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日比たけまさ 平成29年6月定例会代表質問
民進党 日比たけまさです。
今年度、民進党愛知県議員団は中村すすむ団長以下32名で、「人口減少・少子高齢化社会」「格差社会」「働き方改革」等、様々な課題に対し、民進党愛知県議員団らしい調査・提言を行っていく予定です。本日は、今年度の民進党愛知県議員団のトップバッターとして、県政各般にわたる重要施策について順次質問をいたします。
2015年の国勢調査にて我が国の人口は1億2710万人と調査開始以来、初めて減少しました。また、厚生労働省は今月2日、2016年に生まれた子どもの数が97万6979人となり、1899年に統計をとり始めて以来はじめて100万人を割り込み、過去最少になったと発表しました。人口減少・高齢化社会が現実に訪れ始めたのです。
こうしたなか、大村知事は最近出版された著書「世界イノベーション都市宣言」で、「人口減少・高齢化と技術革新という大きな変化を、うまく乗り越えねば、日本の成長はおぼつかなくなる可能性が高い。さらに人口減少と技術革新は、世界規模で、魅力ある都市への人口集中を加速させる。ヒト、モノ、カネ、情報の集積がいったん始まれば、集積が集積を呼び、魅力ある都市の隆盛は逓増的に続いていく。世界に目を向ければ、人口減少に直面する国々のなかにも、しっかりとプラス成長を実現している国々はある。あるいは、周辺から人口や企業を集め続ける都市圏はいくつもあるのだ。発展する都市圏に学び、愛知にその優れた最新技術やイノベーションを導入し、成長のためのノウハウを学び取ることが大切だ。それによって愛知に活力と豊かさをもたらし、生産性を向上させていくしかないのだ。」と力強く述べられています。
また先日、格差社会を考えるセミナーにおいて、財政社会学者である慶應義塾大学の井手英策教授の講演を拝聴する機会がありましたので、少し紹介させて頂きます。
「国際比較調査グループ・ISPPが2006年に行なった各国の『中間層の税負担をどう思うか』という調査にて、日本は先進国の中で「税負担が重い」と感じる人々の割合が高いという結果になりました。税への抵抗が強い社会とは、他の誰かのための負担を嫌う「不寛容な社会」であるのです。
格差社会を作り出したのは誰でしょう。貧しい人たちですか?気まぐれな富裕層ですか?違います。普通に生活できる人たち、そう私たち大人です。この反省がない限り、そして、なぜ私たちはそんな社会を作り出したのかを徹底的に考え抜かない限り、公正な社会など実現不可能です。
僕は、日本の現状を悲しく、情けなく思っています。もっと人間が人間に関心を持てる社会にならなければ、生きることがしんどくなる。このままでは、次の世代の子どもたちに申し開きができません。」
90分間、鬼気迫る口調で語られ、政治に携わる一人として、深く深く考えさせられる機会となりました。
私は、これからの日本、愛知県を考える際、ご紹介した二つのアプローチ「技術革新を含めた一人当たり生産性向上を図り、質の経済を追求する」「尊厳ある生活保障、頼り合える社会を構築する」ことが重要であると考え、「産業育成で元気な愛知づくり」「安心して暮らせる愛知づくり」について、12点の質問をさせて頂きます。
始めに「産業育成で元気な愛知づくり」についてお尋ねします。
1点目は自動運転について伺います。
愛知県は2015年8月、国の国家戦略特区(近未来技術実証特区)に地域指定され、「自動走行実証プロジェクト」を推進しています。このプロジェクトでは、道路交通法等の規制を緩和し、無人走行車両を利用したタクシーの旅客サービスや無人配送サービスなどを目指した実証を行うこととしており、今年度は、
1 国の規制緩和の動きと連動し、さらに技術を高度化させた遠隔型自動運転システムなどを活用し
た実証実験を全国に先駆けて開始し、社会的受容性を醸成していく
2 自動運転技術の進展を見据え、具体的なビジネスモデルの創出に向けた検討を行い、自動運転に
関する新たな産業の創出につなげていくことを目指しています。
昨年秋、本県が高蔵寺ニュータウンにて実施した自動運転実証実験(いわゆるレベル3)に私も乗車させて頂きました。万が一に備えて運転席に人が座るものの、全くハンドルに手をかけない状態で、違和感なく車線変更や交差点を左折する姿に、「完全自動運転の社会はすぐそこまで来ている」ことを実感するとともに、高齢化が急速に進行する地域における「ラストワンマイル」を、自動運転が担ってくれるという期待を強く持ちました。
加えて、自動運転の車が社会に浸透する頃には、生産された車をドライバーに対して販売するといった現行のビジネスから、シェアリングサービスや移動サービスの提供といった付加価値が加わった新しいビジネスへの転換が見込まれ、また、自動車自体も多くのセンサーやカメラ等の搭載やAIをはじめ新しいシステムが付与されるなど、大きな変化をもたらすことが考えられます。こうした点からも、自動運転に関する新たな産業の創出も大いに期待されるところであり、この点もものづくり愛知が是非リードしてもらいたいと考えます。
今月1日、警察庁は「遠隔型自動運転システムの公道実証実験」を道路使用許可の対象とする取扱いを公表し、いよいよ運転席に人が座らない(いわゆるレベル4)の公道での実験が可能となりました。
そこで、自動運転に関する現状と今後について知事のご所見をお伺いします。
2点目は介護ロボットの支援についてです。
大村知事は、ロボット産業を自動車、航空宇宙に次ぐ第3の柱として育成し、世界に誇るロボット産業拠点を目指すと常々言われています。ロボットは「産業用」と非産業用の「サービスロボット」の大きく2つに分類され、「サービスロボット」には、医療、介護・福祉、清掃、受付・案内、教育、レスキュー、家事支援などがあります。
今後、サービスロボットは市場の急速な伸びが期待されており、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によると、2012年の600億円から2020年には1兆円、そして2025年には2.6兆円とロボット産業全体の半分を占めるまでに成長すると試算されています。もちろん、本年開催されるロボカップ2017名古屋世界大会や愛知県での開催が決まったワールドロボットサミット2020でもこれらのロボットが展示される予定です。
一方、急速に高齢化が進むなか、介護現場における人材不足が喫緊の課題となっています。2000年の介護保険制度開始以降、介護職員の数は毎年増え、今後も増加していくことが予想されるものの、団塊の世代が75歳以上となる2025年には需要と供給に約38万人ものギャップが生じると試算されています。加えて、介護職員の7割が腰痛を抱えるといわれる現場の負担軽減が必要です。
こうしたなか、2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略」のなかに、ロボット介護機器の市場規模を2020年に約500億円、2030年に約2,600億円にする「ロボット介護機器開発5ヵ年計画」が盛り込まれました。
しかし、介護現場では、まだ介護ロボットへの認識が浸透しているとは言い難い状況です。昨年10月、静岡県が県内の介護保険施設等に行った「介護ロボット技術・ICT(情報通信技術)に係る導入状況調査」によると、介護ロボットの導入状況は「移乗介助機器(17.6%)」、「コミュニケーションロボット(13.2%)」、「移動支援機器(1.5%)」であり、また、導入していない理由として、「導入経費が高額であること(66.2%)」、「導入効果がわからない(58.6%)」、「使いこなすのが難しい(39.1%)」などが挙げられました。
この分野こそ本県が力を入れて、取り組む必要があると考えますが、介護ロボットの普及に向けては、介護する側と介護される側、双方のニーズに沿うような介護ロボット機器の開発、実証実験、介護現場への導入が求められると考えます。
そこで、活用が期待される介護ロボットへの支援について知事のご所見をお伺いします。
3点目は、中小企業の人材確保について伺います。
人口減少と産業構造の変化に伴い、働き手の奪い合いが生じています。帝国データバンクが本年1月に調査を行い、3月に公表した「人手不足に対する愛知県企業の意識調査」では、中小企業の中で、正社員が不足していると答えた企業は42.7%、非正規社員が不足していると答えた企業が28.2%と調査開始以来最高となりました。
本県では、これまでも様々な形で中小企業における学生等の若者の人材確保支援策を展開してきました。しかし、取組の成果が見えにくいのが現状です。
「セミナーを実施した」、「経営者の講演会を実施した」、「パンフレットを作成した」という取組が必要であることは言うまでもありません。しかし、こうした取組により本当に効果があったのか、その後のフォローが大切です。そして、さらに効果の高い施策につなげなければなりません。
また、こうした若者に対する広報・啓発的な取組と並行して、もう少し個別企業や就職希望者の懐に行政が入り込むべきではないかと考えます。例えば、東京都では中小企業の即戦力採用に向け、専門家によるコンサルティング等を無料で実施するとともに、ハローワークや民間人材紹介会社等を活用して人材の確保を強力に支援する事業を展開しています。
具体的には「求人を出して3ヵ月経つが採用できていない」「即戦力の人材を採用したいが、効果的なアピールが出来ない」といった悩みを抱える企業200社に対し、課題の整理、自社の魅力の洗い出し、採用ノウハウの付与、求人票の添削等により、企業ニーズに応じたマッチングの実施や採用活動中における必要な助言など、コンサルティング支援を3か月程度、アフターフォローを3か月程度実施し、採用につなげているそうです。
私は、こうした取組に加え、できる事ならば採用後の数年間もフォローを行い、ミスマッチを防ぐところまでひとつの成功事例を創り上げることも重要であると考えます。いずれにしても、中小企業の人材確保に向けて、求職者、求人者両面からの取組が必要ですが、常に施策の効果を点検しながら、実効性あるものとしていくことが大切です。
そこで、中小企業の人材確保に関する取組について知事のご所見をお伺いします。
4点目は働き方改革の推進に向けた取組について伺います。
「働き方改革」は、昨年8月「一億総活躍社会」の実現を目指す最大のチャレンジとして位置付けられ、本年3月28日に長時間労働是正、非正規雇用の待遇改善などを改革の主軸とした「働き方改革実行計画」が公表されました。
この中で、長時間労働の是正については、残業の上限を特別な事情がある場合でも最大で年720時間までとし、違反した企業に対しては罰則規定が盛り込まれました。この点について、連合は「罰則付き時間外労働規制の導入という、労基法70年の歴史の中での大改革に至った。今後はこれら法整備とともに、個別労使が原則的な上限時間を踏まえて、時間外労働の削減に向けた不断の努力をはかることや36協定の適正化などが必要である」とコメントしました。現場実態を踏まえると、やるべきことが相当あるということです。
2013年度の労働時間等総合実態調査によると、44.8%の企業で36協定が締結されておらず、協定締結をしていない使用者の35.2%が36協定の存在を知らないと答えています。また、労働組合がない場合、適正に36協定の過半数代表者を選出できていないという問題も耳にします。これが現実です。
おそらく、大手企業は法改正による対応を独自で行っていくと考えますが、中小企業では人材やノウハウに相当苦慮することが容易に想定されます。本県では、働き方改革の推進に向け、従来の普及啓発活動に加え、今年度は新たに「働き方改革アドバイザー」の派遣を中心とした「職場環境改善支援事業」などを展開する予定となっており、出来る限り波及効果の高い改善支援、サプライチェーンを意識した支援や相当優れたアドバイザーが求められます。
一方、非正規雇用の待遇改善も大変重要な項目です。働き方改革実行計画では正規雇用労働者と非正規雇用労働者の不合理な待遇差を解消するため「同一労働同一賃金ガイドライン案」を策定し、労働契約法、パートタイム労働法および労働者派遣法の3法改正の方向性が示されました。これに対し連合は、「実効性のある均等待遇原則の法制化に向けて、職場において非正規雇用労働者の声も踏まえて実質的な話し合いが行われることを担保することが必要である」と見解を述べ、所期の目的が現場レベルできちんと果たされるよう要望しています。
また、来年4月1日以降は、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたとき、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルール、いわゆる無期転換ルールが適用されますが、「労働者の申し出が必要」であることや「無期労働契約を防ぐ目的での雇止め」がないよう県としても広報・啓発活動が必要であると考えます。
そこで、長時間労働是正、非正規雇用の待遇改善を始めとした働き方改革推進に向けた県の施策を現場の課題に即した取組としてより有効なものとするため、具体的にどのように展開していくのか知事のご所見をお伺いします。
5点目は教員の多忙化解消プランについて伺います。
「国は人がつくる。人は教魂がつくる」先日、春日井市で行われた、香葉村真由美先生の講演会で耳にした言葉です。香葉村先生は、福岡県の現役小学校教員で「命がけで生徒と向き合ってきた実体験から語られる話」に、全国から講演依頼が殺到している先生です。私もたくさんの感動、涙、勇気を貰いました。そして、会の最後を締めくくったのが冒頭の言葉です。
教員の魂が人をつくる。教員と生徒が真正面から向き合ってこそ、真の人づくりができると思います。しかし、今、子どもたちと向き合うべき時間がその他の業務に割かれている現状があります。
中学校の教員を対象に2013年に実施された国際調査(OECD国際教員指導環境調査)によると、日本は授業時間が参加国平均と同程度である一方、1週間当たりの勤務時間が最長であることが明らかとなりました。
また、県内の小中学校の教員で組織する愛知県教員組合が昨年10月に実施した「職場点検活動の調査」によれば、日々多忙であると感じると回答した教員の割合は97.3%、1月の時間外労働時間が80時間を超えると回答した教員の割合は56.3%となっており、本県の小中学校の教員も、非常に多忙な状況に置かれていることがわかります。
こうした中、本県は今年3月に「教員の多忙化解消プラン」を策定しました。プランでは、県立学校における多忙化解消に向けた取組とともに、市町村立小中学校における取組についても、勤務環境の改善に向けた支援を行うこととされております。
私は、是非、県教育委員会と市町村教育委員会がしっかりとタッグを組んで、小中学校教員の多忙化解消に向け、具体的な取組を進めていただきたいと強く望むものであります。
先ほど述べた「職場点検活動の調査」では、やむを得ず勤務時間外に行った仕事の内容として、教材研究、ノート点検・成績処理、校務分掌に関する仕事、学年・学級事務に関する仕事、部活動指導、学校行事に関する仕事が挙がっており、この中から「子どもたちと向き合う時間」以外の部分を、どのように効率的に行うか、言い換えれば業務改善や環境整備が大切になると考えます。
現場からは、根本的な対策として「教職員定数の改善」「正規教員への登用」に対する強い声が上がるとともに、教育委員会が実施する会議、調査、研修等の整理や学校給食費の徴収・管理業務の改善等に期待が寄せられております。
一方、次期学習指導要領の改訂が、小学校では2020年度、中学校では2021年度から予定されている中、次期学習指導要領で目指す「主体的・対話的で深い学び」を実現するためには、教員が今まで以上に授業改善に取り組む時間を確保し、授業力、教師力を高める必要があります。
こうしたことからも、県と市町村教育委員会が率先して、学校を対象とした会議や調査、研修等の内容を見直すべきであり、教員の負担軽減に最大限、配慮していただきたいと思います。
そこで、特に長時間労働が顕著な市町村立小中学校の教員の多忙化解消に向け、県教育委員会として、どのように市町村教育委員会と連携して、施策を展開されていくのか、教育長のご所見をお伺いします。
6点目に公契約条例の進捗状況について伺います。
本県は昨年3月、公契約の適正化、公共サービスの品質の確保、環境保全その他の社会的な価値の実現、公契約の履行に係る作業に従事する労働者等の労働環境の整備の四つを基本方針に掲げ、もって県民生活の向上と地域社会の持続的な発展に寄与することを目的とした「愛知県公契約条例」を制定しました。
とりわけ「社会的価値の実現」は、環境に配慮した事業活動、障がい者の就労支援、男女共同参画、仕事と生活の調和といった県の施策に積極的に取り組んでいる民間事業者を評価するものであり、私たち民進党愛知県議員団が求めてきたテーマでもあります。
そして、同年10月からは条例に基づき、予定価格6億円以上の工事請負契約及び予定価格1,000万円以上の清掃、警備、受付・案内、電話交換の業務委託契約を対象に労働環境報告書の提出を義務付ける「労働環境の確認」が始まり、本年3月には初めて「愛知県公契約に関する協議の場」が開かれたところであります。
協議の場の議事録でも「社会的価値の実現について、政策効果がよりわかるような分析を望みたい。例えば、障害者法定雇用率の達成は愛知県の弱点でもある。これを克服できるよう、公契約の側から誘導するようなウェート付けを要望したい。」といった意見がありました。条例を通じて、より一層、社会的取組の高い企業が増えるよう、運用にあたっていただきたいと思います。
また、公契約条例の目的に鑑みると、県内各市町村でも条例制定が望まれますが、現時点では豊橋市及び碧南市が条例を制定し、七つの市が要綱など条例以外の形で取り組んでいると聞いています。
そこで、条例の基本方針に掲げる「社会的価値の実現」や「労働環境の確認」について、これまでの実績、協議の場における意見、事業者から提出された労働環境報告書などを踏まえ、今後どのように取り組んでいくのか、併せて、県内市町村における条例制定の促進に向けた県からの働きかけについて、知事のご所見をお伺いします。
7点目にはラグビーワールドカップ2019の取組について伺います。
2019年9月20日~11月2日の44日間にかけて、ラグビーワールドカップ2019が開催されます。ラグビーワールドカップは、オリンピック・パラリンピック、サッカーワールドカップに続く世界3大スポーツ大会のひとつと言われ、1987年第1回大会がニュージーランド・オーストラリアで開かれて以降、4年に1度開催され、前回2015年イングランド大会では観客動員数が過去最高の248万人となりました。加えて、前回大会での日本代表チームの活躍により、大変な盛り上がりが期待されています。
株式会社日本政策投資銀行が調査した資料によると、「ラグビーワールドカップ2019開催による経済波及効果は2,330億円となり、過去大会の実績から相当数のインバウンド客が見込まれ、また欧米等を中心に比較的高所得者層の入り込みも期待できる」とされています。また、「各開催都市においては、開催期間中のインバウンド受入を通じてインバウンドの需要開拓・受入のノウハウを得ることができる等、インバウンド観光客の継続的な取り込みの好機とも捉えられよう」と記載されています。
例えば、本県は中部国際空港に隣接する展示面積60,000平米の大規模展示場を2019年秋頃に開業する予定ですので、このラグビーワールドカップ2019に関連するイベントを企画出来たら素晴らしいのではないでしょうか。
最近の動きでは、本年4月3日に我が国初の特別仕様ナンバープレートの交付、5月10日には組み合わせ抽選結果が発表され、さらにこの秋には試合日程も決定される見込みで、大会の成功に向け準備、運営を行う公益財団法人ラグビーワールドカップ2019組織委員会では、様々な施策を展開する予定です。
本県も開催地としてこの流れにあわせ、県民機運を盛上げ、インバウンド観光客の継続的な取込につながるような、様々な施策を展開しなければならないと考えますが、知事のご所見をお伺いします。
また、関連して8点目に愛知環状鉄道の利便性向上について伺います。
会場となる豊田スタジアムに大勢の観客を迎えるためには公共交通を最大限活用した円滑なアクセス整備が必要となります。現在、豊田スタジアムの最寄り駅は名鉄三河線 豊田市駅と愛知環状鉄道 新豊田駅がありますが、このうち愛知環状鉄道には今や鉄道・バス路線では当たり前となったICカードが導入されていません。
例えば高蔵寺駅や岡崎駅では接続するJR線と同じ敷地内にホームがあるにもかかわらず、ICカードでJR線から来た利用者は一度改札口をでて入りなおすことが必要となり、大変不便であります。利便性向上を目的に、沿線4市の市議および県議150名で構成する「愛知環状鉄道沿線市議員連盟」が発足し、5月2日、ICカードの早期導入、輸送力強化のための複線化、JRとの相互乗り入れによる直通列車運行の拡充、駅舎のバリアフリー化を盛り込んだ「愛知環状鉄道の利便性向上について」という要望書を知事へ提出しました。
このうちICカードについては、全国の鉄道事業者をみると、愛知環状鉄道と同程度の利用がある鉄道は全てで導入または導入決定済、さらに愛知環状鉄道よりも利用が少ない鉄道でも多くの鉄道ですでにICカードの導入が進んでいます。愛知環状鉄道のICカードの導入は、今や沿線地域の総意とも言うべき状況となっています。
本県も愛知環状鉄道の出資者として、愛知環状鉄道へのICカードの早期導入の実現に向け積極的な取組が必要と考えますが、知事のご所見をお伺いします。
ここからは大きな2つめのテーマとして、「安心して暮らせる愛知づくり」についてお尋ねします。
1点目に障害者差別解消法への取組について伺います。
昨年4月、障がい者への差別禁止や合理的配慮の提供を定めた「障害者差別解消法」が施行されました。これに先立ち本県では、法の趣旨を広く県民の皆様に周知し、県民一体となって、障害を理由とする差別の解消を図ることを目的とする「愛知県障害者差別解消推進条例」を2015年12月に公布し、県の取組として「相談及び紛争の防止等のための体制の整備」「障害者差別解消支援地域協議会の設置」「啓発活動」「助言、あっせん又は指導等」「職員対応要領の制定」の5点を規定しています。
さらに、昨年10月には手話言語の普及及び障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進を図り、全ての県民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に寄与することを目的とした「手話言語の普及及び障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する条例」が制定されました。
これらの取組を広く県民に認識してもらい、かつ個々の問題を解消していくことこそ、知事が常々発信する「誰もが暮らしやすい愛知づくり」を進めることができると考えます。
では、1年が経過した時点で、この理念がどれだけ浸透しているのでしょう。
千葉県では、本年2月にこうした施策についてインターネットアンケート調査を実施しました。まず、「障害者差別解消法」「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」「千葉県手話言語等の普及の促進に関する条例」を知っているかという問いに対して、「知らない」と回答した割合がそれぞれ47.7%、62.1%、80.4%となり、また、「障害を理由とした差別や偏見は減ってきていると思うか」という質問には55.6%が「変わらないと思う」と回答しています。このことからも、県民への周知がまだまだ進んでいないことが伺えます。
また、報道によりますと、障害者差別解消法の施行後1年間に、障害者や家族から寄せられた差別に関する訴えのうち、法務省が人権侵犯事件として救済手続きを行った件数が292件に上り、差別が横行している実態が明らかとなりました。
そこで、法が施行されて1年が経過し、本県において見えてきた課題と今後の方向性について知事のご所見をお伺いします。
2点目に部落差別解消推進法への取組について伺います。
部落差別解消に向けた取組は、1965年の同和対策審議会答申を受けた1969年の「同和対策事業特別措置法」制定以降、「地域改善対策特別措置法」「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」と、時限立法の事業法が複数回延長されるなか、様々な事業が進められてきました。しかし、2002年に法が失効すると、時が経つにつれ「部落問題はそろそろ店じまい」といった風潮が出てきた印象が拭えません。そんな中で、昨年12月に「部落差別解消推進法」が成立、施行されました。
この法律の第一条は「現在もなお部落差別が存在するとともに、情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じていることを踏まえ(中略)部落差別は許されないものであるとの認識の下にこれを解消することが重要な課題であることに鑑み(中略)部落差別の解消を推進し、もって部落差別のない社会を実現することを目的とする」と規定され、憲政史上、初めて部落差別の解消を目的として、取り組む姿勢を示した法律です。
この法律の意義として「部落問題に関する法的空白が解消されたこと」「部落差別の存在を認知したこと」「部落差別の解消を初めて法律で明記したこと」「部落差別解消のための施策実施を国及び地方公共団体の責務としたこと」「相談体制の充実を打ち出したこと」「部落差別を解消するため、必要な教育及び啓発の実施を明記したこと」「実態調査の実施を明記したこと」が挙げられます。
法律制定の大きな契機ともなったインターネット上における「悪質な部落差別事件の横行」、今日に至ってなお存在する就職差別や戸籍・住民票等の不正取得、あるいは、本県においてもこの場でとても読み上げられないような差別的な文書が特定の個人宛に投函された現実があることも事実です。
私自身、このことに対し大きな衝撃と強い怒りを感じています。
そこで、部落差別の解消に向けた本県の対応について知事のご所見をお伺いします。
3点目は保育士確保に向けた取組について伺います。
近年、保育施設への申込者数が急増しています。厚生労働省によると全国の保育所等への申込者数は2011年の約218万人から2012年が約225万人、2013年が約229万人、2014年が約234万人と推移していましたが、2015年は「子ども・子育て支援新制度」導入され一気に約247万人に、さらに2016年には約256万人へとこの5年で約38万人も増加しています。今や児童の4割が保育園を利用しており、厚生労働省は申込者数の急激な増加を「子ども・子育て支援新制度」により保育サービスが受けやすくなったため保育施設を利用する、潜在的な需要を掘り起こしたとみているそうです。
本県でも2016年に定員数を4,273人増やす一方で利用者が3,523人増え、保育所を増やしても利用者も増えるという状況です。
右肩上がりで保育需要が伸びているなか、待機児童の解消には保育士の確保が急務であり、本県に4万9千人いると言われる「潜在保育士」の活用および非常勤保育士の常勤化や有効活用にも力を入れなければなりません。
しかしながら、本県では、「保育士の不足数を明らかにし、施策ごとの確保目標を立てる」といった議論がみえてこないのが気になります。
春日井市でも、近年、保育士確保に大変頭を抱えている状況です。「潜在保育士の掘り起こしを行いたくても、どこにいるのかわからないため、広報媒体等で「広く」「浅く」しか発信できず、なかなか採用に結び付かない。」「新規の正規職員を採用しても、それと同程度の臨時職員が退職し、実際の増加につながっていない」といった状況です。なお、臨時職員の退職理由の一つに、より条件の良い正規職員として他の施設の保育士に移られるケースもあり、限られたパイの中での保育士確保競争が起こっていることもうかがえます。
そこで、保育士確保状況における本県の実態について伺います。「あいちはぐみんプラン2015-2019」では、必要保育士等の数が、2015年度27,993人から2016年度27,779人、2017年度27,418人、2018年度27,085人、2019年度26,768人と年々減少していきますが、保育需要が年々高まる状況下で、果たして待機児童解消につながるのでしょうか。保育士確保の考えについて知事のご所見をお伺いします。
4点目に消費者トラブルへの対応について伺います。
消費者庁が今月9日に公表した「消費者白書」によれば、2016年の商品購入やサービス利用時の消費者被害・トラブル額は全国で4.8兆円ともいわれています。
また、2016年度の本県の消費生活相談窓口への相談件数は、15,234件であり、特徴的なのは、20代から70歳以上まで、どの年代でもまんべんなく相談が発生していること、インターネット利用における架空請求のトラブルなどの「通信サービス」にかかる件数が4,994件と最も多く、全体の約3分の1を占めること、また、70歳以上の高齢者では、被害金額の平均が100万円を超え、他の年代と比べ深刻な状況であることなどが挙げられます。
2009年に施行された「消費者安全法」では、都道府県には消費生活センターの設置が義務づけられ、市町村においても設置に努めることとされています。本県では、県内全ての市町村に相談窓口が設置され、また、今年4月1日現在44市町村と、約8割の市町村で消費生活センターが設置されています。
このうち消費生活センターは、約1年前の2016年3月時点では県内9市町村しかなく、ここ1年で大幅に整備されたところです。従って、まだまだ県民への周知が進んでいないと考えます。今年4月に開設された稲沢市の消費生活センターの紹介記事が先日の新聞に掲載されていましたが、県としても窓口が身近になった消費生活センターの周知、そして消費生活センターの運営の充実についても支援が必要であると考えます。
こうした状況を踏まえ、県における消費者トラブルの未然防止対策と市町村への支援に対する知事のご所見をお伺いします。
以上、「産業育成で元気な愛知づくり」、「安心して暮らせる愛知づくり」の大きく2つの項目に分けて、県政各般にわたる重要施策について質問させていただきました。
知事及び教育長の誠実なるご答弁をお願い申し上げまして、民進党愛知県議員団を代表しての質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
(知事)
初めに、自動運転についてお答えをいたします。
本県が、引き続き、我が国経済を牽引していくためには、イノベーション創出の促進が重要であり、将来の普及が見込まれる自動運転につきましても、技術開発の促進及び社会的受容性の醸成を図る観点から、昨年度、県内15の市町で、総実走距離約2,800キロという公道を使用した大規模な実証実験を実施をいたしました。
今年度におきましても、この6月に、最新の技術動向を踏まえ、国の規制緩和の動きに連動する最先端の遠隔型自動運転システムを含む実証実験事業を全国に先駆けて開始したところでございます。
本事業は県内10市町において実施をいたします。このうち、警察庁が6月に策定した新しいガイドラインに基づく、運転席に人が乗車しない遠隔型自動運転システムによる公道実証実験については、名古屋市、春日井市、幸田町を候補地に夏頃の実施を目指してまいります。
また、実証実験を希望する者と県内市町村とのマッチングや、ルート情報の提供などにより実証実験の一元的な支援を行う「あいち自動走行実証推進コンソーシアム(仮称)」を設置をいたします。
さらに、こうした実証実験と並行し、将来的な自動運転技術の更なる進展を見据えた、新たなビジネスモデルの創出に向けた取組を開始をいたします。
具体的には、今後、自動車関連を始めとした企業等を対象に、自動運転システムを活用した新たなビジネスの可能性や課題等について調査・分析をし、その結果を踏まえ、テーマ別の研究会を立ち上げ、新たなビジネスモデルの具現化に向けた議論を進めてまいります。
本県といたしましては、自動車産業の一大集積地であるという強みを最大限に生かして、企業、大学、市町村等との強固な連携を図りながら、「オールあいち」による自動運転の社会実装を進めてまいります。
(知事)
次に、介護ロボットへの支援についてであります。
介護ロボットの開発・普及を促進していくためには、介護現場からのニーズや意見を十分に吸い上げ、ロボットの開発や実証実験に反映させるとともに、介護施設が無理なくロボットを導入できるよう経費的な支援をしていくことが重要と考えております。
そこで、県といたしましては、「あいちロボット産業クラスター推進協議会」において、開発企業と介護施設などのユーザーの両者が参画する医療・介護のワーキンググループを立ち上げ、全国の最新開発事例や介護現場からのニーズに関する意見交換を通じて、新たな介護ロボットの開発につなげる働きかけをしております。
また、昨年度からは「知の拠点あいち重点研究プロジェクト」において、開発企業や介護施設・研究機関が参画をし、介護施設職員の職務の一部を代替し、職員の負担を軽減する介護ロボットなどの開発に取り組んでいるところであります。
さらに、国立長寿医療研究センター内に開設をいたしました「あいちサービスロボット実用化支援センター」においては、介護ロボットの導入を検討している介護施設の職員に、センターに常設している例えばベッドからの移乗を支援するロボットを実際に体験していただくことにより、介護現場への導入を促す取組をしております。
加えて、昨年度、地域医療介護総合確保基金を活用して「介護ロボット導入支援事業費補助金」を創設いたしまして、介護施設が介護ロボットを導入する際の経費を助成しているところであります。
県といたしましては、こうした取組を着実に推進する成果として生み出された介護ロボットが実際に活躍している姿を、2020年に開催されるワールドロボットサミットにおいて世界に発信することにより、介護ロボットの開発・導入をさらに加速させてまいります。
(知事)
続いて、中小企業の人材確保についてお答えをいたします。
景気の回復、企業収益の改善に伴い、企業の採用意欲が高まる一方、若者の就職活動は、大企業や知名度の高い企業に偏る傾向にあり、中小企業の人材確保は大変厳しい状況にございます。
そこで、本県では、若者に中小企業の魅力を理解していただくため、1日職場見学や、中小企業経営者と学生との交流会、若手社員との交流を行うセミナーなどを実施してまいりました。また、人材確保に苦戦する中小企業に対しては、会社合同説明会による若者とのマッチング機会の提供などを実施してきたところであります。
こうした取組について、参加者からは、「中小企業の強みを知ることができた」、「就職先として中小企業を中心に考えようと思う」といった感想をいただいております。参加企業からは、「内定につながった」との声もいただいており、中小企業の魅力が徐々に若者に伝わってきていると感じております。
さらに、県外からの人材確保に向け、「UIJターン支援センター」や「プロフェッショナル人材戦略拠点」の設置により、県内外からの優秀な人材と地元の企業を結びつける取組も進めております。
また、より実践的な人材確保に向け、中小企業のインターンシップ受入れ支援のための講習会等の開催に加え、今年度は、新たに社会保険労務士等の専門家派遣による人材確保や職場定着のための助言等を行う取組を進めてまいります。
今後も、本県の産業力を下支えする中小企業の実情を踏まえ、実効性ある人材確保支援にしっかりと取り組んでまいります。
(知事)
次に、働き方改革の推進に向けた取組についてのお尋ねであります。
本県では、これまで、「県内一斉ノー残業デー」を始めとするワーク・ライフ・バランス推進運動など、官民一体で、働きやすい職場環境づくりに向けた気運の醸成に取り組んでまいりました。
こうした中、国の「働き方改革実行計画」では、長時間労働の是正、非正規雇用の処遇改善、多様な働き方など、幅広い項目が掲げられ、時間外労働の罰則付き上限規制なども盛り込まれました。
この働き方改革の実現に向けては、36協定や非正規雇用の無期転換ルールといった既存の労働法制はもとより、今後法制化される新たな仕組みについて、働く側、経営者側の双方に正しくご理解いただくことが、まず、必要であります。そこで、企業の人事担当者を対象とする労働講座や、企業や学生向けのリーフレットなど、あらゆる機会、ツールを活用して、普及啓発に努めてまいります。
同時に、働き方改革が、企業の人材獲得、定着、そして、活力につながるとの実感をもっていただくことが重要でありまして、その成功事例を数多く広げていくことが、普及の鍵になると考えております。
今年度実施をいたします「職場環境改善支援事業」では、100社の企業を訪問し、働き方改革を進める必要性を訴えてまいります。さらに、業務改善に取り組む意欲ある企業につきましては、社会保険労務士等の専門家が、個々の企業の実情に寄り添って継続的にコンサルティングを行い、具体的な取組を支援してまいります。あわせて、その成果は、報告会等により、広く県内企業にも発信してまいります。
働き方改革は、待ったなしの改革であります。県としてもしっかりと取り組み、多様な人材が多様な働き方を通じ、最大限能力を発揮できる、「人が輝くあいち」の実現につなげてまいります。
(教育長)
市町村教育委員会と連携した、小中学校教員の多忙化解消に向けた施策の展開について、お尋ねをいただきました。
義務教育を担う小中学校の教員が、一人ひとりの子どもに丁寧に関わりながら、質の高い授業や個に応じた指導を行っていくためには、教員の任命権者である県教育委員会と学校の設置者である市町村教育委員会、そして各学校が、それぞれの役割を踏まえながら連携・協力して、教員の多忙化解消に向けた取組を進めていくことが大変重要であると考えております。
このため、今回のプランの策定に当たって、市町村教育委員会や学校関係者と十分な協議を行うとともに、プラン策定後は、各市町村教育委員会が、県と基本的な認識を共有しながら、それぞれの地域の実情にあった取組を主体的かつ計画的に進めるよう、働きかけをしているところであります。
県教育委員会の取組といたしましては、今年度、小・中・高等学校各1校で実施しているモデル事業の結果も踏まえつつ、県が実施する会議、調査、研究指定校の廃止や簡素化を図るとともに、研修についても、教員を1か所に集めて行う集合研修の精選や、ICTを活用した校内研修への移行を進め、研修参加者の負担軽減を図っていくことといたしております。
また、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなど、教員以外の専門スタッフの配置拡充に取り組み、「チーム学校」の実現を目指してまいりたいと考えております。
県教育委員会といたしましては、教員の多忙な現状を解消し、子どもと向き合う時間をしっかり確保できるよう、市町村教育委員会と連携・協力しながら、着実に取組を進めてまいります
(知事)
次に、公契約条例の進捗状況についてであります。
条例の柱の一つであります「社会的価値の実現」は、契約を締結する際の評価項目に、環境に配慮した事業活動、女性の活躍促進などの指標を加えることで、公正性及び経済性の確保に留意し、本来達成すべき契約の目的が阻害されないように配慮しつつ、公契約が政策実現に寄与するというモデルを愛知県から発信したものであります。昨年7月に運用を開始してから、評価項目の指標の一つであります「女性の活躍促進宣言」の提出企業が、273社から784社と2.9倍に、「あいち女性輝きカンパニー」の認証企業が、80社から241社と3.0倍に増えるなど、着実に成果を挙げております。
もう一つの柱の「労働環境の確認」につきましては、本年3月に適用第1号の契約が締結されて以降、労働環境報告書が県に順次提出されており、事業者の理解を得て、順調なスタートが切れたと受け止めております。事業者からは、法令遵守に関する回答に加え、「有給休暇の取得を増やした」、「作業現場に水洗トイレを設置した」など、労働環境改善の具体的な取組も報告いただいております。
県としましては、今後も公契約の適正化を図りつつ、さらなる成果を挙げられるよう、社会的価値の実現や労働環境の整備といった条例の趣旨を、事業者に対し、より一層浸透させてまいります。加えて今年度は、「公契約の活用が各施策の推進にどの程度貢献しているか」という観点から、効果を検証するとともに、昨年度に引き続き「協議の場」を開催をし、各分野の方々のご意見を伺ってまいります。
また、市町村に対しましては、これまでもそれぞれの意向を尊重しながら、丁寧に対応をしているところであり、今後とも適切に助言をしてまいりたいと考えております。
(知事)
続いて、ラグビーワールドカップ2019の取組についてお答えをいたします。
2019年大会の開催に向けて、多くの方に豊田スタジアムにお越しいただくため、ラグビー以外のスポーツファンや一般の方へも幅広く大会の情報やラグビーの魅力をPRし、県全体の一層の機運醸成を図っていく必要があります。
このため、私が会長を務めます愛知・豊田開催支援委員会が中心となりまして、8月から始まる国内トップリーグに合わせたPRイベントや、11月にオーストラリアの強豪チーム「メルボルン・レベルズ」との国際親善試合を開催するなどの取組を進めてまいります。
また、海外からのワールドカップ観戦者は、試合に合わせて全国を移動し、長期間滞在すると見込まれますので、豊田スタジアムでの観戦を快適に楽しんでいただくだけではなく、試合がない日にも、多くの方に愛知に訪れていただくことが重要と考えております。このため、秋頃に発表される豊田スタジアムで試合を行う国を始め、多くのラグビーファンの来日が見込まれる欧州・オセアニアなどをターゲットに、多様なニーズを汲み取り、愛知ならではの歴史、文化、産業、グルメを紹介するなど、インバウンド観光の拡大に向けた対応を戦略的に行ってまいります。
開催都市といたしましては、大会組織委員会と連携をし、豊田スタジアム周辺以外でもラグビーに親しむことができ、賑わいの場となるファンゾーンの運営基本計画や、ボランティアプログラムの策定など、大会の成功に向け、しっかりと準備を進めてまいります。
(知事)
次に、愛知環状鉄道の利便性向上についてであります。
今日、鉄道における利便性向上には、全国の主な鉄道で共通利用ができ、電子マネー機能も持つICカード乗車券の導入が欠かせないものとなっております。
県内におきましては、平成18年のJR東海を皮切りにICカード乗車券の導入が進められ、昨年3月にはリニモが導入しました。これにより、愛知環状鉄道に接続するすべての路線でICカード乗車券が使えるようになったことから、愛知環状鉄道への導入を望む声はこれまで以上に高まっていると認識しております。
さらに、2019年のラグビーワールドカップでは、沿線の豊田スタジアムも会場の1つとなることから、外国人旅行者を含む多くの来訪者が快適で円滑に移動できるICカード乗車券の導入がますます望まれるところであります。
こうした状況を受けまして、愛知環状鉄道株式会社におきましては、導入する場合の初期投資やランニングコスト、経営に与える影響などについて検討を進めた結果、国庫補助金を活用することによりICカード乗車券を導入する方針を固めたところであります。
県としましても、利便性の高い鉄道ネットワークの形成を図る観点から、愛知環状鉄道へのICカード乗車券の導入は喫緊の課題と認識をしており、早期に導入ができるよう、沿線市とともに国庫補助金の確保に向けた要望活動を行うなど、会社の取組をしっかりと支えてまいりたいと考えております。
(知事)
次に、障害者差別解消法への取組についてのお尋ねであります。
本県におきましては、「障害者差別解消法」の施行前に制定をいたしました「愛知県障害者差別解消推進条例」に基づき、障害を理由とする差別の解消の推進に向け、普及啓発や相談体制の整備などに取り組んでまいりました。
しかしながら、本県の相談窓口に寄せられた相談の中には、議員ご指摘の法務省に訴えのあった人権侵犯事件と同様に、法律や条例に対する理解不足に起因する差別事案も見受けられますことから、今後さらなる理解促進を図る必要があると認識をいたしております。
また、差別解消のためには、昨年度制定いたしました「手話言語の普及及び障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する条例」に基づき、障害のある方々との意思疎通を、より円滑に行っていくことも重要であります。
このため、差別の解消に向けた取組を効果的かつ円滑に行うために、平成27年12月に関係団体や行政機関で組織をいたしました「障害者差別解消支援地域協議会」などの場を活用し、関係者の意見を十分にお聴きをして、できる限り障害のある方に寄り添いながら、差別の解消を推進してまいります。
特に、法律の趣旨を広く県民の皆様に理解していただくことが重要でありますので、市町村と連携して広報に努めるとともに、NPO等民間の御協力を得ながら、障害及び障害者に対する県民理解促進事業を県内各地で展開するなどいたしまして、周知啓発活動にしっかりと取り組んでまいります。
(知事)
続いて、部落差別解消推進法への取組についてお答えをいたします。
部落差別は、憲法に保障された基本的人権にかかわる重大な問題でありまして、行政はもとより、県民一人一人が、人権に関する正しい認識を持ち、その解消に向けて努力をしていく必要があると考えております。
本県では、平成9年12月に、人権尊重の宣言を行い、平成13年2月には、人権教育・啓発を進めていくための指針として、「愛知県行動計画」を策定し、家庭、地域、学校、職場など、あらゆる場を通じた人権教育・啓発の推進に取り組んでまいりました。
しかしながら、現在もなお、部落差別が存在する中で、最近は、インターネット上における差別的な情報の掲示・流布など、情報化の進展に伴う新たな課題も生じております。
こうした状況を踏まえ、昨年12月に、部落差別のない社会の実現を目指すことを初めて明記をした、「部落差別の解消の推進に関する法律」が公布・施行されたことは、大変、意義があるものと考えております。
本県といたしましては、この法律の趣旨に沿って、人権啓発の拠点施設である「あいち人権啓発プラザ」を活用するなどして、新たな課題にも目配りしつつ、部落差別解消に向けた人権教育・啓発をさらに充実してまいります。
人権が尊重され、心豊かに暮らせる社会は、県民すべての願いでありますので、国、市町村、学校、関係団体等との連携を十分に図りつつ、部落差別のない社会の実現に向けて、今後とも、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
(知事)
次に、保育士確保に向けた取組についてであります。
まず、本県における保育所等に勤務する保育士の数は、常勤、非常勤を含め、平成26年4月1日現在の26,335人から、平成28年4月には28,725人と2,390人増加をいたしております。
一方、「はぐみんプラン」の中の必要保育士等の見込み数につきましては、市町村が策定をした「子ども・子育て支援事業計画」を基にしており、子どもの数の減少傾向を反映をして、年々減少すると推計したものであります。その後、「子ども・子育て支援新制度」がスタートし、保育サービスが充実されたことや女性の活躍が進んだことなどにより、新たな保育ニーズが掘り起こされ、必要な保育士の数は、当初の見込みを上回る状況になっております。
本県といたしましては、今年度「はぐみんプラン」の中で一体的に策定しております「子ども・子育て支援事業支援計画」の中間見直しを予定しており、この見直しの中で保育の必要な子どもの見込み数とそれに連動する必要な保育士の見込み数を上積みしてまいりたいと考えております。
また、保育士の確保に向けましては、今年度、新たに中堅保育士の処遇改善や保育補助者の配置を促進する保育補助者雇上(やといあげ)強化事業を実施するとともに、引き続き潜在保育士への就職支援や学生への保育士修学資金の貸付などの事業を着実に推進してまいります。
こうした保育士確保のための事業とともに、保育所等の受け皿整備を加速することにより、待機児童を解消し、子どもが健やかに成長できる「日本一子育てしやすいあいち」の実現を目指してまいります。
(知事)
私からの最後の答弁になりますが、消費者トラブルへの対応についてお答えをいたします。
情報化社会の急速な進展などにより、消費者トラブルは、複雑化、多様化しており、新たな手口による被害が次々と生じております。こうした被害に遭われる方を一人でも減らしていくことが、県の責務であると考えております。
本県では、悪質商法の手口や具体的な対処方法などについて、消費生活情報紙「あいち暮らしっく」やウェブサイト、SNS、出前講座など、あらゆる機会をとらえて、広く啓発し、被害の未然防止を図っているところであります。
また、特に被害が深刻な高齢者を守るためには、周りの人たちが、日頃から高齢者に気を配り、異変に気付いた場合には、相談機関につなぐなど、地域で見守る体制の構築が必要であります。
本県では、消費者団体を始め、福祉・医療団体、金融機関などを構成員とする連絡会議を昨年10月に立ち上げ、市町村における、高齢者の被害を防止するための、地域ネットワークづくりを進めております。
次に、市町村への支援についてであります。市町村消費生活センターが、身近で頼れる相談窓口であるためには、その周知と、迅速かつ適切な相談への対応が不可欠であります。
県では、センターの存在を、情報紙やウェブサイト等でPRするとともに、質の高い相談員を確保するための、養成研修、人材バンク、レベルアップ研修、さらには、解決困難な事案へのバックアップなどの支援を行い、市町村消費生活センターの機能強化を図っております。
今後とも、市町村を始め、関係機関と連携して、県民の皆様が、安心・安全な消費生活を営むことができるよう、しっかりと取り組んでまいります。