中学校、高等学校におけるキャリア教育について、現在「あいちの教育に関するアクションプランII」では、キャリア教育の充実を重点目標に掲げて取り組んでいる。若年者の雇用情勢が厳しい中、比較的早い段階から勤労観、職業観を養うことは非常に大切であると考える。
中学校での職場体験活動及び高等学校でのインターンシップについて、これまでの経緯及び現在の状況そして県教育委員会としての指導方針について伺う。
【義務教育課長】
県教育委員会としては、子どもたちの発達段階に応じ、小・中・高等学校12年間とそれぞれの学校における教育活動全般を見通してキャリア教育を適切に位置付けて進めていくことが大切であると考えている。
中学校におけるキャリア教育の中核である職場体験学習は「あいち・出会いと体験の道場推進事業」として平成18年度から始まり、平成21年度からは名古屋市を除く県内全中学校で実施されている。この事業は、職場体験を通して子どもたちに将来の生き方について真剣に考えてもらい、働くことや学ぶことへの意欲を向上させることをねらいとしている。職場体験も学校の教育活動に位置付け、一過性の行事とならないよう事前指導・事後指導で子どもたちのこれからの進路・生き方・ものの考え方に結び付けていく指導をしている。昨年度は、約98パーセント以上の学校が3日以上の体験活動を行った。実施後のアンケートでは、生徒からは「自分で考えて行動していかなくてはならないことを学んだ。」とか保護者からは「人に合わせて何かをすることの難しさ、素晴らしさが体験できて良かった。」との感想があった。
【高等学校教育課長】
県教育委員会では、平成13年度からキャリア教育関係推進事業を立ち上げ、産業界との連携のもとインターンシップや外部講師の招へいなど発達段階に応じた組織的・系統的なキャリア教育を推進している。当初は、卒業後、社会へ出る生徒の多い職業学科を中心に取り組んでいたが、平成21年度の愛知県産業教育審議会の提言の中で「キャリア教育は、普通科も含めたすべての高校において、教育活動全体を通して取り組む必要がある。」と示されたことから、平成22年度からは全ての全日制県立高等学校でインターンシップを含めたキャリア教育を実施するよう指導することとした。
その結果、インターンシップやジョブシャドウイング等の取組については、数名でも行っている学校が、平成21年度は全体の73.2パーセントであったのに対し、平成22年度は96.0パーセント、平成23年度からは100パーセントとなっている。しかし、実施人数は全生徒の約2割であり、インターンシップ等への参加人数の拡大が課題の一つである。
また、産業界や大学等で活躍するプロフェッショナルを招へいして直接指導を受ける「キャリアリンク講座」や工業高等学校において地域企業と連携して産業界のニーズを踏まえた実践的な技能の習得を目指す「ものづくりスキルアップ講座」を実施し、各学校におけるキャリア教育を積極的に支援している。
キャリア教育については、学校間で取組に温度差があると聞いている。キャリア教育の重要性を教員がどれだけ認識しているのかという意識の差が学校間の温度差に表れるのだと思う。県教育委員会として現場の教員にどのようにサポートをしているのか。また、高等学校では以前「キャリア教育推進フォーラム」を実施したと聞いているがその内容とその後のフォローについて伺う。
【義務教育課長】
取組の温度差は、委員指摘のとおり、キャリア教育を進める上で一つの課題として捉えている。小・中学校については、学校間以上に小学校と中学校間でのキャリア教育に対する教員の意識の差がまだまだあると捉えている。
中学校では、職場体験が100パーセント実施されていることから、それを核としてキャリア教育は生き方指導という意識が教員の中では高くなっている。一方、小学校では進路指導がもともと行われていなかったこともあり、中学校と比べるとどうしても意識が低い傾向となってしまう。そこで、一昨年「キャリア教育推進の手引」を作成し、ホームページに掲載したことに続き、昨年度は、教員の研修用として「キャリア教育推進DVD」を作成し、各市町村教育委員会及び全小・中学校に配付した。また、系統的なキャリア教育を小学校・中学校から高等学校と特別支援学校の12年間で一層推進するために「キャリア教育ノート」を作成し、授業や行事の活動をまとめたり、学期末・学年末・卒業期に子どもたちが自分を振り返り、自分の将来について考えたりすることができるものとした。実際にこのノートを使用した学校の教員からは「学年の系統性や教科や行事との関連性を考えた指導ができた」との意見があり、子どもたちからは「かわいいキャラクターが使われていて、親しみやすい」という声を聞いている。
今後も手引やDVD、ノートを活用した研修を推進するとともに、各学校において日常的な係活動や当番活動、教科指導など学校教育全体を通してキャリア教育が推進されるよう市町村教育委員会に働きかけていきたい。
【高等学校教育課長】
県立高等学校におけるキャリア教育を推進するため、各学校のキャリア教育担当者等を対象とした「キャリア教育推進フォーラム」を平成20年度から22年度までの3年間開催した。内容としては、文部科学省のキャリア教育担当調査官の講演やキャリア教育先進校の事例発表、キャリアカウンセリングやキャリアデザイン等を学ぶセミナーを行った。参加した教員からは、キャリア教育の重要性や方策について理解を深めるとともに、生徒を指導する上での具体的な手法を身に付けることができたとの感想があった。
キャリア教育推進フォーラムが終了した平成23年度からは、県内を14地域に分け、各地域でキャリア教育担当者が集まり、情報交換や研修を実施したりする「キャリア教育推進会議」に、産業界等から講師を招き、企業が求める人材についての研修会を実施するなど、キャリア教育に対する教員間の意識を高めている。
高等学校でのキャリア教育は、進学するにせよ就職するにせよ、自分を見つめ将来を具体的に考えるためには大変重要である。進学を希望する者にとっても、なぜ自分は大学に進学するのか、どこの学部に進学すべきかといった具体的な目標にもつながることから、普通科も含め更なる充実が必要と考えるが、県教育委員会として今後どのように対処していくのか伺う。
【高等学校教育課長】
大学等への進学希望者の多い普通科では、インターンシップの実施人数が少なく、業種にも偏りがあるといった課題がある。大学への進学者も、将来の職業を考えて進学することが重要であることを踏まえ、普通科においても、インターンシップやジョブシャドウイング等の体験活動を3年間で計画的に実施するよう指導している。
そのためには、教育委員会として、多くの受入れ事業所を確保することが必要であることから、昨年度からインターンシップや社会人講師の派遣に協力していただける企業を登録する「あいち夢はぐくみサポーター制度」を開設した。現在70社ほどの登録があり、今後も登録数の拡大を図っていく。また、キャリア教育推進会議において、積極的に取り組んでいる普通科高等学校の取組事例を紹介するなどして、普通科におけるインターンシップ等の取組が高まるよう支援していく。
私は今年の夏に議員インターンシップとして3名の大学生を受け入れた。彼らは本当に有名な企業しか知らない。私自身の就職活動期を振り返っても、業界においては一流の企業であっても、テレビCM等がなければ存在すら知らないということがあり、彼らに問題があるとは思わない。いかに早い段階から自分を見つめることや自分の進路に興味を持つきっかけを提供できるか、ぜひともキャリア教育、特に高等学校でのインターンシップ活動をより充実させるよう要望する。
続いて小・中学校における運動部活動について伺う。運動部活動は、クラス活動とは別に集団生活における規律や道徳を学ぶ非常に重要な活動と思うが、最近は保護者から「子どもがやりたい部活動がない」などの意見を聞く。そこで小・中学校における運動部活動への加入状況と、運動部活動についての県教育委員会としての考えを伺う。
【体育スポーツ課長】
年度当初に行っている「学校体育実施状況調査」では、名古屋市を除く小学校の89.1パーセントにおいて、運動部活動を実施している。その加入状況は、男子50.9パーセント、女子37.3パーセントとなっている。また、中学校における加入状況は、愛知県中小学校体育連盟の調べでは、名古屋市と国・私立を除く公立中学校で、男子94.1パーセント、女子68.2パーセントとなっている。
今回の学習指導要領の改訂により、部活動が学校教育の一環として位置付けられた。特に運動部活動については、スポーツに親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感のかん養、お互いに協力し合って友情を深めるといった好ましい人間環境に資するものであり、子どもの体力づくりや心身の成長において教育的意義のあるものと考えている。
現在、小学校では地域の実情に応じた形で運動部活動が実施されているようであるが、県としてある程度統一的な指導ができないのか、県教育委員会の考えを伺う。
【体育スポーツ課長】
小学校での運動部活動については、これまでも学校規模や教員数など各学校の実情や児童の実態及び地域の実情などにより実施されている。例えば、運動部の種目などを決める際には、日頃の活動の成果を発表する場である大会で実施される種目や、地域に根付いている種目をその学校の特色として取り入れる学校がある。また陸上や水泳などの種目については、年間を通して行うのでなく、一定期間に部員を集めて行う学校もある。
小学校は中学校と異なり、登下校での安全面の配慮が必要になることから、部活動を長時間行うことが難しい場合があり、小規模で教員数の少ない学校では、継続的な指導者の確保が難しい状況もある。このように運動部活動が子どもたちのニーズに応えられない小学校があることから、学校や地域の実情などに合わせ、総合型地域スポーツクラブやスポーツ少年団との連携を一層図るなど、より多くの子どもたちがスポーツに親しむことができる環境づくりが必要であると考えている。
県教育委員会としては、県で統一した指導をするよりも、各学校・地域の実情や児童の実態に合わせた活動をしていくことが望ましいと考えている。
運動部活動を充実させることは一方で教員の負担増を招くなどの課題もあると考えるが、運動部活動の充実に向け県教育委員会としてどのように課題を認識しているか、また改善に向けた取組について伺う。
【体育スポーツ課長】
課題としては、まずは運動部活動を指導していく上で、専門でない種目の顧問となる、運動部活動を学生時代に経験したことがないなど、指導に不安を感じている教員の負担を軽減し、指導力を向上させることと認識している。その改善に向けた取組として、部活動指導において教員を支援するために外部指導者の効果的な活用に努めており、平成23年度の学校体育実施状況調査では、名古屋市を除く県内の13.0パーセントの小学校と82.9パーセントの中学校で外部指導者を活用している。県教育委員会としても、文部科学省の委託事業である「運動部活動地域連携再構築事業」により名古屋市を除く県内の公立中学校47校で50名、県立学校25校で25名を配置している。
また、中学校及び県立学校等で運動部を指導している教員のうち、保健体育科教員以外の経験の浅い者を対象に指導力を向上させるための「運動部活動指導者研修会」を実施している。今年度は、5月と8月の2日間、中学校はバスケットボールと剣道の2種目に60人、県立学校はバスケットボール、柔道、テニスの3種目に120人が参加した。
その他の課題としては、少子化による生徒数の減少により、競技種目によってはチーム編成ができずに単独チームでは大会に参加できない状況がある。その状況を改善するために、中学校では近隣の学校と合同で組織し日常の活動を行う複数校合同運動部活動を実施している学校がある。生徒のスポーツに関する多様なニーズに応え参加機会を充実させるためにも、複数校合同運動部活動の実施など柔軟な運営等が必要と考えている。今後も運動部活動の意義を踏まえ、外部指導者の活用を充実させるとともに部活動指導者の指導力向上を図り、教員の負担軽減に努めながら部活動を充実させていきたい。
名古屋市では市内のほぼ全小学校にバスケットボール部、軟式野球部、サッカー部が存在しているのを始め、様々な種目があり運動部活動が盛んである。平成22年度の調査では小学校における参加率が8割を超えているとのことである。運動部活動の充実のために外部指導者もうまく活用しており、中学校では昭和61年から、小学校では平成5年から派遣事業制度を導入し、学校が外部指導者の派遣を依頼する場合は予算の範囲内で対応しているようである。外部指導者の活用については、費用面のみならず人材確保や責任問題等様々な課題もあると思うが、何よりも子どもたちの将来のために県教育委員会として力を注いでもらうよう要望する。