた考え方と理由を伺う。 

【スタートアップ推進課長】
 新型コロナウイルス感染症により、テレワークや在宅勤務の推進をはじめとして、オフィス環境が変化しており、仮にウイルスが収まった後でも一定程度は元には戻らないと言われているが、新型コロナウイルス感染症をきっかけに、リモートでも対応が可能なものがあることが分かった一方で、対面しなければ対応できないことがあることも判明した。
 スタートアップは短期間で新しい市場を創り出しながら急成長を目指すものであることから、新しいアイデアの創出と事業化に向けたスピードが何よりも重要である。
 シリコンバレーをはじめとするスタートアップ・エコシステムの先進地域の例を見ると、スピーディにイノベーションを創出するためには、様々なプレイヤーが対面で、熱い思いをぶつけ合いながら、多様な交流ができる環境が不可欠であり、そのような場としてのステーションAiの必要性には変わりがない。
 先月の入札公告では、リモートへのシフトの流れを踏まえ、ステーションAiの施設規模を見直すこととし、最低面積を2万8,000平方メートルから2万2,000平方メートルに引き下げたが、この2万2,000平方メートルを算出するに当たっては、ステーションAiのモデルとしているフランスのステーションFの入居者に対するアンケートなどを参考に、コロナ収束後でもオフィスを縮小したまま元には戻さないと回答したスタートアップの割合や、人と人との距離を確保するための1人当たりのワークスペースの拡大などを踏まえて算出した。
 なお、事業計画の見直しについて、事業者から意見聴取する中で、今後のオフィスの在り方には様々な考え方があったことから、最低面積の2万2,000平方メートルから最大の容積率を適用した約3万800平方メートルの間で、各事業者の知見やノウハウを踏まえて、できるだけ自由に提案してもらう。

【日比たけまさ委員】

 施設整備費が約149億円から約144億円となり、5億円程度の減額になる一方で、運営権対価は約50億円から2億5,500万円と大幅な減額になっている理由は何か。 

【スタートアップ推進課長】
 施設整備費については、施設規模の見直しとして床面積の下限を2万2,000平方メートルとしたことにより、規模の縮小に伴う減額が見込まれる一方、DX推進環境等を整備することによる増額があり、差引きで約149億円から約144億円へと、約5億円の減額となった。
 運営権対価については、運営期間全体の収入と支出の見込みから算出するものであり、約50億円から2億5,500万円に変更した主な要素としては四つある。
 一つ目は、運営期間を約20年から10年に短縮したことから対価が半減したこと。二つ目は、オフラインとオンラインを融合した新たなコミュニティー形成を実現する、ニューリアリティ対応型支援拠点とするために必要となる、高度通信、リモート及びDX推進環境の整備による管理費、ランニングコストが増加したこと。三つ目は、ウィズコロナ、アフターコロナに対応するゾーニング、レイアウト及びオフィスデザインでソーシャルディスタンスを確保すること。また、入居者からリモートメンバーへと一部シフトすることにより、オフィスの賃借料収入が減少すること。四つ目は、スタートアップ支援プログラム提供業務における収入が減少したことで、このスタートアップ支援プログラムの受講料については、財務基盤が脆弱なスタートアップから徴収することは困難であるため、スタートアップと協業を希望する既存企業から徴収することを想定しているが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、既存企業、特に速やかなDX導入が必要な中小企業などが相当の経済的ダメージを受けており、事業者ヒアリングにおいても、当分の間は、既存企業からの多額の収入は期待できないとの意見があったことを踏まえ、収入が減少するものと見込んだ。

【日比たけまさ委員】

 運営権対価をここまで減額せざるを得ない状況ならば、無理に入札公告せず、もう少し時期を遅らせることも考えるべきではないか。

【スタートアップ推進課長】
 運営権対価を減少させた四つの要因のうち、一つ目の運営期間の短縮による減額は、単純に期間が半分になっただけであり、入札公告を遅らせても影響ない。二つ目の高度通信、リモート及びDX推進環境の整備による管理費の増加と、三つ目の入居者からリモートメンバーへの一部シフト等を踏まえた収入の減少は、新型コロナウイルス感染症の収束後も、リモートでの働き方は一定程度定着することが見込まれることから、これも入札公告を遅らせても依然として必要な見直しであり、状況は変わらない。四つ目のスタートアップ支援プログラム提供業務に係る収入の減少については、既存企業の経済的ダメージが回復すれば、一定の収入増は期待できるが、バブル崩壊やリーマンショックなど、過去の日本経済へのダメージに対する回復状況を見ても、深いダメージを受けた経済の回復には多くの年数を要する可能性があり、当分の間は、中小企業を中心に厳しい状況が続くことも想定され、事業者ヒアリングでも、新型コロナウイルス感染症が仮に収まったとしても、当分の間は、既存企業からの多額の収入確保は困難との意見が多数であった。
 今回の見直しで、ステーションAiの運営期間を20年から10年に短縮したのは、先行きが不透明な状態が当分の間続くことを踏まえ、まずは10年間実施してみて、10年後の社会、経済情勢を踏まえて抜本的に事業スキームを見直すことができるようにしたものである。
 ステーションAiは、この施設で大きな利益を出すことを目指す施設ではなく、スタートアップや中小企業などの既存企業がイノベーションを創出し、地域経済をさらに発展させることを目指すものである。
 未来に向けた種をまかなければ、新しい花が開くことがないことから、できる限り速やかに、スタートアップや既存企業が活動できる場づくりを進めたい。

【日比たけまさ委員】

 今回の入札公告には、前回設定されていなかった約40億円の債務負担行為が新たに設定されたが、なぜ今回になって設定したのか。

【スタートアップ推進課長】
 これほど大規模なスタートアップ支援施設をコンセッション方式で運営する計画は、日本初であり、他地域での実績がないことから、運営事業者にとっては大きなリスクを抱えることとなる。
 そこで、そのリスクを緩和するため、運営事業者の収入の核となるスタートアップ及びパートナー企業等オフィス運営業務において、プロフィット/ロスシェア方式を採用することとした。
 これは、本県と事業者が協議して各年度のオフィス賃料の計画収入額を設定し、実績が計画額を下回った場合には、差額分を本県がロスシェアとして負担し、上回った場合については、その差額分の50パーセントをプロフィットシェアとして県に還元してもらう仕組みである。
 これにより、事業者のリスクの緩和を図りつつ、オフィス入居者の積極的な募集を行ってもらうことを期待するものであり、同様にコンセッションで運営を行っている本県の先行事例においても導入されている仕組みである。
 また、財務基盤が脆弱なスタートアップへの支援策として、運営事業者がスタートアップの賃料を軽減した場合の収入差額を、本県が負担する仕組みも導入する。
 これらの支援策の財源は、本年2月の入札公告時は、運営権対価の約50億円を財源に基金を造成し、その取崩しにより本制度の実施が可能であると判断し、債務負担行為の設定を行わなかったものであるが、今回は対価が2億5,500万円となり、本制度を実施するための十分な金額が確保できないことから、新たに債務負担行為を設定するものである。
 なお、この約40億円は、スタートアップやパートナー企業等の入居がなかった場合の最大の負担額を計上しておくものであり、入居率が上がれば、実際の支出額は減少することになることから、運営事業者とともに入居率が向上するような取組を積極的に推進したい。