令和2年度愛知県公営企業会計決算審査意見書8ページの経営状況について、将来的には給水収益の減少が見込まれる中、老朽化施設の更新等、多額の費用が長期的に発生することが見込まれる。計画的かつ適切な施設整備を行うなど、長期的な視点に立った健全な事業経営に努められたいとの記載がある。そこで、企業庁経営戦略(改訂版)に、水道事業の主な取組事項が書かれているので、長期的な観点から確認をしたい。
まずは人の問題について、企業庁経営戦略(改訂版)に、近年、経験豊富な水道技術職員の退職者が多い状況が続いていると書かれている。事業を安定的に継続して運営していくためには、計画的な人材の確保、育成、技術の承継が大変重要だと思うが、どのような取組を行っているのか。
【水道計画課長】
水道技術職員は、水道事業及び工業用水道事業を合わせて現在299人おり、本庁、水道事務所及び浄水場などにおいて、施設の建設や維持管理等を行っている。水道技術職員は、平成20年度から順次、浄水場の運転管理業務を委託するなどにより人員削減し経営合理化に取り組んだ上で、近年は、退職者の状況に合わせて、土木、電気、化学などの各職種を、継続してバランスよく新規採用にて確保している。
また、経験豊かな職員が減少し、経験の浅い若手職員が増加しているので、専門的な人材の育成と技術力の向上を図るため、水道技術のキャリアプランなどを盛り込んだ水道技術職員育成プログラムを策定し、経験年数に応じた体系的な育成を進めている。
具体的には、新規採用時に水道の一般的知識を習得する研修を行い、2年目以降に、水道の技術的な知識を習得する研修や漏水探査などの実技を取り入れた現場研修を行っている。また、採用から8年間のジョブローテーション期間中は、水道施設の維持管理、建設工事など、可能な限り多様な職場を経験させ、特に水道の根幹である浄水場にはできる限り配属し、浄水場の運転管理を経験させることで、技術の習得と継承を図っている。こうした研修やジョブローテーションにより、専門的な知識と技術を有し、さらにはライフラインを担うという使命感を持った水道技術職員の育成を図っている。
老朽化対策には維持管理や施設の更新が重要だと思う。
まず維持管理については、この業務を確実に実施していく上で、人が替わっていくことも含め、新しい技術、特にデジタル技術を取り込んでいくことが有効と考えるが、その取組について伺う。
【水道計画課長】
水道事業におけるデジタル技術の導入については、これまで、浄水場の浄水処理や管路等の送配水業務をはじめ、水質や水量の計測、各種データ管理など、様々な業務において、適応したシステムを構築し、それぞれの業務に有効に活用している。現在、既存の管路情報システム及び管路ナビゲーションシステムについて、導入から10年以上が経過しており、機器故障などが発生し更新の必要があるため、管路データのクラウド化や、タブレット型端末による現場状況の共有化など、利便性の向上を図るため、新たなICT技術を活用したシステム再構築の検討を進めている。
今後も、既存システムの更新が必要なタイミングを捉え、業務の効率化や高度化につながるよう、最新のICT技術の動向を踏まえつつ、業務への適用を十分に吟味しながら積極的にデジタル化を推進していきたい。
設備更新計画の記載もあるが、長期的な視点に立って計画的に更新していくことが重要である。どのように取り組んでいるのか伺う。
【水道計画課長】
水道施設については、主に、設備類、管路、コンクリート構造物の三つの種類がある。
まず、浄水場のポンプなどの設備類については、1990年度に設備更新計画を策定し、おおむね10年ごとに見直しながら、事業費や工事費の平準化を考慮し継続的に更新を進めてきた。
次に、管路については、2012年度から新たに策定した管路更新計画により、順次更新を図ってきた。2017年度に設備更新計画と管路更新計画を一本化した老朽化施設更新計画を策定し、事業期間を2018年度から2030年度までの13年間、総事業費を944億円として計画的に進めている。
最後に、浄水場の沈殿池やろ過池、浄水池などのコンクリート構造物については、給水開始から50年が経過し、耐用年数の60年に近づいているものもあるため、まずは県水で最も建設年代の古い豊橋浄水場の更新に着手することで検討を進めている。
事業を安定的に行うには、民間の経営手法を導入することも大切であり、浄水場に関しては排水処理業務にPFIを導入し、維持管理の効率化に取り組んでいると聞いているが、その実施状況について伺う。
また、豊橋浄水場の更新が近づいているということだが、民間的経営手法の導入についてどのように考えているか伺う。
【水道計画課長】
企業庁では、2005年度に愛知用水地域の4浄水場、2010年度に三河地域の6浄水場、2015年度に尾張地域の2浄水場において、水処理に直接影響しない排水処理業務にPFIを導入している。いずれの事業も脱水機等の設置が計画どおり進んでおり、排水処理で発生する土についても、園芸用土や路盤材等として全量を有効利用できており、順調に運営及び経営がなされている。引き続き、事業者の業務や財務状況を監視するモニタリングをしっかり実施するなど、万全の体制で取り組んでいく。
今後の民間的経営手法の導入については、昭和40年代頃に集中的に整備した多くの施設の老朽化が見込まれるため、浄水場の更新などの大規模な工事を加速させていく必要があり、確実に更新事業を進めていく観点から、官民連携を積極的に採用していくことは不可欠な状況である。豊橋浄水場の全面更新においても、維持管理を含むPFI導入など、最適な手法について検討を進めていきたい。
水道事業を取り巻く現状や課題は、県も市町の水道も同様と考えられるが、課題の共有や連携した取組について、日頃どのようなことをしているのか。
【水道計画課長】
企業庁では、市町等の水道事業者との意見交換会を年に2回開催し、経営状況や施設更新、地震防災対策の実施状況などを説明するとともに、市町等からの意見を聴き、課題の共有化や事業運営への反映を図っている。
市町等と連携した取組としては、県営水道の送水管と市町等の配水管を直接つなぎ、応急給水するための支援連絡管を、全42団体のうち34団体との間で39か所設置するとともに、管路の被災時に迅速に応急復旧が実施できるよう、管などの資材を保管しておく共同備蓄倉庫5か所などの整備を完了している。また、定期的に共同の防災訓練を実施しており、防災面での連携体制の充実を図っている。
さらには、保健医療局が2013年度に設置した愛知県水道広域化研究会議に、企業庁も市町等の水道事業者と共に参加し、施設の共同利用や維持管理の共同化などの検討を通じて、課題や意識の共有化を図り、地域の実情に応じた水道の基盤強化に向けて取り組んでいきたいと考えている。
長期的な視点に立った健全な事業経営の観点から、水の安定供給という基本を大切にしながらも、新しい技術であるAIやIoTを積極的に導入すること、そして、意識の共有や人材育成の観点から、市町を含めた積極的な人的交流が大切だと考える。
例えば、昨年、豊田市が全国で初めて衛星画像の解析による水道管の漏水調査を行い、従来5年かかっていた作業を7か月程度で完了したという報道があった。この技術を県で応用するのは難しいと聞いているが、例えばA社の技術を応用できないか、新しい運営方法としてB社の管理体制が参考になるのではないかなど、柔軟な発想が求められると思うので、既存の業務の枠にとらわれず、幅広い分野に目を光らせて積極的にチャレンジしてもらうことを要望する。