令和3年 県民環境委員会(2021.6.25)

【日比たけまさ委員】

 インターネットモニタリング事業について伺う。
 まず、今回インターネットモニタリング事業を委託により実施することとなった背景を伺う。

【人権推進課長】
 人権侵犯事件を取り扱う法務省によると、全国でのインターネット上の人権侵害情報に関する人権侵犯事件数は、昨年で1,693件である。2017年の2,217件をピークに、高水準で推移している。
 また、これまで人権推進課の職員で行ってきた同和問題に関するモニタリングにおいて、差別を助長するような書き込みが見られ、プロバイダー等へ削除要請をするよう名古屋法務局に対して依頼している。
 最近では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、インターネット上での感染者やその家族、医療従事者等に対する不当な差別や誹謗中傷も社会問題化している。
 こうしたことから、インターネット上の不当な差別、誹謗中傷等を防止するための対応を検証するために、このモニタリング事業を試行的に実施することとした。あわせて、モニタリングにより抽出した書き込みの内容によっては、人権侵犯事件を取り扱う名古屋法務局と連携して対応していく。

【日比たけまさ委員】

 インターネットのモニタリングについては、これまで人権推進課の職員が行ってきたということだが、どのように実施していたのか。また、モニタリングを実施した成果はどうだったのか。実施した感想も含めて伺う。

【人権推進課長】
 インターネットのモニタリングについては、2018年11月から当課の職員6人で、1人当たりおおむね1週間に1時間程度実施した。不特定多数の人が匿名で書き込みや閲覧ができる5ちゃんねる等の掲示板サイトで県内の同和地区の所在を暴露する書き込みや同和地区が特定され得る差別的な誹謗中傷等、同和問題を対象にモニタリングを行った。
 モニタリングの結果、インターネット上の書き込みの実態を肌で感じることができ、同和地区を暴露するような差別的な書き込みを確認した場合は、プロバイダーへ削除要請するよう、名古屋法務局に対して依頼をした。

【日比たけまさ委員】

 削除依頼をしたということだが、どのような書き込み事例があったのか。また、モニタリングによる問題点や課題をどのように捉えているのか。

【人権推進課長】
 これまでに名古屋法務局等へ削除依頼した件数は、2018年度が5件、2019年度が2件、昨年度が2件である。
 これらは同和地区の地名を具体的に挙げながら、地区の様子を動画や画像で暴露するといったものや、同和地区に多い名字を掲載するといった内容の書き込みであった。昨年度には削除依頼とは別に、掲示板サイトにおける、同和地区の所在地を暴露する書き込みについても16件を名古屋法務局に情報提供した。
 書き込みの中には古地図や学術書を引用しながら、同和地区を特定できる情報を記述するといった、研究を装うようなものもあり、非常に判断に迷う場合もある。そのため、書き込みの削除については、国の人権擁護機関である名古屋法務局に依頼し、県と国で2回判断をすることにより、表現の自由にも配慮している。

【日比たけまさ委員】

 キーワードを基に検出するということだが、最近の書き込みは非常に巧妙になっている。委託事業者には、どのようなことが求められるのか。また、動画サイトやSNSへの対応についてはどのように考えているのか。

【人権推進課長】
 今回のモニタリング事業は、差別を助長する書き込みをいかに検出するのかといったことがポイントとなる。単にキーワードから機械的に検索するだけでなく、その中から誹謗中傷に該当する書き込み、同和問題については地域の暴露といった書き込みも対象となることから、これらを効率的かつ的確に検出し、書き込み内容に応じて、分類した上で、県に報告することが求められる。
 そのため、単に契約金額の低廉性のみをもって委託事業者を決定するのではなく、事業者のノウハウ、知識、技術を生かした企画、手法等が求められることから、企画コンペ方式で事業者を決定する予定である。
 掲示板サイト上で差別的な情報を発信している動画やSNSを引用しているような場合、それも報告の対象とすることとし、監視するサイトについては適宜追加、変更できるようにする予定である。

【日比たけまさ委員】

 削除候補の選別はどのような基準で行うのか。また、削除が思うように進まないこともあると聞いているが、課題をどのように認識しているのか伺う。

【人権推進課長】
 不当な差別、誹謗中傷等に該当するかどうかについては、人権侵犯事件を取り扱う法務省が定めている、インターネット上の人権侵犯事件に関する処理要領を参考に判断する。
 同和問題については、特定の地域が同和地区である、同和地域であったと指摘する行為は、その行為が差別助長目的であるか否かを問わず、また、実際に同和地区であったか否かを問わず削除要請の対象とするという国の通知もあるので、本通知に沿った対応を行う。
 一方、削除要請を行っても、書き込みが海外のプロバイダーを利用している場合などは、削除に至らないこともあり、その実効性をいかに確保していくのかが課題であると認識をしている。
 これまでも国に対してインターネット上の人権侵害の現状を訴えるとともに、適切な対策を講じるよう要請してきたが、引き続き、国において適切な対応が取られるよう働きかけていく。

【日比たけまさ委員】

 事業委託に伴い、どのような効果を期待しているのか。また、今後の展開について伺う。

【人権推進課長】
 事業委託により、対象とする人権課題がこれまでの1分野から4分野になり、把握が難しかったインターネット上の人権侵害の実態等について、より広範に把握することが可能になると考えている。
 また、モニタリング事業では、単に差別を助長する書き込みについて、国の人権擁護機関に削除依頼をすることにとどまらず、モニタリングの結果を分析するなどして、人権啓発のさらなる充実や、人権課題に対応するための新たな施策の検証など、今後の県の人権施策に活用していきたい。