歳出第7款産業労働費第4項労政費のうち、若年者雇用促進対策費および緊急雇用創出事業基金事業費について伺います。
毎年この時期になると企業への就職内定率が話題となります。まもなく2月1日時点での数値が発表されると思いますが、現時点で公表されている数字では厚生労働、文部科学両省が1月18日に発表した数字として、大学75.0%(これは平成24年12月1日時点の数字で前年同期比3.1ポイント増)となっております。厚生労働省ではこの数値の上昇について、「リーマン・ショック後の採用抑制が底をつくとともに「大企業志向」が薄れて中小企業に目を向ける学生が増えたため」と分析しているそうであります。しかしながら、依然内定を得ていない学生が約11万人に上ると推計され、就職戦線は厳しい様相を呈しております。また、新卒者と中小企業の雇用のミスマッチという問題も長年いわれております。私はこのミスマッチの解消に向けた取り組みこそ、雇用問題の解決策のみならず、中小企業の活性化そして地域の活性化策につながるものと考え、主にこうした観点から順次質問をいたします。
始めに若年者雇用促進対策費について伺います。
株式会社リクルート ワークス研究所の「第29回ワークス大卒求人倍率調査(平成25年3月卒業予定者対象)」によると、従業員規模1000人以上の企業の有効求人倍率は0.73と求職者が圧倒的に多く、就職が困難である一方、1000人未満規模では1.79と逆に欲しい人材が圧倒的に不足しているという状況です。
また、昨年11月には「この春卒業した大学生約56万人について、同じ約56万人分の正社員の求人があったにもかかわらず、約20万人が正社員として就職していなかったことが内閣府の推計でわかった」との新聞報道がありました。
内閣府によると、就職したのは約36万人。一方、就職しなかった約20万人の内訳は、未就職・未進学が9万人、大学院などへの進学が8万人、パート・アルバイトでの就職が2万人、不明が1万人。内閣府は進学した8万人を除く12万人については、中小企業の魅力が学生に伝わっていない部分があるとしております。
なぜ学生は大企業志向になるのでしょう。その理由は大企業特有の安定性や処遇面がある事は否めないものの、そもそもどのような中小企業があるのか学生が知らないことであり、学生に提供すべき情報が決定的に不足していることが挙げられます。
これを裏付けるデータとして岐阜市にあるNPO法人G-netが昨年公表した「岐阜の中小企業と若者の就職白書」を紹介します。なお、後ほどG-netの活動についても触れたいと思います。
G-netが昨年1月、平成24年3月卒業を控えた岐阜県内大学に在学する学生106名を対象にとったアンケート調査によると、89%の学生が就職活動の際に中小企業を視野に入れていると回答したそうです。また、企業を見るうえで大事にしていることについては「仕事内容」「やりがい」「職場の雰囲気」が上位3項目で、「給与」はその次、「企業の規模」「福利厚生」はさらに下位に位置づけられるという意外な結果が現れます。
一方、「就職活動をはじめる際、会社を調べるために利用したツール」についての調査では、ほぼすべての学生が「リクナビ」「マイナビ」といったサイトを利用し、大学への求人情報を参照する学生は20%にも満たなかったそうです。
ここで「リクナビ」「マイナビ」について簡単に紹介します。「リクナビ」は株式会社リクルートが、「マイナビ」は株式会社マイナビ(旧毎日コミュニケーションズ)が提供する学生向けの就職活動ポータルサイトで、就職活動をする学生から見ればいわば「バイブル」。両サイトに掲載されている企業が自分の進むべき企業と考えているといっても過言ではありません。今から約20年前に遡りますが、私の就職活動の際もそうでした。
しかしながら、両サイトに掲載される企業の中で、地元中小企業の掲載件数はごくわずかに限られているのが現状です。
先に紹介した「岐阜の中小企業と若者の就職白書」によると、岐阜県内の企業数約83,000社に対して、両サイトに掲載されている県内に本社を置く企業数はわずか163社。すなわち学生が地元中小企業に出会う接点が限りなく少ないのです。
さらにサイトで企業を検索する際の検索条件は、主に「業種」「勤務地」「従業員数」「売上高」「待遇」などとなっています。多くの企業の中から条件に当てはまらないものを削っていき、自分の進みたい企業を探していくわけですから、この条件で比較するのであれば、大企業に目が行くのは明白です。
すなわち、現在、学生が主に利用しているツールに頼った就職活動をすると、自然と大企業志向になっていくのです。学生が関心を示す信用性の高いあらたな情報ソースが必要ではないかと感じます。
そこで、県内中小企業に関する情報を学生にいかに提供するか。行政としてどのようにサポートするかについて伺います。
質問の1点目は、今年度から開始された「学生に中小企業に目を向けてもらうための取組」について、その概要と実績および課題ならびに25年度に向けた改善点について教えてください。また、若者の就職支援の拠点であるヤング・ジョブ・あいちのホームページやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用するなど、県が主体となって、学生などにより多くの中小企業の情報を提供することが重要であると考えますが、現状と来年度に向けた取り組みについてお伺いします。
さて、繰り返し述べますが、新卒者と中小企業の雇用のミスマッチ問題を解消することは、若者の安定した雇用につながるのみならず、中小企業の活性化そして地域の活性化にもつながります。こうした取り組みを実践するNPO法人G-netに先日訪問してきましたので、活動内容に触れながら次に緊急雇用創出事業基金事業費の活用について伺います。
G-netにおける活動の原点は、代表である秋元祥治氏が学生時代に見た「岐阜市内の経済の衰退化とそれに対する市民の反応」です。岐阜市内の百貨店が衰退し、空き店舗が増える現状を行政や人のせいにしていては何も解決できない。そこで秋元氏は「自分の問題として地域の問題に主体的に取り組み、挑戦する人材を育てること」このことが地域を活性化するカギになると考え、2001年10月に学生団体を立ち上げ、2003年5月NPO法人化を行いました。
主な活動は長期実践型インターンシップコーディネート「ホンキ系インターンシップ」です。
「ホンキ系インターンシップ」では、意欲の高い学生が半年程度の長期にわたり地域に愛される中小企業に弟子入りし、戦力として活躍する。学生が見習いではなく、魅力ある経営者の下で就業経験を得ることを目的としています。受入企業の選定については、将来に対する明確なビジョンと起業家精神を持ち、夢ある若者を応援する、30代から40代の岐阜を中心とした地元企業経営者に厳選しています。受入企業の中には、魅力的な事業を展開していても優秀な人材集めに苦戦している企業も多く、「インターン生を受け入れ、学生の仕事に対する熱心な姿勢や素朴な疑問に向き合う」ことで、業務革新を進め、新規事業を生み出すきっかけが生まれているそうです。G-netが「ホンキ系インターンシップ」を導入した企業に対し「組織変化」と「事業成果」の側面から、導入前後の社内環境の変化についてアンケートをしたところ「業務プロセスが改善された」「社内風土が変化した」と回答した割合が7割近くに上ったそうです。
一方、参加するインターン生は主体的に行動し、自ら設定した課題を解決できる意欲あふれた学生を対象とするとともに、大学側にも積極的に声掛けをする中で、現在では20の大学と連携をしているそうです。
こうした若者の力を活用し、地域を活性化するG-netへの注目は年々高まっています。愛知県においても平成22、23年度にふるさと雇用再生特別基金事業を活用した「地域産業における長期実践型インターンシップコーディネート事業」としてG-netを受託したと聞きました。行政がこうした若い起業家をどんどん育て地域産業の活性化につなげようという試みは大変素晴らしいことです。
平成25年度は新規施策として起業支援型地域雇用創造事業の展開を計画されています。この事業は地域の産業・雇用振興策に沿って、雇用創出に資する事業を民間企業やNPOに事業委託し失業者の雇い入れを行うもので、起業10年以内の企業が対象になると伺っております。一方で、緊急雇用創出事業基金はその継続性が不確実なことから、軌道に乗っていない企業に対して過度な委託をすると基金がなくなった際の雇用が危ぶまれるなど一定の配慮が必要と感じます。もっと言うと、額は少額でもいいのである程度の期間は安定的、継続的に支援することができると望ましいと思いますし、支援する企業に対しては行政として金銭以外にも継続的なフォローが必要ではないかと考えます。
そこで質問の2点目として、起業支援型地域雇用創造事業の特徴と県として留意すべき点についてお伺いします。
質問の3点目は、同じく緊急雇用創出事業基金を活用した若年者雇用対策として、今年度も実施されている未就職卒業者就職支援を、来年度は対象人員を絞って実施されるようですが、より高い効果を得るためにどのような工夫を考えられているのかお伺いします。
最後に、緊急雇用創出事業基金の活用に対する県の思いについてお伺いします。私は昨年度産業労働委員会の場において、平成24年度において延長が決まった当該基金の活用にて「過去3年間の成果と反省を十分に踏まえ、雇用された方が次の就職につながるような効果的な事業の策定」を要望し、労政担当局長からは「当該基金は、厳しい県の財政環境の中において、雇用確保を図る上で虎の子の財源であり、基金に積んだお金の使途については、3年間の経験を踏まえ、産業労働部はもとより、県庁内各部局及び各市町村において適切な使い方を検討するようにしっかり働きかけるとともに、効果的な雇用創出を図っていきたい」と力強い回答をいただいたと記憶しています。そこで、虎の子の財源であった基金をどのように活用できたのか、無理に事業に使ったことはなかったのか、今年度の評価と25年度に向けた思いを改めてお伺いします。
労政担当局長
(若者の雇用対策について)
若者雇用対策についてのお尋ねのうち、先ず、学生に中小企業に目を向けてもらうための取組でございますが、今年度は、新たに就職活動に入る前の学生を対象に2つの事業を実施いたしました。
1つ目は、大学生1日職場体験支援モデル事業です。
これは、中小企業に興味を持ってもらうきっかけ作りとしてモデル的に実施した事業で、体験プログラムの作成や当日の進行などを県が委託した事業者がサポートすることで、受け入れ企業の負担を軽減しながら、仕事現場を学生に体験していただくものであります。
8月~9月には夏休み中の3年生、先月2月には春休み中の2年生を対象に実施し、夏・春合わせて、モノづくり分野を中心に中小企業12社の職場を55人の学生が体験しました。
2つ目は、中小企業経営者と学生との交流会の開催です。
こちらは、業界団体などから推薦いただいた中小企業経営者と公募で集まった学生が膝詰めで交流を行うもので、名古屋駅前のウインクあいちで4回開催し、全体で16人の経営者の方と85人の学生による活発な意見交換が行われました。
いずれの事業も参加した中小企業の関係者、学生から好評でありましたが、これらの事業を更に多くの学生に周知、参加していただくためには、大学と連携を図りながら進めていく必要があります。
そこで、来年度は、大学のキャリアセンター等に積極的な協力を求めながら、1日職場体験については、学生が参加しやすい夏休み期間に集中開催し、また、経営者との交流会については、大学の学内行事に組み込む形での開催を工夫するなど、改善を図り実施してまいりたいと考えております。
次に、「ヤング・ジョブ・あいち」等における学生への中小企業の情報についてのお尋ねです。
「ヤング・ジョブ・あいち」は、名古屋市栄の中日ビル12階に、県と愛知労働局が共同設置した若者向けの就職支援拠点でありますが、そこで取り扱っている求人情報や企業情報は、中小・中堅企業に関するものが大部分を占めております。
個別企業の情報については、今年度から、ヤング・ジョブ・あいち内にある新卒応援ハローワークが、中小・中堅企業など185社に関する情報を「企業PR情報シート」としてとりまとめ、求人情報と共にホームページで発信しているところであります。
来年度においては、国が、若者の採用等に積極的な中小企業等に対し、「若者応援企業」としての宣言を求め、宣言した企業の詳細な情報を学生等へPRする事業を始めます。
ヤング・ジョブ・あいちにおいては、この「若者応援企業」の情報も、ホームページを通じて学生へしっかり発信し、情報提供の拡充を図ってまいりたいと考えております。
(緊急雇用創出事業基金事業について)
次に、緊急雇用創出事業基金事業に関するお尋ねのうち、起業支援型地域雇用創造事業についてであります。
この事業は、先月末の国の補正予算成立に伴い、国の交付金を財源とする緊急雇用創出事業基金事業の中の一つのメニューとして、新たに創設されたもので、現在、県各部局及び市町村からの事業提案を受け付けているところであります。
この事業は、失業者の就職支援に加え、将来的に地域の安定的な雇用の受け皿を創出することも目的としていること、そのため、委託先が、地域に根ざした起業後10年以内の法人等に限定されたこと、委託先で雇用された失業者が委託期間満了後に正社員として継続雇用された場合には、基金から一時金の支給があることなどを大きな特徴としております。
従来の基金事業とは異なる要件が課せられており、要件に合致した事業の立案や委託先の掘り起こしが課題となっております。県といたしましては、こうした点に留意しながら、この事業を適切に活用し、継続的な雇用創出を図ってまいりたいと考えております。
次に、未就職卒業者に対する就職支援事業についてであります。
この事業は、就職が決まらないまま卒業せざるをえない若者たちをできるだけ早期に正規雇用に結びつけるため、平成22年度から、緊急雇用創出事業基金を活用して実施しているものであります。
今回は、国の補正予算による追加交付分が全額、起業支援型を前提としているといった財源上の制約や、新卒者の就職状況が2年連続で若干改善しつつあり、最悪期を脱したものと見込まれることなどを勘案し、120人規模で実施することとしたものであります。
この事業は、これまで、年度当初に事業者と契約し、その後、事業者が未就職卒業者を募集することから、支援開始時期が7月からとなり、卒業後、就職支援までの間に、約3か月の空白期間が生じておりました。今回は、事業者との契約を24~25年度の複数年度契約として、実施時期を前倒しし、2月に契約、3月末から支援開始することで、卒業後、直ちに、切れ目ない支援を実施できるよう工夫したところであります。
最後に、緊急雇用創出事業基金事業全体の評価と来年度に向けた取組についてであります。
基金事業は、もともとリーマンショック以降に発生した失業者に、緊急的・短期的な雇用機会を提供することを目的としておりましたが、雇用情勢が最悪期を脱する中で、国も、基金事業終了後の安定的な雇用につながるという観点からの事業立案を求めるようになってきております。
県といたしましては、こうした国の方針も踏まえ、今年度は、基金事業に従事することで一定の技能・技術が身につく人材育成効果の高い事業、基金事業の経験を活かした再就職が期待される事業が、県各部局・市町村において立案・実施されるよう努めているところであります。それぞれの事業で雇用した失業者の方々の事業終了後の就職状況等につきましては、事業完了後に報告をいただくことになっておりますので、現時点では把握できておりませんが、一定の成果が挙がっているのではないかと考えているところであります。
来年度につきましては、継続雇用を重視した起業支援型が新メニューとして加えられておりますので、これをしっかりと推進し、本県の雇用の安定を図ってまいりたいと考えているところであります。
ご答弁いただきありがとうございました。要望をさせていただきます。
始めに、新卒者と中小企業のミスマッチ解消に向けた取り組みについて、先月、私の地元春日井で行われた「かすがいビジネスフォーラム」における春日井市、春日井商工会議所、中部大学の取り組みを紹介します。このフォーラムは「さらなる飛躍とネットワークづくりの原点」をテーマに尾張地区最大級!見つかる、つながる商工展として、春日井および近郊の優れた技術、製品、サービスなどの紹介、新たなビジネスマッチングの機会創出による産業の地産地消の推進、産学連携創出などを目的としております。今年は130社154ブースの市内外の企業が参加をいただき、大変盛況なフォーラムが開催されましたが、ここに地元中部大学文系学部に在籍する2年生の約8割にあたる555名が就職活動への第一歩として参加をしました。
今回の取り組みは企業側の「学生が地元企業に勤めてほしい」というニーズと大学側の「学生に企業と仕事のイメージ作りや地域の企業に触れ合うことで地域の特性を理解させたい」という考えが合致して行われたものでした。学生は事前の「ワークショップ」にて準備をしっかり行っており、各ブースでは熱心に質問をするとともに企業担当者の説明に聞き入っていました。また、中部大学は県の産業労働部とも連携し、愛知ブランド企業による「ものづくり講座」を参加学生全員が聴講しました。
学生にとっては、将来の職業選択および就職活動の大きな指針となったようですし、学生の熱心な態度と雰囲気は参加企業側にも大いに刺激になった模様です。さらにフォーラム全体も例年以上に盛り上がりを見せたことから、春日井市としても評価をしているとのことでした。
学生のレポートも少し拝見させていただいたところ、これまでの中小企業のイメージが「下請け、受注したものを製造しているだけ、世間的には活躍できない」といったものから「独自の技法を使い優れている、世界的に進出している、中小企業が不安定とは限らない」へと、実際の目で見、話を聞き、製品に触れることで印象が大きく変わったことが伺えます。
情報が溢れかえる現代社会において、雇用のミスマッチ解消に向けては、直接顔を合わせる場を形成することが非常に大切であると感じます。リアルな生情報は、企業、学生とも真に必要な情報の共有ができ、お互い満足できる就職活動、採用活動が行われると思います。
そこで、愛知県という信用力を生かした情報サイトの活用。しかも学生が関心を持てるような企業紹介を行い、そこから直接顔を合わせる場につなげていただきたいと思います。ヤング・ジョブ・あいちのFacebookを拝見しますと、先ほどの時点で「いいね」を押している件数が122件。もっともっと増やしていただきたいと思います。さらに言えば、産・官・学が協力して学生の背中を強く押すくらいの姿勢で臨まないといけません。費用と労力がかかる手法となるだけに、是非とも行政にはより積極的に関わっていただくことを要望します。
次に緊急雇用創出事業基金の25年度の目玉となる起業支援型地域雇用創出事業について、その趣旨には大いにうなずけるものの、実際に委託する業務の発掘や採択方法を考えると、従来と比べ「かなりハードルが上がったな」という印象を持ちます。実務レベルで混乱をきたすことはないでしょうか。関係者からは、「年度末近くに急遽募集があったことから、十分な検討ができていない。使い勝手があまりよくないのではないか。」といった声も聞こえます。それこそ無理やり使う事業が出てこないかという不安があるのは私だけでしょうか。緊急雇用創出事業基金事業は、国からの交付金による事業ではありますが、言うまでもなく元をただせば国民のみなさまが納めていただいた血税です。主幹部署として、県庁内各部局及び各市町村と連携をとって虎の子の財源を有効に活用していただくことを要望して質問を終了します。