昨年10月、国は2050年にカーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言し、本年4月に、2030年度に温室効果ガス排出量を46パーセント削減することを表明した。
イギリスのグラスゴーで開催されたCOP26では、世界の気温上昇を1.5度に抑えるため、今世紀半ばでの温室効果ガス実質排出ゼロ及びその経過点である2030年に向けて、野心的な気候変動対策を各国に求めるとの合意がなされ、今後一層の温室効果ガスの削減やそのための取組の強化が求められる。
そこで、あいち地球温暖化防止戦略2030の改定の方向性と、今後どのような調査を実施していくのか伺う。
【地球温暖化対策課担当課長】
国の温室効果ガス排出量削減の目標の引上げを受け、本県の削減目標を見直すとともに、地球温暖化対策推進に関する法律の改正を踏まえ、再生可能エネルギーの導入目標等を定めるほか、削減目標を達成するために必要となる新たな取組を検討し、これらを盛り込んだ戦略に改定することとしている。
そのため、現行のあいち地球温暖化防止戦略の取組状況の分析、本県における温室効果ガス排出量の実態把握や将来予測、再生可能エネルギーの導入実績の把握や将来予測を行うとともに、戦略改定に必要な支援について委託をする予定である。
11月定例議会には再生可能エネルギー実現可能性検討調査の議案が提出されているが、経済産業局とどのように連携していくのか。
【地球温暖化対策課担当課長】
経済産業局が提案している調査は、再生可能エネルギーの拡大や地域産業への波及が見込まれる案件に対し、その実現可能性について、検討、分析を行うと聞いている。
これに対し、環境局の調査は、文献資料等により、地球温暖化対策に係る国内の関連施策の把握をするとともに、それを整理し、本県の温室効果ガス排出実態の把握や要因分析、排出量の将来予測などを行う。
本年6月の地球温暖化対策推進法の改正で都道府県に再生可能エネルギーの導入目標量等の設定化が義務づけられたため、再生可能エネルギー導入目標量などを定めるために必要な再生可能エネルギーのポテンシャルなどの情報収集をすることとしている。
具体的には、経済産業局の調査では、例えば、立地条件や自然環境の状況変化と再生可能エネルギーの発電効果の関係性や、発電施設の設置に伴う周辺環境への影響などについてシミュレーションし、事業の実現可能性を検討していくことを想定している。
一方、環境局の再生可能エネルギーに関する調査については、県内で2030年度に再生可能エネルギーをどれだけ導入できるか、その目標量を定めるため、例えば日照量や日照時間、設置可能面積等について文献等を活用して調査する予定である。
いずれにしても、調査の実施に当たっては、経済産業局と十分に情報共有を行い、連携しながら進めていく。
今回は排出量の削減目標を見直すということだが、新たな削減目標はどのように設定するのか。
【地球温暖化対策課担当課長】
本県の新たな削減目標の設定に当たっては、国の温暖化対策計画による本県分の削減見込量と、県独自の施策による削減見込量の二つの事項を積み上げて設定することとしている。
具体的には、国の地球温暖化対策計画における各施策による全国の温室効果ガス排出の削減見込量から、全国と本県の活動量の比率等を用いて本県分を按分したものを、学識者等を交えた検討を通じて、本県独自の特色ある取組や追加的な施策による削減見込量を積み上げて算出をすることとしている。
国が掲げている46パーセント削減は非常に高い目標であり、国に準じた目標を設定するためには、本県独自の取組が必要となるため、しっかりと検討していきたい。
先進環境対応自動車導入促進費補助金について、今後、カーボンニュートラルの実現に向け、EV、PHV、FCVというゼロエミッション車の普及を進めていく必要がある中、補助金の申請増加に伴う増額であるので、よい傾向だと思う。
ゼロエミッション車の普及拡大に向けて、導入支援を継続することが重要であるが、補助金と今後の普及施策について、今回の増額補正を行う必要性をどのように考えているのか。
【地球温暖化対策課担当課長】
本年度は前年度と比べて、EV、PHV、FCVの申請台数が伸びており、UDタクシーを除いた予算額、2億3,273万円に対し、9月末の時点で、合計266台の申請があった。
予算の執行額が1億8,946万円であり、上半期だけで執行率81パーセントと、予定を大幅に上回る申請があり、10月以降このペースで申請があった場合、年内にも補助金が枯渇することが見込まれる。
そこで、不足が見込まれる6,342万円の予算を増額し、補助を継続することで、EV、PHV、FCVのさらなる普及加速を図りたい。
予定を大幅に上回る申請があった要因についてどのように考えているか。
【地球温暖化対策課担当課長】
県民の地球温暖化対策への関心が高まる中、昨年10月にはレクサスUXのEVモデル、12月には新型MIRAIなど、新型車両が発売された。
また、米国テスラ社の中国生産拠点の稼働により、本年2月から国内におけるEVテスラの車両販売価格が大幅に引き下げられたことなどから、EV、FCVといったゼロエミッション車への需要が高まり、申請数の増加につながったと考えている。
EV等の新型車両が次々と発売されていくことが見込まれるが、今後のゼロエミッション車の普及と補助に対する考え方について伺う。
【地球温暖化対策課担当課長】
本県では、本年3月にあいち自動車ゼロエミッション化加速プランを策定し、EV、PHV、FCVの新車販売割合を2030年度に30パーセントとする目標を掲げ、普及を推進していくこととしている。
新型車両が発売され、EV等の車両の種類が増えることにより、消費者ニーズが徐々に高まってくると考えられるが、従来車に乗っているユーザーのEV等の機能に対する認知度が低く、車両価格も高額であることから、本県独自の自動車税種別割の課税免除や中小企業者等を対象とした補助金の導入支援により、下支えをしている。
今後も、インフラ環境の改善に向けた支援はもとより、まずはEV等に関心を持ってもらうために、外部給電機能の実演をするなどの啓発活動に取り組むとともに、引き続き導入支援を行うことにより、自動車のゼロエミッション化の加速を図り、カーボンニュートラルの実現に向けて取組を進めていく。
2030年度温室効果ガス排出量46パーセント削減は、非常に大きな挑戦である。実現に向けて、関係部局と連携したあらゆる施策の実施が求められる。
さらに、中部圏水素利用協議会など、民間との連携強化も含めて、オール愛知で調整してほしい。ぜひ環境局が先頭に立って取組を強力に推進するよう要望する。