経済労働委員会(2020.12.8)

【日比たけまさ委員】

 コロナ禍において、県内では地域経済や家計への影響を考慮し、水道料金の減免等の措置を取る市町村が多数見られた。また、兵庫県では、市町が水道料金の減免を行う場合、市町に水道用水の原水を供給している県営水道の3か月間の料金を上限として免除し、神奈川県では、県営水道が給水する使用者を対象に、水道料金を4か月間、10パーセント減額していた。
 県営水道料金の減免についての県の考え方、また、市町村水道からの意見を伺う。

【水道事業課長】
 県営水道事業は、独立採算制の公営企業として、事業の維持、運営に必要な費用を水道料金で賄っている。水道料金を減免することは、施設の維持、修繕、老朽化更新、耐震補強など必要な投資を適切に行うことができなくなり、将来にわたって安定的に水道用水を供給することに支障を来すおそれがある。こうしたことから、県営水道料金の減免を行うことは難しい。
 次に、企業庁では、市町村水道における水道料金減免の実施状況や県営水道料金の減免への意見を把握するため、本年6月に県営水道から受水している42の全ての市町村水道にアンケートを行った。
 その結果、一部の市町村水道から県営水道料金の減免を要望する意見があった。また、水道料金の減免を実施しているのは、現在、33団体であり、減免の財源としては、大半の団体が一般会計からの繰入れや、国の臨時交付金を活用しており、団体間で対応に差がある。その後、本年7月に開催した市町村水道との意見交換会では、県営水道料金を減免することの将来的な影響などについて説明して、市町村水道には、県の考え方について理解してもらっていると考えている。

【日比たけまさ委員】

 私は、本定例議会の一般質問で、将来世代の利益を考えた計画策定として、フューチャーデザインの手法を取り上げた。代表的な事例として岩手県矢巾町の住民討議を取り上げ、当時、黒字経営であるにもかかわらず、将来負担を見越して水道料金の値上げに踏み切ったことを紹介した。
 本県が公表している企業庁経営戦略によると、当年度損益は黒字を維持しているものの、令和7年度までの収支見通しは、施設更新などの安定供給対策の実施などに伴い新たな減価償却費が発生することなどから、計画期間終了の令和7年度に向けて単年度黒字は徐々に減少していくと記載されている。
 今後の計画は、まだ先の話だとは思うが、長い目で見たとき、施設更新などの将来負担に対してどのような取組を考えているのか伺う。

【水道事業課長】
 県営水道で実施している将来負担に関係する主な事業としては、地震防災対策と老朽化施設更新がある。
 まず、地震防災対策は、計画期間を平成15年度から令和12年度までの28年間とする愛知県営水道地震防災対策実施計画を策定し、整備費用の平準化を図るとともに、負担を先送りすることなく現計画の工期末である令和12年度に完了する予定としている。
 次に、老朽化施設更新は、計画期間を平成30年度から令和12年度までの13年間とする老朽化施設更新計画を策定し、設備と水道管路の更新を進めている。設備は、耐用年数が水道管路などに比べて短く、更新を繰り返すものなので、各設備の更新時期を調整するなどして、更新の平準化を図っている。
 一方、水道管路は、使用年数の目安が60年から80年度程度であるのに対し、県営水道では、最も古い管路で50年を超えたところだが、前倒しして計画的に更新を進めるなどして更新の平準化を図っている。
 このように、県営水道では、安心で安全な水道用水の安定供給を図るため、将来の負担を見通して、地震防災対策や老朽化施設更新を先送りすることなく計画的に進め、負担の平準化に努めていく。

【日比たけまさ委員】

 京都府では、府と市町の水道担当者が集まり、フューチャーデザインを使った議論を行って、例えば広域化の議論をスタートさせる、市町の間の連携を深める、定期的な料金改定、技術革新をするための取組を進めるなど意識の共有化が図られている。
 フューチャーデザインの取り入れの有無にかかわらず、現状の課題や将来を見据えた取組に関する県と市町村による議論は大切だと思う。
 本県では、市町村とどのような議論を行っているのか。

【水道事業課長】
 企業庁では、市町村水道との意見交換会を年に2回開催し、経営の状況や地震防災対策実施計画や老朽化施設更新計画の実施状況などを説明するとともに、市町村水道からの意見を聴き、意識の共有化や事業運営への反映を図っている。
 最近の事例では、意見交換会で、市町村水道から、災害時に県営水道の水道管から被災住民が直接水道水の給水を受けることができる応急給水支援設備の増設要望があり、これまでに整備した309か所に加え、昨年度と本年度で、新たに43か所を整備することとした。
 また、県の保健医療局が平成25年度に設置した愛知県水道広域化研究会議に、企業庁も市町村水道とともに参加し、施設の共同利用や維持管理の共同化などの検討を通じて課題や意識の共有化を図っている。
 県民への水道水の安定的な供給は、県営水道と市町村水道との協働により達成することができるので、今後とも市町村水道と情報や課題を共有し、一層の連携を深めていきたい。

【日比たけまさ委員】

 水道を取り巻く事業環境は、将来に向けて課題がたくさんある。老朽化の施設更新や地震・災害対策の充実に伴って費用は増えていくが、収入面では、今後の人口減少に加えて節水機器の普及や意識の向上によって需要が減少する。一方、退職や定数削減等による職員の専門性の確保や、AI、IoTを活用した技術革新の取り込みも考える必要がある。
 2017年4月に日本政策投資銀行が公表した資料によると、全国の数字ではあるが、設備投資を必要とされる水準まで引き上げた上で、その他の条件を現状維持とする前提の場合に、経常利益を確保するためには、2046年度までに水道料金を1.6倍の水準まで値上げする必要があるとされている。水道は県民の生活、または社会活動を支える最も重要なライフラインであり、将来においても変わらないと思う。だからこそ、安全で安心な水道を安価な料金で安定的に供給し続ける必要がある。
 ぜひ、長期的な視点に立って、様々な観点から幅広く議論するよう要望する。