平成29年2月定例会(2017.3.9)

議案質疑

 歳出第10款警察費第2項警察活動費のうち交通指導取締費および交通安全教育費について、また関連して第4款県民生活費第3項社会活動推進費のうち交通安全推進事業費について伺います。
 平成28年の本県における交通事故死者数は前年と比較し1名減少したものの212名で、14年連続全国ワーストとなりました。加えて、今年に入ってからも3月7日現在で33名(前年比▲4名)と全国でワーストとなっています。
 愛知県および愛知県警察では、これまでハード、ソフト両面からさまざまな対策を講じてきましたし、議会の場でも各議員からさまざまな質問や提案が出されてきたところであります。そしてこれからも交通事故死者数を一人でも減らすために、汗と知恵を出し続けなければなりません。
 そうしたなか、私からは、横断歩道を渡る際の歩行者と車両の在り方について質問をさせていただきたいと思います。
 さて、みなさまは車を運転する際、信号機のない横断歩道で歩行者が渡ろうとしている時、一時停止を確実に行っているでしょうか。道路交通法では、次のように規定されています。
 第38条「車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。」
 つまり、「横断歩道の近くでは、横断しようとする歩行者または自転車が明らかにいない場合以外は徐行。横断しようとしている場合は、横断歩道の手前で一時停止」これがルールです。
私は幼いころ、一番初めに教わった交通ルールが「手をあげて、右を見て左を見て、また右を見て横断歩道を渡りましょう」であったと記憶しています。
 小さな子どもたちにとって教わったことを実行するのは簡単なことではありません。なかには横断歩道に立ち、渡れないで困ったような顔をして、きょろきょろしているだけの子もいます。そんな中で、手をあげればクルマは止まってくれると教わったのに、実際は止まってくれなかったら…。子どもたちはどう感じるでしょう。大人が模範を示さずに、子どもたちは交通ルールをきちんと守るでしょうか。
 今から2年前の平成26年、春日井警察署では当時署長であった小林眞氏による強いリーダーシップのもと、当たり前のルールの徹底を図るべく取締りを強化しました。「子どもたちへ教えるルールを大人が守らないでどうする!」小林署長の熱い思いを、私は当時、何度も何度も聞かせていただきました。
 実際の数字で申し上げますと、横断歩行者等妨害等違反検挙数が前年の259件に対し916件、実に3.5倍となりました。その後も取締りの手を緩めず、翌平成27年には1,758件となりました。さらに、小林署長の後に春日井警察署に着任された酒井紀人(のりひと)署長も取組を継続され、平成28年には2,462件とこの3年で約10倍の検挙数となったのです。ここまで取締りを強化すると市民の意識にも影響が出てきます。実際、私の知り合いにも「横断歩行者等妨害等違反」で切符を切られた人間がチラホラ出始め、「最近、横断歩道の取締りが厳しいよね」という声とともに「横断歩道を通過する際、歩行者を意識するようになった」という声が聞こえてくるようになりました。
 そして、この取組が数字にも表れだしたのです。平成28年の春日井市内における交通事故死者数は4人と、記録が残っている昭和39年以降、最も少ない数字となりました。もちろん、4人の貴い命が奪われていることを喜ぶわけにはいきませんが、この傾向が今後も続いてほしいと私は願っています。加えて、横断歩道歩行中の人身事故件数は取締り強化前の平成25年が53件であったのに対し、昨年は30件と人身事故そのものを4割以上も減少させているのです。
 さて冒頭、みなさまに「車を運転する際、信号機のない横断歩道で歩行者が渡ろうとしている時、一時停止を確実に行っているでしょうか。」と伺ったのには理由があります。それは昨年実施されたある調査により、多くのドライバーがこの基本を怠っていることが判明したからであります。
 昨年8月15日から9月1日にかけ、一般社団法人日本自動車連盟(JAF)が信号機のない横断歩道における歩行者優先について実態調査をしました。調査は各都道府県2か所ずつ、全国合計94か所で信号機が設置されていない横断歩道を通過する車両10,026台を対象に行ったところ、歩行者が渡ろうとしている場合で一時停止した車はわずか757台(7.6%)という結果になったそうです。
一方、この調査に先立ち昨年6月15日から30日の16日間にわたり、JAFはホームページ内で「交通マナーに関するアンケート」(有効回答数6万4677件)を実施しました。その質問項目の中で「歩行者が横断歩道を渡ろうとしている場合に車が一時停止しなければならないことを知っているかどうか」という設問に対して、「知っており行動に移している」と回答した人が70.7%、「知っているがたまにしか行動に移せていない」と回答した人が27.8%、「知らない」と回答した人が1.5%という結果でした。
 この2つの調査からわかることは、大半のドライバーが「自分自身はやっているつもり」と思っているということです。
 この認識のずれこそ、大きな問題であると同時にドライバーの意識と行動を変化させる必要があります。
 そこで伺います。
 1点目として、歩行者の横断歩道横断に対するドライバーのマナーについて、どのような認識でいるのでしょうか。
 また、交通教育の徹底や広報の強化等、県民の意識啓発が必要であると感じますが、県警察および県のご所見を伺います。
 2点目として、春日井警察署の取組と効果を見ると「横断歩行者等妨害等違反」の取締り強化を県内全域に広めていただきたいと思いますが、警察本部長のご所見を伺います。

 さて、先ほど紹介したJAFの交通マナーアンケートでは「あなたのお住まいの都道府県の全般的な交通マナーについて、どう思いますか?」という設問もあり、「とても悪い」「悪い」と回答した方の割合が愛知県は全国ワースト6位の59.3%(平均は38.3%)でした。具体的な項目ごとに運転マナーに関する回答も紹介すると、「ウィンカーを出さずに車線変更や右左折をする車が多い」という設問で「とても思う」「やや思う」と回答した割合は、愛知県81.1%(平均77.1%)、同様に「信号が「青」に変わる前に発信する車が多い」では、愛知県55.6%(平均47.4%)、「運転中に携帯電話を使っているドライバーが多い」では、愛知県89.4%(平均84.3%)、「不要なクラクションを鳴らす車が多い」では、愛知県32.2%(平均31.5%)、「無理な割り込みをする車が多い」では、愛知県72.3%(平均63.2%)、「後ろから他のドライバーに煽られることがある」では、愛知県57.7%(平均54.5%)と軒並み全国平均より悪い結果となり、交通安全への意識変革がやはり必要と考えます。
 そこで3点目として、交通取締の実施による交通安全への効果について伺います。まず、交通取締はどのような狙いをもって行い、その効果はどのようになっているのでしょうか。また、こうした取締りが一定の効果があると考える一方で、違反者の立場からは「こんな場所で取締りをしても効果があるのか?」といった声が上がることも事実で、より交通事故抑止につながる取締りが必要と考えます。愛知県警察のホームページに「愛知県警察速度管理等指針」および地域ごとの「速度等取締指針」が掲示されていることは承知しておりますが、これらの県民への広報も含め、より県民に信頼され、効果の上がる交通取締りに努めることが望まれます。この点についてどのような検証を行っているのか、伺います。


《答弁要旨》

(警察本部長)
 昨年、愛知県では212人の方が交通事故でお亡くなりになりましたが、そのうち約1割に当たる21人もの方が横断歩道を歩いて横断中に車両にはねられ、お亡くなりになっております。
 道路交通法により歩行者が優先される横断歩道上で多くの歩行者が犠牲になっていることは、愛知県内で歩行者保護の意識が徹底されていないことの証左であるものと認識しております。
 横断歩道上の歩行者保護は運転者に課せられた義務でありますので、このルールが守られるよう、交通安全教育や広報啓発、また交通指導取締りなど各種対策を講じてまいりたいと考えております。
 県民の意識の啓発に向けた交通安全教育等といたしましては、ドライバーに対するものとして、運転免許の取得時における教育が効果的なものとなるよう、指定自動車教習所への指導を実施しておりますほか、運転免許の更新時に、歩行者横断中の事故の事例や歩行者保護の徹底等を盛り込んだ講習を行うなどしております。
 また、歩行者に対するものといたしましては、安全な横断の方法や多発する事故類型等の理解を深めるため、幼児から高齢者まで幅広い年齢層の方を対象に交通安全教育を実施しております。
 さらに、企業において従業員の歩行者保護意識の徹底に向けた独自の取組を実施していただくなどしております。
 今後も、県民の歩行者保護意識の醸成に向け、関係機関・団体等と連携した交通安全教育や広報啓発活動の実施に努めてまいります。

(県民生活部長)
 歩行者が横断歩道を横断する場合のドライバーマナーに対する認識と、交通安全教育、広報及び意識啓発の取組についてお答えします。
 横断歩道を歩行者が渡ろうとしているにも拘らず、一時停止をしないドライバーが多数いることは、しばしば見かけるところであり、交通安全意識の低さの表れと認識しております。
 このような実態を踏まえ、県では、横断歩行者妨害が道路交通法に違反する行為であることの十分な広報と、交通安全教育の更なる推進が大変重要と考えております。
 来年度は、交通安全県民運動や新聞広告の中で、横断歩行者妨害について、ドライバーの法令遵守とマナー向上に向けて重点的に広報してまいります。
 さらに、来年度、横断歩行者妨害の実態を把握するためにも、事故に繋がる運転の癖を見直すドライブレコーダーによる安全運転診断事業の分析結果を活用してまいります。
 一方で、歩行者がドライバーに対して横断する意思表示をする「ハンド・アップ運動」については、従来の交通安全県民運動の期間中だけでなく、年間を通じて展開し、ドライバーと歩行者がお互いに思いやりの気持ちをもって、交通安全に取り組めるよう進めてまいります。
 このような様々な取組により、横断歩道における歩行者の交通事故防止を図ってまいります。

(警察本部長)
 横断歩道上での歩行者の優先を徹底させることは、人優先の交通安全思想を徹底させるための最も基本的な取組の一つであると認識しております。
 このための対策として、交通指導取締りは高い効果が期待されますことから、重点的に取り締まるべき違反の一つとして横断歩行者妨害違反の取締りを盛り込み、県内全域で取締活動を強化しております。
 今後も、こうした取締りを一層強化し、横断歩行者の安全の確保に努めてまいりたいと考えております。

 交通指導取締りは、交通事故の要因となる交通違反の発生を未然に防ぎ、もって交通事故を抑止するために行うものであり、その効果は実際に取締りを受けた運転者だけでなく、他の運転者が取締りを受けている現場等を目撃したり、取締り情報を入手した運転者にも安全運転の意識を促進させる効果があるものと認識しております。
 交通指導取締りにつきましては、交通事故に直結する違反の取締りの強化を柱に行っており、各警察署等では、交通事故の多発する時間帯や場所、事故の形態等を踏まえ、重点を指向して取締りを実施しております。
 具体的には、通学時間帯の通学路を始め、多くの方が利用する駅や商業施設の付近、速度超過違反による交通事故が多発している幹線道路などにおいて、重点的な取締りを実施しております。
 また、交通指導取締りを行うだけでなく、その効果を検証することも重要であることから、概ね四半期ごとに検証を行い、より一層、交通事故実態を踏まえた交通指導取締りとなるよう、改善を図っております。
 今後も、真に交通事故抑止に資する効果的な交通指導取締りとなるよう努めてまいりたいと考えております。


要望事項

 要望させていただきます。昨年の交通事故死者数212名のうち、横断歩道を横断中に事故に遭い命を落とされた方は約1割の21名にのぼります。人の意識を変えるためには時間と労力が必要でありますが、この徹底により救える命がたくさんあるはずです。春日井警察署の取組について賛同している市民の声が警察にもあがっているとの話も聞きました。ぜひ、県警および県が一体となって、「愛知県民は交通モラルがしっかりしている」と思われるよう、粘り強い取組をお願いして質問を閉じます。