環境学習副読本「わたしたちと環境」について伺う。環境学習副読本はどのような位置づけで、どのように利用され、どの程度利用されているのか。
環境活動推進課
環境学習副読本「わたしたちと環境」は、学校における環境学習を推進するため、平成4年度から小学校高学年向けに作成している学習教材である。
この副読本は毎年度小学校に配付しているが、平成26年度版の副読本を、本年5月に名古屋市立を除く全ての小学校、742校の小学4年生全員、約52,000人に配付するとともに、名古屋市立小学校へは、先生用に各1冊配付している。
利用状況については、昨年度、環境学習副読本を配付した名古屋市立を除く小学校へアンケートを行ったところ、その結果によると、79%の小学校で、総合学習の時間や社会科、あるいは理科などの授業で利用されている。
名古屋市内は学校に1冊しか配付していないとのことであるが、その理由は何か。
環境活動推進課
名古屋市立小学校へは、名古屋市が独自に環境学習副読本「ごみと資源とわたしたち」を作成し、小学校4年生に配付している。このため、平成24年度まで県の環境学習副読本は配付していなかったが、名古屋市と調整を行い、平成25年度から先生の参考用として、県の環境学習副読本を各名古屋市立小学校へ1冊配付している。
全面リニューアルをしたとのことだが、全面リニューアルはいつ以来で、なぜこのタイミングで行ったのか。
環境活動推進課
今回の全面リニューアルは、平成12年度以来の2回目である。
リニューアルの理由は、環境教育が充実・強化が盛り込まれた小学校学習指導要領が平成23年度に施行されたこと、また、小学校に対して環境学習副読本に関するアンケートを行ったところ、副読本の文章・言葉が難しいとの回答が見られたことから、より学校の先生方に使っていただける副読本にするため、今回全面リニューアルを行った。
今回の主な改正点とその理由は何か。
環境活動推進課
今回のリニューアルに当たっては、小学校へのアンケート調査や、小学校の先生方へのヒアリングを行ったが、その中で、環境学習副読本の構成が良いとの評価がある一方で、小学4年生には難しい表現が多い、あるいは地域に密着した内容や児童が考えられるような問いかけがあると良い、学びのガイドがあると先生が指導しやすい、といった御意見をいただいた。
こうした意見を踏まえ、環境学習副読本の基本的な構成は変えていないが、主に6点ほど見直しを行った。
1点目は、文章や言葉を、小学4年生でもわかりすいものに全面的に見直した。
2点目は、尾張から三河まで各地域の写真を載せたり、クイズをより多く載せたりして、子どもたちの興味をより引くものにした。
3点目は、子どもたち自身が考えたことを書き込める「ワークシート」を新たに挿入した。
4点目は、本の大きさを従来のB5版サイズから教科書と同じ大きさ、縦はB5サイズで横はA4サイズの大きさに変更し、教科書と一緒に持ち運べるようにした。
5点目は、学校の先生により効果的に使用していただくため、教師向けのガイドブックを作成した。
6点目は、環境学習副読本とガイドブックを県のホームページで閲覧できるようにし、多くの方が利用できるようにした。
今回のリニューアルに当たっては、教育委員会とどのような連携をとったのか。
環境活動推進課
今回のリニューアルに当たっては、教育委員会の指導主事や、実際に小学校で教えてみえる学校の先生方をメンバーとする検討会を設けて検討作業を行った。
この検討会の中で教育委員会や小学校の先生方の意見・指導を踏まえて、環境学習副読本や教師向けガイドブックを作成した。また、作成した副読本・ガイドブックの学校への配付や学校の先生方への周知についても県の教育委員会を通じて行っている。
リニューアルの評価は今後どのように行うのか。
環境活動推進課
環境学習副読本は学校で使用する教材であるので、学校で教えてみえる先生方にリニューアルの検討に加わっていただいたが、この先生方からは、「大変良いものができた」と高い評価をいただいている。
また、現在、小学校に対し、環境学習副読本の利用状況や使いやすさなどの点についてアンケートを行っているので、今後、その集計を行う。
最近の環境問題の解決に当たっては、一人ひとりの環境に関する意識を高めることが必要であり、その点において小学校における環境学習は非常に重要であると考えている。
引き続き、先生方や教育委員会と連携を図りながら、環境学習副読本を、小学校における環境学習に活用していただけるよう努める。
副読本を作成・配付して環境学習を進めることは、ESDの人づくりにもつながり、非常に意義のあることである。一つ残念なことは、名古屋市に配付していないことである。名古屋市と協議したとのことであるが、名古屋市の副読本は「ごみと資源とわたしたち」でごみに関することのみである。愛知県が作成している副読本はごみだけでなく、自然環境、水、空気、地球温暖化など環境全般にわたっている。愛知・名古屋で一体となって愛知県全体の子どもたちの環境学習を推進していただきたい。このため、名古屋市と更なる連携をとっていただきたい。
また、現在アンケートを取っているとのことだが、先生方により詳細な聞き取りをして、より良い副読本を作成してほしい。
続いて、損害賠償請求訴訟について伺います。平成25年度12月議会と2月議会の委員会で質問しましたが、春日井市の産業廃棄物焼却施設の設置許可を取り消された事業者、名成産業株式会社が、県に対し損害賠償請求訴訟がされていますが、この件について伺います。
前回伺った3月13日の委員会では判決の直後ということで、十分な検討をするのも難しかったと思います。そこで、3か月たった今の裁判の状況や対応について伺います。
はじめに、本年3月13日に、本県一部敗訴の判決があった損害賠償請求訴訟の概要について、改めてお聞きします。
資源循環推進課
この訴訟は、事業者が春日井市松河戸町に計画し、廃棄物処理法に基づく設置許可を受けた産業廃棄物焼却施設について、県が平成22年2月に改善命令に違反したとして設置許可の取消処分をしたところ、その取消処分は違法であるとして、同年12月に国家賠償法に基づき、本県を被告に、違法な許可取消によって被った損害として、逸失利益等約16億7,300万円及びその遅延損害金の支払いなどを求めて提訴したものであります。
産業廃棄物焼却施設の設置許可申請から1審判決までの経過の概要を説明しますと、当該事業者は、平成13年5月に産業廃棄物焼却施設の設置許可申請を県に行いました。
これを受けて、許可にあたって、県は、専門家で構成する廃棄物処理施設審査会議において、生活環境保全上の見地からの意見を聴取しました。この焼却施設は、全国でも例がほとんどない特殊な方式であることから、約3年かけ審査会議で慎重に審査が行われました。県は、審査会議の意見を踏まえ、最終的には平成16年4月に許可しました。
平成19年10月に施設が完成し、そこで、県は、原告が実施する試運転時に、適切な維持管理や運転管理の状況を確認するために行政検査を2回行いました。検査の結果は、2回とも、事業者が自ら作成した維持管理計画に定めた数値の超過が確認されました。県はこれに対してその都度、計画値を遵守するために必要な改善対策を講じるよう改善命令を行いました。
そして、2回目の改善命令に係る改善状況を確認するため、3回目の行政検査を行ったところ、維持管理計画値のうち臭気指数と熱しゃく減量の2項目の超過が確認されましたので、廃棄物処理法に定める取消事由である改善命令に違反するとして、設置許可の取消処分を行いました。
裁判では、原告は、取消処分の理由となった県の2回目の改善命令、改善命令の根拠となった行政検査など、県が許可取消に至るまでに行った様々な行政指導や手続きについて、違法又は瑕疵があると主張し、これに対して県は、これらの手続きは、廃棄物処理法等に従って適切に行ったと主張し、弁論や証拠の提出、証言によってできる限りの主張、立証を行ったところであります。
裁判は、提訴以後、18回もの口頭弁論が行われ、約3年後に結審し、名古屋地方裁判所において平成26年3月13日に一部敗訴の判決が言い渡されました。
判決結果は、取消処分は違法であるとして、その取消処分による損害を認め、県に対して12億2974万7391円及びこれに対する平成22年12月24日から支払うまでの年5分の利息を支払えという大変厳しいものでありました。
3月13日の判決以降の進捗状況はどうなっていますか。
資源循環推進課
本年3月13日の1審判決の一部敗訴を受け、その内容が廃棄物行政に与える影響は大きく、とても容認できるものではないため、控訴の提起についての議案等を提出させていただき、3月25日に議決をいただいたので、3月26日に、「原判決中、控訴人すなわち被告県の敗訴部分を取り消す」、「被控訴人すなわち原告の請求を棄却する」ことを求めて名古屋高等裁判所に控訴しました。
なお、原告においても、3月27日に原判決で損害が認められなかった部分等について、控訴の手続きがとられました。
その後、5月15日に控訴理由書を名古屋高等裁判所に提出し、6月25日に第1回の口頭弁論が行われ、次回の口頭弁論は9月10日に行われる予定となっています。
控訴審では、どのような対応をとっていかれますか。
資源循環推進課
1審判決では、裁判所は、施設許可の取消処分を違法とした主な理由として2つのことを判示しています。
一つ目の理由は、2回目の行政検査結果の信頼性についてであります。
すなわち、「2回目の行政検査における一酸化炭素濃度、敷地境界の騒音値及び臭気指数は、いずれも適正な方法によって測定、算出されたものということはできないことから、これらの測定値が維持管理計画値等を超過したことを理由として、出された改善命令2回目は、その前提となる重要な事実の基礎を欠いている。」と認定されました。
二つ目の理由は、2回目の改善命令の適法性についてであります。
すなわち「改善命令2回目は、行政検査2回目の結果において、数値を超過した3目以外の項目についても、技術基準及び本件維持管理計画に適合しないおそれがあることを処分理由とするものであるが、廃棄物処理法は、産業廃棄物処理施設の構造等が同法の定める技術基準又は許可申請書に記載した維持管理計画等に適合しないと認めるときに改善命令を行うことができるとしているのであって、これらに適合しないおそれがあるというだけでは、廃棄物処理法で定めた処分要件を満たすものでないことは明らかである。」という認定がされました。
こうした原審の判決に対して、例えば行政検査については、実際の測定を行った記録を書証として追加提出するなど、行政検査結果が適正な方法によって測定、算出されたものということを立証し、原審の判断が誤っていることを主張していくこととしています。
また、改善命令についても、環境省にも法解釈等の確認をしながら廃棄物処理法等に従って適法に行ったものと考えていることから、改善命令の発出要件について原審の法令解釈の誤りを主張、立証していくこととしています。
控訴審においては、これらの点も含め弁論や証拠の提出、証言によってできる限りの主張、立証を尽くしたいと考えています。
私も今回の判決文の全部に目を通しました。正直、行政検査の過程において初歩的なミスや疑いを招くおそれがある手続きがあったと感じられることは残念であります。
ただ、県の今回の処分に関して、私は正当性があると思っており、また、今後の環境行政を考える上でも、このことは絶対に明確に示さなければなりません。
さらに、今回の損害賠償額12億2900万余円は極めて大きな額であります。前回も環境部長に伺いましたが、改めて今後に向けての意気込みを聞かせてほしい。
環境部長
今回の裁判で一番の問題は、私どもの行った行政検査そのものが恣意的に行われたのではないかという原告側の主張がほぼそのまま判断されたという点であります。
環境行政は、すべてデータに基づいて、客観的、科学的に正確なデータに基づいて行うということであり、その元となる検査そのものの適正さが疑われたということは、私どもとしては到底容認できることではありません。私どもとしてはしっかりと法律に基づき適正に行ったものであると控訴審において主張していきたいと思っています。
今後も、環境行政を進めるにあたっては、県民の皆様の信頼を引き続き得られるように職員一丸となって、データの信頼性等について徹底してまいりたい。