私からは歳出第9款建設費第1項建設管理費のうち「建設業担い手確保育成推進費」について伺います。
地域社会を担う基幹産業である建設業は、現在、建設投資額の減少に伴う就業者の減少と高齢化という深刻な問題に直面しています。
具体的な数字で表しますと、建設投資額は平成4年の84兆円から平成26年は48兆円に、(建設業就業者数は平成9年の685万人から平成26年では505万人に減少しています。)愛知県における建設業就業者数は、平成14年の34万人から平成26年には27万人に減少しています。
特に若者の建設業離れが目立ち始めており、建設業の年代別就業割合は55歳以上が34.3%と全産業平均よりも約6ポイント高くなっている一方で、29歳以下が10.7%と全産業平均よりも約6ポイント低くなっており、次世代への技術継承が大きな課題となっています。
さらに、他産業に比べて離職率も高い実態にあります。平成27年の愛知労働局の調査によりますと、高校卒業後3年目までの離職率が全産業平均30%に対し、建設業では45%と高く、若年層への魅力発信と離職防止が喫緊の課題となっています。
要因としていくつか挙げられるなかで、まずは何と言っても処遇です。「きつくて危険な仕事」というイメージが強い建設業において、かつては他業種よりも高い賃金が魅力となり、若年労働者を繋ぎとめる役割を果たしていました。しかし、建設投資が減り続け、各社が生き残りのために受注価格を下げざるをえない環境が生まれてしまった結果、そのしわ寄せは下請け企業を直撃し、末端で働く方々の処遇がさらに悪化してしまいました。技能労働者の年間給与は大幅に減少し、平成9年に平均で約438万円あった年間給与額は、平成21年には約357万円にまで落ち込んでいます。
また、入職経路の整備があまり行われていない点も挙げられます。下請けでは多くの職人が活躍しておりますが、他業種と比べた場合、どのようにして職人になるのか、どうやってキャリアアップしていくのかといった部分が見えづらいと言われます。
さらに、他業種と比較した場合に女性の活用が上手く行えていない建設業界の実態も指摘されています。就業者全体に占める女性の割合は14%で、製造業の30%や販売・小売業の51%と比べると、その少なさは明白です。
建設業は、私たちの生活と経済活動の基盤である社会資本の整備や維持管理といった経済の発展への貢献はもとより、地域にとっての地元業者は災害時における緊急対応や復旧活動といった住民の安全・安心の確保に欠かすことの出来ない存在であります。
実際、私の地元、春日井市においても平成23年9月、台風15号により市内を流れる八田川、地蔵川の越水、内津川の堤防斜面崩落、高座山での土砂崩れ等、複数個所で同時に復旧対応が求められる緊急事態が発生しました。この際、市・県の職員、自衛隊による懸命な土のう積みに加わって頂いたのが地元の建設業者でした。市が用意する土のうだけでは足りない中での地元業者による土のうの提供と作業協力、そして急斜面での作業における建設業者の豊富な知識、経験による陣頭指揮があったからこそ、被害の拡大が防げたといっても過言ではありません。
もちろん、平時から防災訓練等への協力や有事に備えた体制整備など市民における期待は非常に大きいことも付け加えておきます。
建設業の課題の解決に向け、国では平成26年6月、「担い手3法」と呼ばれる、公共工事に関連する3つの法律「公共工事品質確保促進法(以下、品確法)」、「公共工事入札契約適正化促進法(以下、入契法)」、「建設業法」が同時に改正されました。主な改正点は、品確法においては「担い手の中長期的な育成・確保のための適正な利潤が確保できるよう、市場における労務、資材等の取引価格、施工の実態等を的確に反映した予定価格の適正な設定」、入契法においては「ダンピング防止を入札契約適正化の柱に追加」、建設業法においては「建設業者、建設業者団体、国土交通大臣による担い手の育成・確保の責務」等となっています。 このように、建設産業の再生への目標が示され、発注者及び受注者の双方に担い手確保・育成の責務が明記されたことに加え、国土交通省が設置した「建設産業活性化会議」においては、総合的な人材確保・育成対策の推進が取りまとめられました。
こうした流れを受け、建設業担い手確保に関する各種取組を他県も展開し始めているなか、本県としても魅力ある施策の展開が求められるところです。
本県においては、今議会に公契約条例案の提出がなされました。条例案では取引の実例価格を踏まえた適正な予定価格の算定や低入札対策を実施するとともに、都道府県では初の取組となる、事業者からの労働条件や安全衛生等も含む労働関係法令の順守状況等について報告を求める内容となっており、地域経済を担う事業者の経営の安定と、労働者が安心して働ける環境の整備に大いに期待が持たれるところです。
ぜひ、最大の課題である労働者の処遇改善を図るとともに、若年労働者にキャリアアップがイメージできる環境、そして女性が活躍できる環境の整備にもつなげていただきたいと思います。
そこで、お尋ねいたします。平成28年度に新たに取り組む「建設業担い手確保育成推進事業」について、その目的、内容を伺います。
(建設部長)
建設業担い手確保育成推進事業についてであります。
まず、事業の目的であります。
本県では、昨年10月に策定した「愛知県まち・ひと・しごと創生総合戦略」に建設業の新たな担い手の確保を図ることを位置づけております。このため、本事業は、社会インフラの整備や維持管理、災害時における復旧復興を担う地元建設業への技術者・技能労働者の入職・定着の促進を図ることを目的に実施いたします。
次に、事業内容についてであります。
建設業は入職から3年間の離職率が他産業に比べて高いことから、入職後3年未満の技術者・技能労働者を対象に、研修機関を活用した「建設業の基礎的な技術・技能を修得する研修」、「施工管理技士などの資格取得に向けた研修」、並びに熟練の専門技能労働者を講師として招く「鉄筋工や型枠工などの専門技能研修」を実施することとしております。さらに、日常業務において若年労働者を指導・教育する育成者の養成研修も実施いたします。
このような取組により、若年労働者の知識・技術力の向上を図ることで、地元建設業への定着を促進してまいりたいと考えております。
また、新たな担い手を確保するため、建設業への入職に関心を持つ学生とその保護者や先生を対象に「建設現場見学会」や「意見交換会」を開催し、建設業の魅力、やりがいなどを家庭や教育の場に発信するなど、新規雇用に向けた取組も実施してまいります。
あわせて、これらの取組の成果を、新たな担い手確保に向けたマニュアルとしてとりまとめ、建設業にかかわる関係者全体で共有するなど、地元建設業の人材が着実に確保・育成されるよう努めてまいります。
ご答弁頂きありがとうございました。要望させていただきます。
報道によりますと、地方創生の実現に向けて全都道府県が3月までに策定する「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では愛知県を含む27府県が、地元建設業の担い手確保・育成策を盛り込んでいるそうです。
例えば、山形県では今年度から、県内企業で正社員として働く39歳以下の若手とすべての女性を対象に、コンクリートミキサー車など大型車両の運転免許取得にかかる費用を1人当たり最大8万円補助する事業を展開し、また、和歌山県では県が発注する建設工事で県内業者が受注する割合(件数ベース)を98%とする高い目標を設定し、併せて、主任技術者に占める若手・女性の割合を19年度までに現在の10%から15%へと引き上げるため、建設業関連学科の新卒者や女性の雇用を入札参加資格審査で加点評価する取り組みを進めることを打ち出したとのことで、どこも若者と女性の入職・定着を図る施策に力を入れていることが伺えます。
さて、私は3月6日、連合愛知が主催する2016春季生活闘争 地域フォーラムに出席しました。このフォーラムに大村知事はパネリストとして参加され「地方創生の実現に向けては中小企業の発展そして雇用の創出が欠かせない。愛知の活力をより生み出すためにも、行政として現場の働きやすさをサポートしたい」と力強く話されました。
さらに、「県が四半期ごとに行う中小企業景況調査(平成27年10-12月期)にて「行政に求める今後強化すべき支援策」として、「人材確保支援」が1位となった。これは調査開始以来、初めてであり、それだけ人材確保が急務であると認識している」と話されました。
そこで、私は同調査の建設業における結果を調べてみると、行政に求める支援策の1位は人材確保支援、2位が人材育成支援、3位が雇用維持支援とすべて人に関わる支援策であり、加えて平成25年7-9期の調査以降、全て1位が人材支援確保策であることを確認しました。それだけひっ迫した問題であるのです。
ぜひ建設業が求めていた人材確保支援策にお応えいただくとともに、出来れば一方的な周知に留まらず、担い手本人にまで伝わるような周知、そして本人のモチベーション向上につながる支援となるよう要望して質問を終えます。