私は、歳出第6款健康福祉費 第1項健康福祉総務費 地域包括ケア推進費および歳出第7款産業労働費 第3項労政費 障害者雇用促進対策費について伺います。
始めに、地域包括ケア推進費のうち「団地を中心にした地域包括ケアの検討」について伺います。私はこの項目を耳にしたとき、今、高蔵寺ニュータウンで行なわれている取組を真っ先に連想しました。私の在住する高蔵寺ニュータウンは、東京の多摩ニュータウン、大阪の千里ニュータウンと並ぶ日本の3大ニュータウンと呼ばれ、高度経済成長期、農村から都市に流入する膨大な人口の受け皿として、国家的戦略のもと、住宅のみではなく、老若男女がそこで生活することを念頭に、学校、図書館、病院、各種購買施設やサービス店、等々の「住宅地施設」を備えた計画的な「まち」としてつくられました。昭和43年の入居開始から46年が経過し、人口は平成7年の52,000人をピークに減少の一途をたどり現在では45,000人、高齢化率も平成20年に春日井市全体を上回るとその勢いは加速し、現在では29.1%、地域によっては40%を超え、地域の核となる住宅都市整備公団(以下UR)の団地の空室率も20%に達しています。このまま放置していては「まちの衰退」が加速度的に進行しかねません。
その一方で、道路などの計画的に整備された良好なインフラに加え、高齢者の生活などをサポートする市民団体の活動が盛んに行われているなど、魅力的な資源が存在しています。今ならば、まちの再生が可能です。
こうした状況の中、大学、行政、URなどがそれぞれの立場で「まちの再生」に向け、動き始めています。例えば、地元の中部大学では学生とシニア世代との交流という点から、高齢者宅に学生がホームステイをする試みが行われています。体験した学生からは「高齢の方の生活に触れ、自分が知らなかったさまざまなことを吸収できた」との声もあがり、学生側からは「実践的な学び」、高齢者側からは「安心感」が得られるとともに、地域の防災・防犯面でのメリットがあると期待されています。さらに高蔵寺ニュータウンの空き家を学生寮として活用し、中部大生と高齢者が身近に暮らすまちづくりも検討されているそうです。
春日井市もここ1、2年、高蔵寺ニュータウンへの対策に力を入れています。昨年はURと「高蔵寺ニュータウンに関するまちづくり支援に係る覚書」を締結しました。その目的は、高蔵寺ニュータウンにおける高齢化、人口減少等への諸課題への対応及び新たな価値創造に向けた取組を行うことによる、高蔵寺ニュータウンの持続的な発展です。
さらに、昨年暮れには「いつまでも安心して快適に住むことができるまち」であり続けるべく、高蔵寺ニュータウンの未来プラン(仮称 高蔵寺リ・ニュータウン計画)を策定することが春日井市から公表され、高齢になっても元気に暮らせるスマートウェルネスタウンを目指した団地の再生も検討される予定です。
このように、高蔵寺ニュータウンで動きつつある取組と「団地を中心にした地域包括ケアの検討」は合致するのではないかと感じます。
そこで伺います。始めに、県は団地モデルの検討を行うとのことでありますが、新たなモデルを検討することにした考え方をお伺いします。次に、どのような形で検討を進めていくおつもりか、お伺いします。最後に、県としては団地モデルの目指すべき姿はどのようなものを想定しているのか、お伺いします。
続いて、障害者雇用について伺います。平成26年6月時点での愛知県の民間企業の雇用状況は26,243.5人(前年比1177.5人増 4.7%増)で過去最高となりました。その一方で実雇用率は1.74%と「障害者の雇用の促進等に関する法律」(以下、障害者雇用促進法)に定める法定雇用率(2.0%)に届かないどころか全国平均の1.82%にも届かず、法定雇用率未達成企業も59.1%という状況でした。
障害者雇用促進法は「障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、職業リハビリテーションの措置等を通じて、障害者の職業の安定を図ること」を目的として度々改正がなされ、平成25年4月に法定雇用率が1.8%から2.0%に引き上げられたことは、まだ記憶に新しいところです。こうしたなか、平成30年4月からは法定雇用率の算定基礎に精神障害者が加わる、すなわち精神障害者の雇用が義務化されます。障害者支援がより進んだ形になる一方で、企業においては精神障害者の雇用に関心があるものの、障害特性等に関する知識が不足しているため、採用にためらう企業が多いという現実もあります。先ほど紹介した26,243.5人の内訳を見ると、身体障害者が73.7%、知的障害者20.4%であるのに対し、精神障害者は5.9%と大きく差が開いており、今後、どのような形で精神障害者の雇用を実現していけばよいのか。課題は山積しております。
ここで、こうした法改正の動きに合わせ、平成25年5月より発達障害者の雇用を開始した企業の取組を例に質問をさせて頂きます。
手探り状態から始めることになったこの企業では、まず業務の選定を検討しました。障害の特性を鑑み、①定例的に発生し、計画的にスケジュールできる業務、②緊急性が少なくリードタイムが見込める業務、③調整が不要で判断要素の少ない業務という三つの視点から業務を洗い出し、社内にある書類整理やインプット業務といった「恒常的に発生する業務をサポート」するビジネスサポートチームを結成し、3名の障害者に従事してもらうことにしました。勤務時間は9時から16時のパート勤務。業務遂行の状況や都度発生する課題への対応を確認しながら少しずつ業務量を増やし、発足から約2年が経過した現在では7名の発達障害者を雇用しています。ここに、障害者の業務管理として2名の健常者社員、この社員2名の心のケアを含む全体管理として管理職を配置し、ビジネスサポートチームが運営されています。特筆すべきはこの間、会社を辞められた障害者が1人もいない上に、この4月からはフルタイム雇用での正社員になるということで、みなさん大変に喜んでいるとのことです。
この会社に、発達障害者をケアする専門家がいるわけではありません。発足当時は素人同然の社員が、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が設置する「愛知障害者職業センター」からの助言を適宜受け、ノウハウやスキルを高めていったそうです。
例えば
・業務指導では、量より質を求めるよう「正確に、丁寧に、親切に」をモットーに指導。
・言葉だけの指示や抽象的な指示を避けるため、また各自が自主的に業務を遂行できるよう「業務処 理手順書」「タイムスケジュール表」「業務優先順位表」など、あらゆるものを可視化。
・「持続力の課題」に配慮するため、1時間に1回の休憩を付与するとともに、いつでも落ち着いて 心身のリフレッシュを図れるような「休憩コーナー」を設置。
・日々の「業務日誌」にて「悩み・問題点・体調面」などを把握し、状況に応じたフォローや個人面 談を実施。などなど。
こうした運営を行うことで各人の業務スキルは確実に向上し、ビジネスサポートチームの発足による社内効果として、他部署の時間外削減、業務効率化などに寄与しているそうです。そして、何より「健常者の社員が障害者への理解が深まった、心のバリアフリーができた」ことが最大の成果であると語った管理職のまなざしが本当に印象的でした。
しかし、一言で発達障害といっても、7名個々人の特性は全く異なるため、管理する一般社員も細心の注意を払いながら業務を行っており、この方々への心のケアも含め、今後の安定的な業務運営を考えるとやはり精神保健福祉士を始めとした専門知識、技能をもった人材の支援が必要であると感じているそうです。資金面における行政の支援も求められるところでしょうし、また情報の不足、特に同様の悩みを抱えるであろう、他企業との横の連携も含め、セミナー等の積極的な開催が求められるところです。
そこで質問です。平成30年の精神障害者の雇用の義務化に向け、現状や課題を踏まえ、県としてこれまでどのような対策を行い、その成果は上がっているのか。また、平成27年度にはどのような取り組みを行っていくのか、お伺いします。
健康福祉部長
団地を中心にした地域包括ケアの推進についてお答えいたします。
まず、新たなモデルを検討することとした考え方についてであります。
本県では、今後、急速に増加する高齢者が地域で安心して生活できるよう、地域包括ケアシステムを構築するためのモデル事業を、今年度から実施しております。
モデル事業では、市が原則、中学校区を単位とする特定の地域を事業の対象地域と定め、地区医師会を始め地域の関係者とともに、「地区医師会モデル」や「訪問看護ステーションモデル」など4つのタイプのいずれかで、システム構築に取り組んでいただいているところであります。
一方、昭和40年代ころから供給が始まった郊外の大規模団地におきましては、開発時期に入居した方々が一斉に高齢化し、単身高齢者や高齢の夫婦のみの世帯も多く、孤立化などの問題もより顕著に現れており、現在、実施しているモデル事業とは異なったアプローチが求められております。
このため、住まいのあり方やまちづくりにも重点を置いた、新たな団地モデルが必要と考えているところでございます。
次に、どのような形で検討を進めていくかについてであります。
新たなモデルの検討に当たりましては、予算成立後、県におきまして対象とする団地を選定した上で、モデルづくりのための検討会議を設置してまいりたいと考えております。
検討会議の構成員といたしましては、県医師会や介護事業者などの医療、介護サービス関係者のほか、住宅やまちづくりなどを専門とする学識経験者や、地元自治体や自治会など地域の関係者にも加わっていただき、地域の実情も踏まえた検討を行ってまいりたいと考えております。
検討会議では、現在実施しておりますモデル事業の成果等も参考にしながら、団地モデルの全体像や関係者の具体的役割、今後の取組などをとりまとめていく予定としております。
最後に、県で想定しております、団地モデルの目指すべき姿についてお答えします。
団地モデルでは、団地居住者に集中している単身の高齢者や高齢の夫婦のみの世帯の方々が安心して暮らし続けることができるよう、効率的で質の高い医療、介護、予防、生活支援を提供する仕組みを構築してまいりたいと考えております。
具体的には、介護等支援が必要になった高齢者の住まいを確保するため、例えば民間活力を活用してサービス付き高齢者住宅などを整備するとともに、医療・看護・介護のサービス提供事業所などを併設して、24時間対応型の在宅医療・介護を支援する拠点を設けることも必要ではないかと考えております。
また、多世代が交流できる場を確保し、元気な高齢者に生活支援などの支え手として活躍いただくなど、支え合いの「まちづくり」の視点も重要であります。
いずれにいたしましても、今後、検討会議の場におきまして、さまざまな観点から御議論いただき、他の地域の参考になるようなモデルをつくってまいりたいと考えております。
労政局長
精神障害者の雇用の義務化に向けた現状や課題の認識及び県が実施する施策についてのお尋ねをいただきました。
平成25年度の県内ハローワークにおける障害者の就職人数は、全国2位の4,980人であり、特に精神障害者の就職人数は
2,115人、対前年比34.5%増と大きく増加しており、雇用している企業は徐々に増えてきております。
しかしながら、企業においては、精神障害者の特性や業務の選定等の雇用管理に関するノウハウが不足しているため、まだまだ手探り状態で取り組まれており、採用をためらう企業も依然として多く見られます。
一方、精神障害者の方は、仕事に対する不安を抱える人も多く見られることから、企業情報等を分かりやすく提供し、就労イメージを明確にすることが重要であり、雇用を促進するためには企業・障害者双方に対する取組が必要であると認識しております。
そこで、今年度は、障害者雇用を検討している企業と求職中の精神・発達障害者双方を支援し、就職に繋げる「精神・発達障害者雇用促進プロジェクト事業」を実施しております。
この事業では、企業の人事担当者を対象に障害特性について理解を深めていただくため、先進的雇用事例や就労支援機関の紹介を内容とするセミナーを12回開催するとともに、精神・発達障害者との意見交換の場も設けました。
また、企業への就職を目指す精神・発達障害者の方々に対しましては、企業が求める社会人としてのルールやマナー等を身につけていただくためのセミナーを開催し、併せて「できること」、「できないこと」、「配慮して欲しいこと」等をまとめた就労支援ブックを作成しております。
さらに、企業の要請により就労支援の専門家を派遣し、業務の選定や職場での必要な配慮等のアドバイスも行っております。
今年度事業の成果としては、企業向けセミナーには138社、障害者向けセミナーには80人の方が受講され、20人の方の就職が決定したところであります。
27年度につきましては、今年度の事業内容に加え、精神障害者の方々の就職をきめ細かく支援するため、愛知労働局と連携し、新たに合同面接会を5回開催する予定にしております。
このような取組により、平成30年の精神障害者の雇用義務化に向けて、企業の理解促進や、働きやすい職場環境作りを支援してまいります。