令和3年 公営企業会計決算特別委員会(2021.10.14)

<下水道事業会計>

【日比たけまさ委員】

 令和2年度愛知県公営企業会計決算審査意見書23ページの経営状況には、老朽化施設の更新に多額の費用が発生することが見込まれるとの記載がある。中長期的に安定した経営を行うためには、計画的かつ適切な時期に点検調査を実施することが重要である。
 そこで、点検が必要な管路等の現有施設数と昨年度に実施した点検施設数及びそれに要した費用を伺う。

【下水道課担当課長】
 点検が必要な管路等の現有施設数は、昨年度末時点で、管渠369キロメートル、マンホール1,516か所である。昨年度に実施した点検施設数は、管渠66.3キロメートル、マンホール360か所であり、これに要した費用は約1億3,000万円である。

【日比たけまさ委員】

 どのくらいの頻度で、どのような点検を実施しているのか。

【下水道課担当課長】
 管渠やマンホールの点検については、下水道法において、適切な時期に目視その他適切な方法により行うこととされており、特に、段差や落差のあるマンホールなど、腐食のおそれが大きな箇所については、5年に1回以上の頻度で点検することが定められている。本県では腐食のおそれが大きな箇所を含め、全てのマンホールを5年に1回以上、管渠は10年に1回以上の頻度で計画的に点検調査を実施している。
 点検調査の具体的な方法は、公益社団法人日本下水道協会の下水道維持管理指針に基づき行っており、マンホール及び本県管渠の95パーセントを占める内径800ミリメートル以上の管渠では内部に直接作業員が入り、目視により施設の劣化状況等の点検調査を実施し、そのほかの管渠では自走式テレビカメラを用いる方法等により実施している。

【日比たけまさ委員】

 点検を行う際に苦慮している点や継続して点検することについての課題を伺う。

【下水道課担当課長】
 マンホールや管渠には硫化水素等の有害ガス濃度が高い箇所があること、さらに、管渠には常に流量が多い箇所などがあり、内部に入る作業員の安全が確保できず、業務が計画的、効率的に進まないことに苦慮している。
 また、現時点では流量が少ない管渠でも、下水道利用者の増加に伴い将来的に流量が増加することで、点検困難な箇所が増える可能性がある。
 以上のような箇所へも継続して実施でき、効率的で安全かつ適切な点検調査手法が課題となっている。

【日比たけまさ委員】

 課題解決に向けた今後の取組について伺う。

【下水道課担当課長】
 業務の効率化を図り、安全かつ適切な点検調査手法として、DXの推進が有効と考える。このDX推進の一つとして、下水道管路内調査点検用ドローン技術がある。この調査点検用ドローン技術には、流量が多く作業員による点検が困難な箇所において、水上走行により調査を行うもの、下水道管渠内を飛行して調査を行うもの、水中を移動して調査を行うものなどがある。いずれの方法も、ドローン操作作業員がマンホール内に立ち入らずに地上部で操作可能なため、硫化水素等の有害ガスから安全を確保できる。今後は、継続して実施でき、効率的で安全かつ適切な点検調査として、調査点検用ドローンの活用を検討していく。さらに、維持管理をする上で必要となる施設情報、管渠点検調査結果や修繕履歴などの情報を、一元的に管理できるシステム構築を目指し、引き続き管渠維持管理業務の効率化に努めていく。

【日比たけまさ委員】

 令和2年度愛知県公営企業会計決算審査意見書24ページのあいち下水道ビジョン2025及び愛知県流域下水道事業経営戦略には、下水道の持つあらゆる資源を活用して付加価値を生み出し地球温暖化対策に貢献するとの記載がある。
 そこで、温室効果ガス削減の取組と今後について伺う。

【下水道課担当課長】
 温室効果ガス削減の取組として、本県の流域下水道では、省エネタイプの機器の採用や下水汚泥のエネルギー利用を中心に行っている。省エネタイプの機器は、施設の更新や増設のタイミングで導入している。例えば、生物処理の工程では空気を効率よく送り込む機器を、汚水をポンプでくみ上げる工程では水量を制御できる機器を採用して使用電力を削減している。
 汚泥のエネルギー利用の具体の取組としては、衣浦東部浄化センターで汚泥を燃料化しており、隣接する碧南火力発電所で石炭代替燃料として利用されている。また、汚泥から発生させたバイオガスを使い、豊川浄化センターでは発電を行い、矢作川浄化センターでは焼却炉の燃料として一部を重油に代わり使用している。これら3浄化センターでの取組により、通常の処理と比べて温室効果ガスを年間で約1万1,000トン削減できている。これは、本県流域下水道の温室効果ガス排出量のおよそ1割に相当する量である。
 今後はさらなる排出量削減に向け、衣浦西部浄化センターでは、汚泥焼却時の廃熱を利用して汚泥を乾燥させることで燃料使用量がゼロになる焼却炉を整備しており、来年3月に完成予定である。これにより、温室効果ガスを年間で4,300トン削減できる見込みである。さらに、矢作川浄化センターでは、省エネタイプの汚泥脱水機への更新や、汚泥焼却時の排熱を発電利用する焼却炉の設置を2024年度完成の予定で進めており、温室効果ガスは年間で8,700トンの削減を見込んでいる。引き続き、地球温暖化対策に貢献できるよう努めていく。

【日比たけまさ委員】

 あいち下水道ビジョン2025では、下水道を取り巻く社会経済情勢の変化により、人口減少社会、事業費の抑制、下水道関係職員の減少、施設の老朽化等の課題が挙げられると記載されている。この解決策の鍵を握るのは、新しい技術の導入だと思う。
 昨日、水道事業でも発言したが、例えば、A社の技術を応用すれば自社の設備にも使えるのではないか、新しい運営方法としてB社の管理体制が参考になるのではないかといった、柔軟な発想が必要である。
 維持点検や温室効果ガスの削減について、様々な技術に取り組んでいることはよく分かった。これからも、このような柔軟な発想で積極的に新しい技術に取り組んでほしい。


<病院事業会計>

【日比たけまさ委員】

 令和2年度愛知県公営企業会計決算審査意見書4ページの病院別経常損益について、あいち小児保健医療総合センターの経常損益が前年度から悪化している中で、新型コロナウイルス感染症へはどのように対応したのか。

【あいち小児保健医療総合センター長】
 病院が全体で機能停止することを避けるために、入院については、昨年4月から5月にかけて診療体制を完全2チーム制に分けるなど診療制限を行った。外来についても、診療枠の制限や検査の先送りができる人は先送りするなどした。
 その結果、入院患者数は10.1パーセント減少し、外来患者数についても10.5パーセント減少した。なお、本年度は通常どおり診療している。

【日比たけまさ委員】

 あいち小児保健医療総合センターが力を入れている小児3次救急、周産期部門、小児心臓病センター及び免疫・アレルギーセンター等の患者の受入状況を伺う。

【あいち小児保健医療総合センター長】
 当センターでは、新型コロナウイルス感染症の影響下でも、センター内には感染すれば重症化する基礎疾患を持つ患者が多いことから、感染の持込み及び拡散防止には最大限の対策を行いながら、通常診療を滞りなく継続することを目指している。万一、診療制限が発生した場合には、当センターでないと治療ができない子供たちの治療継続を最優先に考えた対策を講じている。その中で、県内唯一の小児救命救急センターである当センターの患者の受入状況については、重症の感染症及び感染症に伴う原疾患の悪化という疾患が大幅に減少したため、集中治療室への緊急入院患者数は2019年度の144人から昨年度は73人と半減したが、先天性の心疾患や、外傷、消化器系、肝臓などの疾患などによる他病院からの転院も断ることなく受け入れることができた。
 周産期部門としては、出産件数が72件から67件と若干減っているが、他院で生まれた重症の新生児の転院を受け入れている新生児科の入院延べ患者数は、2,370人から2,414人と若干増えた。県内の心臓外科の手術の約半数を実施している小児心臓病センターでは、循環器科と心臓外科の延べ入院患者数で比較すると、2019年度は8,952人、昨年度は9,148人と若干増えており、延期できない手術など必要な医療は確保している。
 免疫・アレルギーセンターとしては、感染科、アレルギー科及び予防科の延べ入院患者数で比較すると、2019年度は7,291人、昨年度は6,050人と大きく減少している。これは、感染症及び感染に伴う原疾患の悪化が大幅に減ったことと、アレルギー科の検査入院及び免疫療法の一部は診療抑制の対象にしたことによる。一方で、クローン病や全身型の若年性関節炎等の治療の継続が重要な疾患など必要な医療は確保している。

【日比たけまさ委員】

 あいち小児保健医療総合センターでないと治療できない子供とは、どのような患者なのか。

【あいち小児保健医療総合センター長】
 当センターでないと治療ができず、患者が集中している主な疾患名については、免疫・アレルギー関連では、消化管のどの部位にも炎症が起こるクローン病、原因不明の慢性の関節炎である全身型若年性関節炎、小児心臓病では、心室や心房の中隔欠損など先天的な心臓疾患、脳神経外科では、頭蓋骨内の脳脊髄液の循環や吸収に異常が生じる水頭症や頭蓋・顔面骨の先天異常、整形外科では、骨や軟骨の先天的形成異常、泌尿器科・腎臓科では、腎臓や尿管の異常により尿の流れが不良となるような先天性水腎症・上部尿路疾患などであり、全国の小児専門の医療施設と比べても、患者数は上位を占めている。
 今後も本県の小児医療の中核拠点病院として、一人でも多くの患者に高度で専門的な治療が提供できるように努めていく。

【日比たけまさ委員】

 県内唯一の高度専門的な病院であり、本県にはなくてはならない病院である。また、センター開設20周年であり、県民の期待もますます高まっているので、期待に応えられる施設になってほしい。
 次に、がんセンターの特定機能病院の承認に向けた現在の状況について、昨年度の公営企業会計決算特別委員会では、がんセンターが特定機能病院の承認を受けると、収益が約2億2,000万円の増収になるとの答弁があった。医療の質の向上あるいは経営改善のために速やかに承認を受けてほしいが、昨年からの進捗状況を伺う。

【がんセンター病院長】
 がんセンターでは、特定機能病院の承認取得に向けて、人員強化やICUの整備などを計画的に進めてきたが、コロナ禍により、国の審議に関しては、昨年11月16日の社会保障審議会医療分科会から何も動きがない状況である。しかし、新型コロナウイルス感染症が落ち着いてきたこともあり、近いうちに再度、医療分科会での審議を行う予定である旨の連絡を厚生労働省から受けているので、今後、厚生労働省や社会保障審議会医療分科会の指示などに的確に対応し、承認取得に向けて進展させていきたい。

【日比たけまさ委員】

 精神医療センターにおける長期入院患者の地域移行支援を進めるための取組であるACTあいちについて、昨年度の公営企業会計決算特別委員会で、時間的な制約があるならば、県内の協力医療機関を増やし、そして保健福祉関係の人々の協力・サービスを使いながら、精神的な疾病を持った人々のサポーターをして、地域移行を進めてほしいと要望したが、その後の取組状況を伺う。

【精神医療センター院長】
 昨年度の包括型地域生活支援プログラム(ACT)について、より効率的に多くの患者の訪問ができるように日程やルートの設定をしたことや、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い患者のニーズが高まったこともあり、ACTの件数は前年度に比べて157件増加して2,129件となっている。
 また、ACTの訪問範囲については、利用者の病状が急変し、緊急に訪問が必要になったとき、遠方の場合、移動時間が長くかかり、すぐに駆けつけることができないため、車で片道30分程度の約10キロメートルまでの人を対象としている。
 ACTについては、地域支援のモデルであり、訪問範囲にも限りがある。訪問範囲外の患者については、住まいの地域の相談支援センターや訪問看護ステーションなど関係機関や施設と調整するケア会議を設けて連携を図ることによって、地域で安心して生活できるように支援している。ケア会議の開催回数も年々増加しており、地域支援の促進は進んでいると考えている。