インターネットモニタリング事業について伺う。
6月定例議会の委員会において、委託に至った背景や県職員が実施する中で感じていた問題点や課題を質問し、県からは、事業委託の際には事業者の技術、技能を見極めて契約するとの答弁があった。その後、8月23日からインターネットモニタリングを開始したことや、委託事業者がピットクルー株式会社になったことなどを確認した。
そこで、事業者選定の過程や当該事業者の実績について伺う。
【人権推進課長】
事業者選定の過程と事業者の実績であるが、今回のインターネットモニタリング事業は、差別を助長する書き込みをいかに検出するかがポイントであるため、単に契約金額の低廉性のみで委託事業者を決定するのではなく、事業者のノウハウや知識、技術を生かした企画や手法等を審査する企画コンペ方式で事業者を選定した。
コンピューターサービス事業者で、インターネット関連サービスを取り扱っている事業者を対象に企画提案書の提出を求めて募集したところ、一社から応募があった。
企画内容の審査に当たっては、人権擁護の観点から、名古屋法務局、愛知県人権擁護委員連合会の職員等を外部委員に迎えて選定委員会を開催し、モニタリングの対象とするメディアが事業の趣旨に合っているか、キーワード検索の実効性は十分であるか、迅速な報告は可能か、類似業務の受託実績はあるかなど、様々な観点から審査を行った。
その結果、岐阜県や福井県など、複数の自治体でインターネットモニタリング事業の受託実績がある事業者を委託事業者として決定した。
この事業を開始してから1か月がたった。委託事業者からは、どういう内容の書き込みが報告されているのか。
【人権推進課長】
今回のモニタリング事業では、対象とする人権の分野を愛知県内の新型コロナウイルス感染症、同和問題、外国人、障害者に関するものとしている。
新型コロナウイルス感染症に関するものでは、店舗の営業状況や人々の行動など、コロナ対策を十分に行っていないことに対する批判的な書き込みや、コロナ禍におけるイベントの開催やその参加者に対する批判的な書き込みなどが報告されている。同和問題に関するものでは、特定の地域を同和地区であると指摘する書き込みが報告されている。さらに、外国人については、外国人が多く住んでいる地域に関する否定的な書き込みや、外国人の素行に関する批判的な書き込みなどが報告されている。なお、障害者に関する書き込みについては、まだ報告数が少なく、分析ができていない状況である。
事業を開始して約1か月が経過したが、書き込み内容を見ると、明らかに違法性があり、国の人権擁護機関へ削除要請が必要であるとまでは言えないものの、誹謗中傷など有害と考えられる書き込みが多数見られる状況である。
こうした報告を受けた書き込みについて、今後どのような対応をしていくのか。
【人権推進監】
今回のモニタリング事業の目的は、インターネット上の悪質な書き込み等の実態を把握して防止策等を検討することや、報告された書き込みのうち、削除することが適当と県が判断したものについて、国の人権擁護機関である名古屋法務局に削除要請を行うことである。
これまでに委託事業者から報告を受けた書き込みの中で、同和地区を指摘する書き込みのうち、同和地区の場所を相当程度に範囲を特定するような書き込みについては、法務省が各地方法務局宛に通知したインターネット上の人権侵害情報による人権侵犯事件に関する処理要領など、国の取扱いに照らして削除要請することが適当であると認められるため、名古屋法務局へ削除要請をしていく。その他の書き込みについても、適宜、名古屋法務局と調整の上、必要に応じて削除要請等を行っていく。
また、防止策等については、今後、愛知の人権施策に関する有識者会議でも意見を聴きたいと考えているが、まずは、インターネット上の悪質な書き込みを防止するための啓発として、12月の人権週間を中心とした広報活動において、インターネット上の人権侵害をはじめとした様々な人権課題をテーマにしたポスターを作成し、県内のJRや名鉄の主要駅に掲出するなど、啓発活動にしっかりと取り組んでいく。
さらに、人権課題をコンパクトにまとめたポケットブックを3,000部作成し、本県の人権啓発の拠点施設であるあいち人権啓発プラザ等で配布していく。こうした啓発を粘り強く行うことにより、インターネット上の人権侵害を未然に防止していく。
次に、男女共同参画の取組について伺う。
女性活躍推進法は、仕事で活躍したいと希望する全ての女性が、個性や能力を存分に発揮できる社会の実現を目指して2015年8月に成立した。国や自治体、企業などの事業主に対し、女性の活躍状況の把握や課題分析、数値目標の設定、行動計画の策定、公表などが求められ、当初は300人以下の事業主は努力義務とされていたが、来年4月以降、この義務化が101人以上の事業主に拡大される。
そこで、これに伴う県の対応について伺う。
【男女共同参画推進課長】
事業主の行動計画の策定については、改正女性活躍推進法が施行される来年の4月までに改正内容を周知し、計画の策定、届出をしてもらうことが必要であるため、昨年と本年の2年間をかけて集中的に事業を展開し、計画的に進めている。
具体的には、改正内容を周知するための説明会の開催、中小企業へ年20社、2年合計で40社に社会保険労務士を派遣し、行動計画の策定に向けた助言、指導を行っている。
また、支援した企業で相談のあった課題、解決策などをQ&A方式にして、あいち女性の活躍促進応援サイトに掲載して、計画策定の参考としてもらえるよう、情報発信している。
改正法の施行日が迫っているため、行動計画の策定、届出を所管している愛知労働局と情報共有し、役割分担をしながら、一層の連携を取り該当する企業への周知や働きかけを行っていく。
次に、県民意識の把握について伺う。
本年3月、世界経済フォーラムが国別に男女格差を数値化したジェンダー・ギャップ指数2020が発表され、日本は調査対象となった世界156か国中120位、主要7か国首脳会議(G7)では最下位だった。
男女間のあらゆる格差をなくし、男女共同参画の実現を目指すためには、現状の把握が大切である。県民意識に関する調査をどのように行っているのか伺う。
【男女共同参画推進課長】
県では、2019年度に男女共同参画に関する県民意識の変化、企業等における女性活躍の現状や課題などを把握して、次期あいち男女共同参画プラン策定の基礎資料とするとともに、今後の施策推進の参考とすることを目的に、県民意識調査を実施した。この県民意識調査は、プラン策定の前年度に実施しているので、プランの計画期間である5年に1回実施している。
さらに、プラン策定後の2年目に、政策企画局が実施する県政世論調査を活用し、プランの5年間の計画期間で少なくとも2回の調査を行っている。
男女共同参画プラン2025には、施策の展開に当たって様々な進捗管理指標が目標値に設けられているが、目標値が設定されていない項目もある。県が取り組む領域を超えたものもあり、例えば、地方議会に占める女性の割合という項目は、県ではなく議員自身がこの現実を重く受け止めて、取組を考えなければならない。
一方で、共働き世帯の夫、妻の1週間の育児・家事関連平均時間や、夫は外で働き妻は家庭を守るべきであるという考え方に反対する人の割合などの項目は、県民文化局として取り組む余地がある。目標値に対する結果で全てを評価するつもりはないが、目標設定があると、取組の進捗度合いや課題などが明確になり、施策の真剣度がより伝わる。この点について県の考えを伺う。
【男女共同参画推進課長】
あいち男女共同参画プラン2025には、42の進捗管理指標があり、このうち、共働き世帯の夫、妻の1週間の家事・育児関連平均時間及び夫は外で働き妻は家庭を守るべきであるという考え方に反対する人の割合は、目標値を設定せず、その結果を調査し、公表して推移を見守るとしている。これは、同プランに先立って策定された国の第5次男女共同参画基本計画や本県のあいちビジョン2030において、目標値のない参考指標や進捗管理指標となっていることを踏まえたものである。当該数値は、進捗管理の中で状況をしっかり把握しながら、それぞれの数値が向上するよう意識啓発にしっかり取り組んでいきたい。
男女共同参画への取組は、市町村との連携が大変重要である。ジェンダー統計の把握や公表など、市町村ではどのように対応しているのか。また、市町村と県との連携について伺う。
【男女共同参画推進課長】
市町村におけるジェンダー統計の把握や公表については、県として正式に調査をしているものではないが、公表されている各市町村の男女共同参画に関する計画を確認したところ、多くの市町村で男女の地位の平等感や固定的な性別役割分担意識、審議会の委員や市町村の管理職の女性の登用率について調査を行い、それを基礎資料として計画策定が行われている。
また、市町村との連携については、本県では、男女共同参画についての情報を共有して、市町村において積極的に取り組んでもらうことを目的に、毎年度、市町村男女共同参画推進担当課長会議や市町村職員を対象にした研修などを開催している。こうした場を活用して、県民意識調査等についても情報共有している。
今後とも、県と市町村が共に施策に取り組むことにより、男女共同参画社会の形成を進めていきたい。
コロナ禍におけるジェンダー意識について伺う。この質問に当たって配付した資料は、本年7月に公表された令和3年版厚生労働白書の調査結果の抜粋である。
厚生労働白書では、新型コロナウイルス感染症の蔓延で見えた社会保障の五つの課題が示されており、その一つとして、性差によって負担に偏りが生じない社会づくりが掲げられている。その中に記載されている二つの調査結果とその考察文書を紹介する。
一つ目は、感染拡大に伴う自粛生活により、昨年5月時点の女性の家事・育児時間が、前年の12月と比べ11.7パーセント増え、男性の増加幅3.6パーセントを上回ったとの調査結果である。これを踏まえた考察文書では、我が国では、意識の面でも実態としても、性別役割分担の度合いが他の主要先進国と比べ強いとされるが、女性の育児・家事等の負担が大きい中で、昨年4月から5月の緊急事態宣言下における学校等の一斉休業やテレワークなどの在宅生活への移行は、男性よりも女性に多くの育児・家事等の時間の増加をもたらすこととなったとされている。
二つ目は、感染症による暮らしの変化に伴う人々の生活満足度の変化についての意識調査のうち、家族と過ごす時間の変化と子育てのしやすさ及び生活全体の満足度の低下幅という調査である。感染拡大前と比べて、感染拡大後の満足度は、男性、女性ともに低下している。その上で、この調査結果は、家族と過ごす時間が変化することによる満足度の低下幅が男女によって異なるという点に注目し、以下、厚生労働白書の文章を紹介する。
男性の場合は、家族と過ごす時間が増加したことがプラスに働き、子育てのしやすさの満足度も、生活全体の満足度も低下幅が抑えられた。一方、女性の場合は、家族と過ごす時間が増加したことがマイナスに作用し、子育てのしやすさ満足度も、生活全体の満足度も低下幅が大きいという結果をもたらしている。テレワークを含む在宅時間が増えたことにより、女性の家事・育児の負担の軽減につながるのではないかと期待していたので、この調査結果には衝撃を受けた。
今こそ意識変容を促す取組を強力に進めるべきと考えるが、県としてのこの結果に対する認識と思いを伺う。
【女性の活躍促進監】
コロナ禍で女性の家事・育児の負担がかえって高まっていること、併せて、生活の満足度に性差が生じ、女性のほうがマイナスの要素が大きく出ている背景には、家事は女性の役割であるとする固定的な性別役割分担意識が影響していることが考えられる。女性の負担が、本人の意に反して増加し、女性の活躍の妨げや制約となることについては、好ましいことではない。
本県では、これまでも身近なところから男女共同参画を考えてもらえるよう、絵と文字で表現したはがきの募集や、男性の育児から見る男女共同参画をテーマに、女性が活躍できる社会を考えるセミナーなどを実施している。県民意識の調査においても、固定的な性別役割分担意識は、少しずつ変化してきている。
今後は、例えばはがきの募集事業において、家事の分担をテーマとして、固定的な役割分担意識について、県民に改めて考えてもらう取組を検討するなど、しっかりと取り組んでいく。