キャリア教育の推進に向けた取組について伺う。昨年9月の定例議会における文教委員会にてキャリア教育の現状について数点質問をしたが、その後、昨年11月の文教委員会の県外調査にて福岡県立城南高等学校を訪問し、キャリア教育への取り組みを伺った中で、キャリア教育推進に向けては、学校の先生方一人ひとりキャリア教育の重要性についての理解度向上が非常に大切であると改めて感じた。また、今般、愛知県産業教育審議会から「高等学校における産業教育等を通した本県産業を担う人材の育成方策(答申)」が公表されたので、その点も踏まえキャリア教育の推進について確認をさせていただく。
始めに、本年1月15日の読売新聞にて「キャリア教育高校必修に 来年度にモデル校選定」という記事が掲載されていたが、このような動きを県教育委員会として把握しているのか。また、これに限らずキャリア教育推進に向けての国の動きをどのように把握しているのか。
【高等学校教育課長】
委員指摘の新聞記事の件については、文部科学省は来年度から普通科5校をモデル校として指定し、生徒が主体的に進路を選択できることを目標とした学校設定科目を設けて研究し、その成果をみて、キャリア教育の高校必修化について検討していくとのことである。その他の国の具体的な動きは今のところないが、平成25年度から実施される高等学校の学習指導要領では、「生徒が自己のあり方、生き方を考え、主体的に進路選択することができるよう、学校の教育活動全体を通じ、計画的、組織的な進路指導を行い、キャリア教育を推進すること」と新たに示されていることから、この学習指導要領に沿った学校経営をしていかなければならないと考えている。
文部科学省が指定する5校とは、愛知県のことか、全国のことか。
【高等学校教育課長】
全国で5校ということである。
県教育委員会が掲げる「キャリア教育」とは何か。先生方にどう説明しているのかについて伺う。一般的に狭い意味で「就職支援のようなもの」と限定されがちであるがその点についてはいかがか。また、前回の質問の際は義務教育課からは「キャリア教育推進の手引き」、「キャリア教育推進DVD」の作成および配布について説明いただいたが、これらはどの程度活用が図られているのか。また、具体的な活用事例があれば紹介いただきたい。
一方、高等学校教育課からは「キャリア教育推進フォーラム」「キャリア教育推進会議」の取り組みを紹介いただいたが、この点についてもう一歩突っ込んで、各学校単位での「キャリア教育推進委員会」といった組織体はあるのか。また、「キャリア教育全体計画」や「年間指導計画」はあるか。先日訪問した城南高校ではこの組織がキャリア教育推進の中心的存在となりキャリア教育計画の担い手となおり、今回の答申においても委員会設置や教育計画作成が求められているので確認する。
【義務教育課主幹(義務教育)】
「キャリア教育」とは「子どもたち一人ひとりの社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てる教育」と定義している。その能力とは、「人間関係をつくる力」「自分の役割を理解する力」「課題に対応する力」「自分の将来を設計する力」などであり、こういったものを身につけさせたいと考えている。
県教育委員会では、一昨年度、校内での研修や授業のために「キャリア教育推進の手引き」をホームページに掲載したのに続き、昨年度は、教員研修用に「キャリア教育推進DVD」を作成し、全小中学校に配布し、「キャリア教育」の啓発に努めている。
本年度実施した調査では、県内の約9割の小・中学校で校内での研修や授業を行うために「キャリア教育推進の手引き」を活用しているとの結果が出た。また、研修向けに作成した「キャリア教育推進DVD」は県内の約8割の小学校で視聴されている。
ある学校では、キャリア教育の校内研修のため、全職員でDVDを視聴し、「キャリア教育」について共通理解を図り、キャリア教育の年間指導計画作成に取り組んだ。研修後には『「キャリア」とは「職業」でなく「生き方全般」とわかった。』とか、『「キャリア教育とは社会で生きていく総合力を育てる教育」だと感じた。』といった教師の感想が聞かれ、キャリア教育に対する意識が高まったことが伺えた。今後も、手引きやDVDを活用した研修を推進するとともに、各学校において教科や特別活動、日常的な係活動や当番活動など、学校教育全体を通して、キャリア教育が推進されるよう市町村教育委員会に働きかけていきたい。
【高等学校教育課長】
県立学校の中には、進路指導部にキャリア教育を推進するプロジェクトチームを設けたり、キャリア教育担当教諭を置いたりして、学校全体のキャリア教育の計画、運営を行っている学校もいくつかある。また、「キャリア教育推進委員会」として独立した組織を設置している学校も数校ある。
学校全体で3年間を通した系統的なキャリア教育を推進していくためには、キャリア教育の全体計画や年間指導計画を作成し、指導の目的を明確にする必要がある。このため、県教育委員会としては来年度、各学校が計画を作成する際の参考資料を示す予定である。
キャリア形成に関する学習やその成果に関する記録を作成するキャリアノートが大変効果的なツールであると感じるが、城南高校でもこの点を確認することが出来たし、今回の答申でも積極的な活用と成果の検証が求められていた。キャリアノートの活用に際して学校現場ごとに濃淡がでていないのか、小学校、中学校、高校との連携はどのようになっているのか伺う。
【義務教育課主幹(義務教育)】
小・中学校では、これまでも学校ごとに独自のワークシートを作成し、児童生徒が学校行事等の体験活動で学んだことを書きとめたり、学期の始めや終わりなどの節目ごとに自分の成長を記録したりして、振り返りに活用してきた。キャリア教育ノートは、これまでの学校ごとの取組を系統化し、小・中・高の12年間を通して、キャリア教育を実践していく手助けとなるように作成した。今のところ、小・中学校とも約80%の学校でキャリア教育ノートを活用している。実際には、学校では、これまで使ってきたものとキャリア教育ノートとを組み合わせ、各学校の実態に合わせて、学校独自のキャリア教育ノートを作成しているので、活用の仕方や活用の頻度等には若干の違いがある。また、キャリア教育ノートの学校間での連携については、本年度よりキャリア教育ノートの使用を始めたところであるので、今後その状況を把握していきたい。キャリア教育は系統的に実践していくことが重要であり、そのためにキャリア教育ノートも作成したところであるので、今後、ノートをより有効に活用していくことで学校間の連携強化に努めてまいりたい。
【高等学校教育課長】
高等学校におけるキャリア教育ノートの活用については、全日制の県立高校146校の内33校、2割強にとどまっている現状である。このため、来年度、県内14地域で実施しているキャリア教育に関する地域推進会議の場で、キャリア教育ノートの活用について協議し、その活用率の向上を図るよう努めてまいりたい。
キャリア教育推進に向けては、現場の負担を把握しフォローしていくことが大切である。受入企業の選定や講師の選定については現場での負担感があるという話も聞くが、こうした実態を県教育委員会としてどのように認識しているのか。例えばキャリア教育担当の先生を配置するといった大胆な取り組みも検討できないものかと考えるが、どのような支援をしているのか。
【高等学校教育課長】
現在、すべての県立高校でインターンシップ等体験的なキャリア教育に取組んでいるが、普通科では、日頃、就職指導等で企業との付き合いがなく受け入れ事業所の確保が大変厳しいと聞いている。人数分の受け入れ先が確保できなかったり、業種に偏りがあったりなどの課題があると認識している。
この課題を解決するため、県教育委員会では、インターンシップ等の受入れや社会人講師の派遣に協力いただける事業所等を「あいち夢はぐくみサポーター」として広く募集をしている。現在、各種メーカーや銀行、大型スーパーなど、264事業所の登録があり来年度は各学校でこれらの事業を活用するよう指導していく。
また委員より提案いただいた担当教員の配置については、標準法に規定のないキャリア教育担当教員を配置することは困難であるが、各地域の拠点校には、キャリア教育の担当として「就職支援事務嘱託員」を配置しており、その地域の学校のキャリア教育を支援していきたい。
25年度実施予定の「第23回全国産業教育フェア愛知大会」は今後キャリア教育の推進を図るうえでひとつの契機になると考えるが、どのように活用するつもりか。
【高等学校教育課長】
今年の11月に開催される全国産業教育フェアは、専門学科等で学ぶ全国の高校が愛知県に集い、研究発表や作品展示、ロボット競技大会、各種コンクール等により生徒同士の交流を深めるとともに、学習成果を広く社会に発信するものである。開催後はその成果を整理したうえで、今後の活用を検討していきたいが、大会のねらいを踏まえると、今回の大会では、地元の小・中学生を参加させる予定となっており、小・中・高等学校の系統性のあるキャリア教育の取組を進めてまいりたい。また、この大会では、商工会議所や経済連合会等の協力を得て実施されることから、地域の産業会からのニーズを十分に把握することができたので、今後はそのニーズを踏まえた人材育成のためのキャリア教育を進めてまいりたい。
今後キャリア教育の重要性が増すことは間違えがないので、より一層の推進をお願いしたい。
次に特別支援学校における児童生徒の安全対策について伺う。
始めに防災対策について、ハード面の対策、すなわち耐震化については実施済と聞いているが、避難訓練を始めとするソフト面の対策についてはどのように図られているのか。また、東日本大震災での対応を鑑み、改善した点があれば併せて伺う。
【特別支援教育課長】
特別支援学校においては、各学校が、幼児児童生徒の障害や地域の実情に合わせた内容・方法で防災訓練や防災教育に取組んでいる。防災訓練としては、避難の方法や経路、避難場所を理解して、安全で速やかに避難できるよう、地震、火災を想定した避難訓練やスクールバス乗車中の非常時対応訓練、地域よっては津波を想定した避難訓練などを年に3回以上行っている。また、寄宿舎を設置している特別支援学校では、寄宿舎における避難訓練も実施している。防災訓練の際には、揺れを体験できる起震車やスモークハウスなどを使った災害体験を行ったり、消防士の方などによる防災に関する講話を行ったりして、幼児児童生徒が災害についてより理解できるよう防災教育に努めている。
東日本大震災後は、すべての学校で避難訓練の取り組み方について見直しや検討を行っており、避難経路を見直したり、地域等の協力について検討したりするなど、東日本大震災での対応を教訓とした防災訓練や防災教育の実施が重要であると考えている。例えば、新たな取組として、災害時の緊急下校訓練として、携帯電話などを使った緊急メール配信を活用して、学校に子どもを迎えに来た保護者に安全に幼児児童生徒を引き渡す訓練を実施したり、巨大津波を想定して、学校に隣接する5階建ての社員寮の上層階を避難場所として提供してもらい、寮の社員と合同で避難訓練を行うようにしたなどの学校の例がある。
避難訓練を始めとするソフト面については、幼児児童生徒の障害や地域の実情も踏まえて適切に対応していくことが大切であると考えている。
次に、現在建設が進められているいなざわ特別支援学校におけるスクールバスの運行計画について伺う。児童生徒の通学経路は保護者の方から見ると大変不安な要素である。ある程度早い段階から保護者への情報提供が必要であると考えるが、児童生徒の円滑かつ安全な通学に向けどのような計画を立てているか。
【特別支援教育課長】
平成26年度開校予定のいなざわ特別支援学校は、稲沢市、清須市、北名古屋市、豊山町及び一宮市の約半分の地域が通区域となっている。現在、この地域に在住している一宮東養護学校と佐織養護学校の児童生徒が通学することとしている。
スクールバスについては、来年度、通学を予定しているすべての児童生徒の居住地やスクールバス乗車希望の有無を確認し、乗車人数や乗車時間等を考慮しながら具体的な運行計画を検討していくことになる。バスのコースや台数については、予算の関係もあり早い段階から確定的なことを申し上げることは困難であるが、来年度になって実施を予定している教育相談や学校説明会等において、バスの運行や通学経路のことなど、新しい学校生活に関わることを説明していく中で、可能な範囲でできる限り早めに、順次情報提供できるよう努めていきたい。
児童生徒が円滑かつ安全に通学できるよう、保護者の要望も踏まえて適切なスクールバスの配置に努めてまいりたいと考えている。
特別支援学校の過大化、老朽化、狭隘化の解消に向けた取り組みについては25年度に策定予定の「特別支援教育推進計画」に盛り込まれることに大きな期待をしていることから、今回はあえて質問しなかった。先の本会議でもこれらの問題について一般質問があったが、私が日頃訪問している春日台養護学校も過大化、老朽化のみならず迷路のような学校配置であり、有事の際の対応など大変心配している。一刻も早い対応をお願いしたい。
次に養護教諭の勤務実態について伺う。いじめ問題を始めとする児童生徒の心のサポート体制の充実については、スクールカウンセラーの設置拡大にて対策を取られているが、一方児童生徒の心身の健康における初動対応という点においては養護教諭の存在も大きいものと考える。養護教諭の役割はどのようになっているか。
【健康学習課主幹(健康学習)】
養護教諭の職務は学校教育法において「児童生徒の養護をつかさどる」と規定され、児童生徒のけがや病気の応急処置をはじめ、保健指導や健康相談など、児童生徒の健康の保持増進を図るためのさまざまな活動を行っている。児童生徒の中には身体の不調を訴えるだけでなく、心の健康問題を抱えている場合もあり、養護教諭はそうした心身の健康問題に対応していく立場にある。また、養護教諭がいる保健室は、いつでも、誰でもどんな理由でも気軽に入れることから、子どものありのままの姿をみることができる場所でもある。養護教諭は子どもたちと関わる中で、児童生徒の心身の健康問題の早期発見に努めており、特別な対応が必要な場合には、学級担任等と情報共有を図りながら、児童生徒の適切な健康管理に努めている。
次に養護教諭の配置について伺う。現在30歳以下の若手教員が多く配置されているという印象を受けるが、配置基準では小学校が児童数850人以下、中学校が生徒数800人以下の学校は一人となる。若手の養護教諭が一人で学校に勤務する職場環境では経験不足による不安感や妊娠時などに負担がかかるのではないかと思うが、どのような対応を取られているか。
【健康学習課主幹(健康学習)】
養護教諭については、「新規採用者」「1年経験者」「5年経験者」「10年経験者」を対象に資質向上のための研修を実施している。実践力を高めることで経験不足による不安の軽減に努めている。研修受講者からは、同じ年代の者が集まることで、養護教諭としての悩みや不安が話し合え、実際の執務の方法等についても情報共有することができ、不安の軽減と共に、がんばろうという気持ちになったという感想も多く聞いている。
特に新規採用者に対しては、退職したベテランの養護教諭から長年の知識と経験をもとにした実践的な研修を学校に直接来ていただいて実施している。また、養護教諭としての実践的能力の向上が望まれることから、来年度からは新たに2年目経験者を対象にした研修も行うこととしている。本県では平成元年度より、養護教諭の中から、経験及び高い資質を持つものを主任養護教諭として選考し、新規採用養護教諭に対する指導をはじめ、地区の養護教諭の職務・研修の充実など、養護教諭の資質向上に向けた役割を担っている。
妊娠した養護教諭の負担軽減措置としては、平成21年度から健康診断業務で多忙となる4月から6月までの期間において、母体保護の観点から非常勤職員の措置をしており、本年度からは、健康診断業務については、準備や事後措置等もあるため、年間を通し必要に応じて非常勤職員が措置できるように改善した。
昨今はいじめ問題がクローズアップされる中、早期発見が大きなカギとなるし、養護教諭の役割も大きいことは明白である。今後とも養護教諭の職場環境の改善に尽力いただきたい。