福祉医療制度のうち、障害者医療事業補助金について伺います。
福祉医療制度は、子ども、障害者、母子・父子家庭、寝たきり・認知症高齢者の方等が安心して必要な医療を受けられるよう、医療保険制度における自己負担相当額を公費で支給するもので、対象者に対して市町村が主体となり助成し、県は制度に合致する範囲内で市町村が支出した費用の1/2を補助しています。
制度の中で、障害者医療事業費補助金については、身体障害者、知的障害者は自己負担分3割を市町村と県が1/2ずつ補助している一方、精神障害者への精神疾患以外については県費の補助がなく、市町村独自の基準で補助の有無を判断していると伺います。そこで、県内の市町村の補助の現状について伺います。
【こころの健康推進室長】
精神障害者に対する医療費の助成につきまして、まず、県制度の概要を申し上げます。
本県におきましては、精神障害者保健福祉手帳の1級及び2級の方につきまして、通院にあっては精神疾患に係る自立支援医療費の自己負担相当額を、入院にあっては精神疾患に係る医療費の自己負担相当額を市町村が公費で助成し、県は市町村に対してその2分の1を補助しております。
県内の市町村におきましては、精神障害者に対する医療費助成について、県が補助対象としている精神疾患に限ることなく、全ての疾患を対象としているところがございまして、平成29年4月現在、通院にあっては51市町村、入院にあっては48市町村が、全疾患を対象とした助成を行っております。
多くの市町村で独自に補助を行っているということは、それだけ必要性がある、あるいは障害によって対応に差を設けることについて問題があると考えているのではないかと思います。市町村が補助を行っている現状について、県としてどのように認識しているのか伺います。
【こころの健康推進室長】
県費による精神障害者に対する医療費の助成は、平成20年度から実施しているものでございまして、その制度設計に当たりましては、制度の実施主体であります市町村とも調整を行い、全ての市町村において円滑に実施できるよう協議を重ねた結果、精神疾患に限定して助成を行うこととしたものでございます。
平成20年度の制度開始以後、個々の市町村におきまして、助成対象の拡大がそれぞれ行われておりますが、これらは、それぞれの市町村における政策的判断により行われているものと認識しております。
仮に、県費を充てるとどれくらいの影響があるのでしょうか。身体、知的障害者と精神障害者の対象者数や全体の金額等バックデータも含めてお示しください。
【こころの健康推進室長】
本県の障害者医療費補助金全体の平成28年度決算額は、67億7,129万5千円でございまして、その内訳は、身体障害者及び知的障害者に係るものにつきましては、補助額は55億4,610万2千円で、その対象者は7万4,220人、精神障害者に係るものにつきましては、補助額は12億2,519万3千円で、その対象者数は2万7,924人でございました。
本県の精神障害者医療費の助成対象を、仮に、一般疾患まで拡大した場合につきまして、平成28年度決算をベースに影響額を大まかに試算いたしますと、その金額は少なくとも約6億円が見込まれるところでございまして、補助金の所要額は、現行の約1.5倍以上に増加するものと考えております。
本年1月12日付の東京新聞では東京都における同様の事象について、精神障害者の家族会が「障害者間の差別ではないか」と問題視しているとの記事を掲載しています。県としてどのように考えているのか、障害者総合支援法や愛知県障害者差別解消推進条例の趣旨も踏まえお答え願います。
【こころの健康推進室長】
障害者総合支援法は、平成17年に障害者自立支援法として制定されたものでありまして、障害の種別、身体、知的、精神にかかわらず、必要とされるサービスについて、制度を一元化しようという理念がございます。そうした流れの中で、県単独事業である障害者医療費の助成制度におきましても、身体障害者及び知的障害者の方に加え、平成20年度から、精神障害者の方も制度の対象としたものでございます。
平成20年度の制度設計に当たりましては、精神障害については、適切な医療を継続的に受けることにより、その回復や症状の安定が可能であることから、精神疾患の治療の継続を確保し、支援することが重要であるという認識の下、制度の実施主体であります市町村とも調整を行い、全ての市町村において円滑に実施できるよう協議を重ねた結果、精神疾患に係る医療費を対象として助成を行うこととしたものでございます。
また、障害者差別解消法を所管する内閣府に、こういった障害のある方に対する医療費助成等で、障害種別間で取扱いが異なる場合、このような事例について、不当な差別的事例に当たるかどうかを照会いたしましたところ、内閣府から障害者差別解消法の不当な差別的取り扱いにはならないとの回答を得ており、県の現行制度は、法や条例が禁止する差別的取扱いの対象には当たらないものと考えております。
他県の状況はどのようになっているのでしょうか。
【こころの健康推進室長】
各都道府県における精神障害者に対する医療費助成の実施状況につきましては、都道府県によって、対象者や対象となる医療費の範囲等は様々でございますが、特別法に基づいて実施している沖縄県を除く46都道府県について、平成29年4月現在の地方単独事業の実施状況を申し上げます。
まず、精神障害者に対する医療費助成の実施の有無でございますが、実施していないところが19府県、実施しているところが本県を含めて27都道県であります。
次に、実施しているところのうち、精神障害者保健福祉手帳所持者を助成対象としているところは本県を含めて23道県であります。なお、さらに、このうち、通院について全疾患を対象としているところは18道県、入院について全疾患を対象としているところは11県となっております。
また、手帳所持者を対象としている23道県のうち、1級の方のみを対象としているところが14道県、2級の方も対象としているところは本県を含めて9県であります。なお、本年4月の本県における各等級の手帳所持者の割合は、1級が約10%、2級が約65%でございまして、本県では、手帳所持者の約75%の方が制度の対象となっております。
さらに、医療費の助成に当たりまして、所得制限及び自己負担金のいずれも設けていないところは、本県を含め、2県のみであります。
したがいまして、本県の精神障害者に対する医療費の助成制度は、総合的に見まして、全国的にも高い水準にあるのではないかと考えております。
障害者に対する支援は、冒頭申し上げた通り、都道府県・市町村が独自に行っています。いわば、障害者に対するそれぞれの自治体の考え方が制度内容、利用者数、金額等の利用実績に表れると言っても過言ではありません。愛知県が多くの障害者に手を差し伸べているということは理解できました。
しかし、精神障害者が病院や施設ではなく地域で「ふつう」に暮らすという前提に立つのであれば、必要な支援は着実に整備する必要があると考えます。
精神障害者の中には働こうとしても働けない人が多くいます。結果、非常に厳しい経済環境の中での生活を強いられ、内科や外科、歯科での治療が必要にもかかわらず断念せざるを得ないケースがあると聞きます。
本県健康福祉の進むべき方向を共有するための基本指針である「健康福祉ビジョン」の基本理念は「ともに支え合う安心・健やかで幸せなあいち」~「あいち健幸社会」の実現です。ここでいう健幸は健やかな幸せ、人と人とのつながり・支え合いによって、地域のすみずみまで保健・医療・福祉が行き届き、誰もが健やかで幸せに暮らせる社会を指しています。
ぜひ、障害者間での差を埋めて頂くよう要望します。
続いて、配偶者からの暴力(いわゆる「ドメスティック・バイオレンス」=DV)被害者への支援について伺います。県ではDV相談窓口を女性相談センターに設けています。そこで、相談件数や一時保護件数の推移はどのようになっているのか伺います。
【児童家庭課主幹】
県女性相談センターの平成28年度のDV相談件数は、面接相談が641件、電話相談が825件の計1,466件でした。
DV相談件数は、平成21年度の2,178件をピークにその後やや減少し、平成25年度以降は1,500件程度で推移しており、横ばいの状況です。
次にDVによる一時保護件数は、平成28年度が203件で、ピークの平成21年度の280件からやや減少し、この3年間は200件程度で推移しており、こちらも横ばいの状況が続いております。
警察庁が公表した2016年のDV相談件数は全国で69,908件。前年比10.7%増で13年連続の増加とのことであります。女性相談センターの相談件数及び一時保護件数が若干減少している点について、県としてどのように考えているのか伺います。
【児童家庭課主幹】
明確には分析できていませんが、女性相談センターのDV相談件数が増えていないのは、身近な市町村においてDV基本計画の策定等を契機に相談窓口を充実してきたことの影響があるのではないかと考えられます。
また、DVの一時保護件数が増えていないことについても、明確にはわからないものの、一時保護となりますと、DV被害者の安全確保のため、施設で携帯電話やスマートフォンを預かることとなりますが、本人がこれに同意せず、一時保護を拒否する方もいることなどが影響しているのではないかと考えられます。
市町村の相談窓口、女性相談センター、警察といった相談窓口のさらなる充実が求められます。そこで、設置個所を増やすあるいは相談員のスキルアップといった点についてこれまでどのように取り組まれ、また今後どのように取り組むつもりか伺います。併せて相談窓口間の情報の連携や相談窓口を知ってもらうための広報活動についても伺います。
【児童家庭課主幹】
県の相談窓口は名古屋市東区の女性相談センターのほか、県内各地に駐在室を7か所設置しております。
また、相談窓口を設置している市町村が38市町村あり、相談窓口は年々増加してきております。警察においても犯罪被害者のためのこころの悩み相談電話「ハートフルライン」を始めとする相談窓口を設けています。
相談員の質の向上を図るため、県の専門職員である女性相談員を対象として新任研修や事例検討研修を行うほか、市町村女性相談員を対象とした実務研修を行っております。
また、警察官を対象とするDV理解のための研修を実施していると聞いております。
今後とも相談窓口の充実に向け、未設置市町村を直接訪問し、県内市町村の設置状況等を提供しながら設置を働きかけるとともに、事例研究など研修内容を充実させて相談員のスキルアップを図ってまいりたいと考えております。
次に、各相談窓口間の情報の連携につきましては、愛知県DV被害者保護支援ネットワーク会議を毎年開催し、情報交換等を行うほか、県内7か所の女性相談センター駐在室ごとに地域DV被害者保護支援連絡会議を尾張駐在室は地区を分けて3回、他の駐在室は各1回開催し、市町村、保健所、警察、民間支援団体等における情報交換、連携を図っております。
さらに個々のDV事案においても、各相談機関がこれらDV支援ネットワーク会議等を活用して情報交換、連携を行い、必要な支援につなげております。
各相談窓口の広報については、県のホームページに警察や市町村、民間支援団体などの一覧を掲載するとともに、女性相談センターの啓発リーフレット等を市町村を通じて配布するなど、周知に努めております。
現在取り組んでいるDV防止あるいは被害者支援施策は「配偶者からの暴力防止及び被害者支援基本計画(3次)」に基づいて執行しているものと理解しています。この3次計画は今年度をもって計画期間を終え、今後、次期計画を策定する予定と伺っております。そこで、計画策定に向けこれまでどのようなことを行ってきたのでしょうか。また、今後のスケジュールについて伺います。
【児童家庭課主幹】
まず、第4次計画策定の参考とするため、これまでに平成28年12月にDVについての県政世論調査を実施し、平成29年7月には、婦人保護施設等に入所しているDV被害者88名に対して「配偶者からの暴力に関するアンケート調査」を実施しました。
その後、9月14日に有識者、民間支援団体、行政機関等で構成します「第1回配偶者からの暴力防止及び被害者支援基本計画(4次)策定検討会議」を開催し、現行計画の取組状況や次期計画の骨子案について御審議いただいたところであります。
今後、具体的な計画案の作成を進め、年末に第2回策定会議を開催し、その後、パブリックコメントを経て、平成29年度末に第4次のDV基本計画を策定する予定です。
アンケートを実施したとのことですが、アンケート結果をどのように認識し、また今後の計画に反映しようと考えているのか伺います。
【児童家庭課主幹】
昨年12月の県政世論調査ではDVの被害者を支援するために必要なことについて聞いたところ、「身近な地域に相談できる窓口があること」との回答が54.5%で最も高くなっています。
また、今年7月のDV被害者アンケート調査でも相談や支援を求めたところとして、「市町村」の割合が最も高くなっております。
このため、身近な地域で相談できる窓口の設置を進めていくことが重要であると考えております。
また、被害者アンケート調査では、DV防止のために必要なことについて、「加害者への罰則強化」、「身近な相談窓口を増やす」に次いで「学校・大学でデートDVを含むDV防止教育を行うこと」の回答割合が高くなっておりますことから、若年層に対する幅広いDV防止に向けた啓発が必要と考えております。
こうしたアンケート結果から明らかになりました課題につきましては、次期計画における取組について検討してまいります。
被害者が再び自立する際には、住居や就労の確保が必要であると考えます。しかし、こうした活動を行う際に、身元保証人をなかなか引き受けてもらえないという現状を聞きます。県としてどのような支援ができると考えているのか伺います。
【児童家庭課主幹】
DV被害者が住宅を借りたり、就労する際に求められる身元保証人につきましては、DV被害者はそれまでの人間関係を断ち切って避難、生活しなければならないことが多いことから、身元保証人になっていただける方を見つけにくいと言われております。
DV被害者が身元保証人を確保できず、入所する母子生活支援施設や婦人保護施設の施設長等が身元保証人になった場合に保険で施設長が負う賠償を補てんし、その保険料を国と県が負担する「身元保証人確保対策事業制度」があります。
しかしながら、施設長等が賠償責任を負う身元保証人になることに対しての心理的負担感が強く、あまり利用されていない状況でございます。
県といたしましては、住宅の確保はDV被害者の自立支援に向けた重要な課題であると認識しており、次期基本計画策定にあたっては、身元保証人の確保策について、他県の取組状況等も調査研究してまいりたいと考えております。
被害者支援を行う団体とはどのような連携をとってきたのでしょうか。また今後の連携強化についての考えを伺います。
【児童家庭課主幹】
被害者支援団体との連携についてですが、愛知県DV被害者保護支援ネットワーク会議で意見交換を行い、情報の共有を行っております。
そのほか、市町村職員や大学生等に対するDV出前講座の講師を支援団体にお願いするなど、研修やDV予防啓発に連携して取り組んでおります。
また、本年7月に実施したDV被害者アンケート調査においても支援団体から調査内容について意見をいただきながら調査票を作成したところです。
今後ともDV被害者の支援にあたっては、県や市町村と民間支援団体とが連携・協力して推進していくことが必要と考えておりますので、相談員のスキルアップのための研修や情報共有の充実に努め、DV被害者相談・支援にしっかり取り組んでまいりたいと考えております。
今回の質問にてDV被害の現状と課題を伺いましたが、まだまだ課題は山積していると考えます。
第4次計画策定に先立ち、関係者の意見聴取やアンケートもしっかりとられた思いますので、具体的な対策を計画に反映すること、そして計画に終わらず定期的なフォローをお願いして質問を閉じます。